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クソスレ立てんな!!
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~中学校編~ 「コラぁ!野比ィ!!!」 先生の声が教室に響き渡る。 「…はっ、すみません」 授業中ののび太の居眠りはいつもの光景であった。 「お前は居眠りばかりしてるからいつも赤点なんだろうが!ちゃんとノート取っとんのか!」 今日は先生の機嫌が悪いようだ。 のび太の隣の席の男子が、ヨダレのついたのび太のノートをサッと取り上げた。
「おい見ろよ!こいつノートに“みなもと しずか”って書いてやがるぜ!」 のび太は顔を真っ赤にして 「返せよ!」とノートを取り返す。 「お前みたいな奴と源が釣り合うわけねえだろ。おい源ォ、キモイって言ってやれよ」 数人の女子がクスクス声を立てて笑った。
「私は別に…」 のび太と同じクラスのしずかは消え入りそうな声で答える。 「お前ら静かにせんか!授業中だぞ!」 のび太はうつむいて奥歯を噛みしめることしかできなかった。
放課後、しずかは校門でスネ夫を待っていた。 「スネ夫さん、ちょっといいかしら」 「おっしずかちゃん。どうしたの」 スネ夫は中学に入ってから背が伸び、親の財力も手伝ってか、他の生徒に比べ垢抜けていた。 「わたしの友達がちょっとトラブルに巻き込まれちゃってて…」 スネ夫は軽く笑うと、 「オッケーオッケー。何だか知らないけどまぁ任せといてよ。出来杉も呼ぼうか?」 と携帯を取り出し電話をかけ始めた。
仕事しろよw
「ありがとう」 と、言ってしずかがふと振り返ると、ちょうどのび太が背中を丸めて帰るところだった。 「のび太さん」 のび太は顔を上げて 「…しずかちゃん。」 のび太は今にも泣き出しそうな顔を浮かべて目を伏せた。 「さっきはごめんよ。なんか迷惑かけちゃったみたいで」 「ううん、そんなことないわ。わたしこそ何もしてあげられなくてごめんなさい」 「…そんなのいいんだ」 そう言うと、のび太は駆け足で学校を後にした。
「しずかちゃん、出来杉も来るってさ。ん、どうしたの?」 しずかは頭を振って 「何でもない。ごめんね無理言って」 「いいのいいの、しずかちゃんの頼みだもん。じゃ行こうか、マックで出来杉と待ち合わせしてるんだ」
のび太は家に着くと、すぐにPCを立ち上げる。 学校から帰ってきてから寝るまでの間、ほとんどPCを相手に時間を過ごす。 ドラえもんが突然姿を消してからもう3年近くが経とうとしていた。 元々友達の少なかったのび太は、ドラえもんがいなくなってしまってから塞ぎ込むようになり、今では友達と呼べるような人は誰もいなくなってしまった。
ドラえもんがいなくなってから、タイムマシンに通じていたこの机の引き出しを一体何度開けたことだろう。 ドラえもんと行ったことのある場所にはすべて足を運んだりもした。 しかし未だにドラえもんは見つかっていない。 もうこのままドラえもんはずっと帰ってこないのではないか。 のび太は最近になってようやくそう思えるようになってきた。 今日の学校での出来事が頭をよぎる。 クラスメイトの声が聞こえてくる。 (きめえんだよ!) (うぜえんだよ!) (もう死ねよ)
「どうして僕を残したままどっか行っちゃったんだよ」 不意に涙があふれ、のび太は嗚咽した。 「いきなりいなくなっちゃうなんてひどいよぉぉぉぉ!!!」 拳を机に叩きつける。 携帯が鳴った。 スネ夫から着信のようだ。 のび太は懸命に鼻をすすって通話ボタンを押した。
「おうのび太。お前ミクシーって知ってるか?」 電話の向こうはザワザワしている。 ファミレスかどこかから掛けてきているのだろうか。 「mixiってSNSの?一応知ってるけど」 「SNSだか何だか知らねえけどさ、うちの中学の女子がそのミクシーってので知り合った男に脅されてんだと。俺は塾で忙しいからお前ちょっと調べてくれよ。どうせ暇だろ?」 「別にいいけど。何を調べたらいいの?」 「よし、じゃ詳しい話してもらうからちょっと待ってろ」
電話からガサゴソ音がして意外な声が聞こえてきた。 「のび太さん?」 「しずかちゃん!」 「いきなり電話でこんな話しちゃってごめんなさいね。スネ夫さんがパソコンのことならのび太さんが詳しいからって…。迷惑じゃなかったかしら」 「どうせ暇だから…」 「よかった。実は私の友達のことなんだけど───」 電話でしずかちゃんと話すなんてどれくらいぶりだろう。 そんなことを考えながらのび太は携帯を握りしめるのだった。
「ふぅよかったぁ。のび太さん調べてくれるって」 携帯をスネ夫に渡しながらしずかは微笑んだ。 「しかし今日ののび太は笑ったよなー。しずかちゃんもぶっちゃけ迷惑だったでしょw」 うつむくしずか。 「え?なんのこと?今日学校で何かあったの?」 スネ夫、のび太、しずかは同じクラスだが、出来杉とジャイアンは隣のクラスだった。 「あいつさ、授業中にノートにしずかちゃんの名前を───」 「もういいじゃない!」
意外なほどの大声に周りの客もこちらを振り返る。 「どうしたのしずかちゃん。何ムキになってるの」 スネ夫は少し顔を引きつらせながら時計を覗き込むと 「いっけね、今日塾があるんだった。じゃお先!」 と言い残すと、そそくさと店を出て行った。 「そろそろ私たちも帰りましょうか」 しずかが席を立ちかけると 「ねぇしずかちゃん」 いつになく神妙な面持ちの出来杉。 「どうして僕と付き合ってくれないの?」 しずかは立ったままうつむいた。
「僕に悪いところがあるなら直すよ。それとも他に好きな人でもいるの?」 しずかは腰を下ろして 「ごめんなさい。そうじゃないの。今はまだ付き合うとかよくわかんないし…」 「もしかして昔ドラえもんに「しずかちゃんは将来のび太くんと結婚する」って言われたのが引っ掛かってるの?」 しばらく間を置いた後 「違うわ。誰か他の人が好きとか、そういうことじゃないのよ。ごめんなさい」
出来杉は氷が解けてすっかり薄くなってしまったコーラを啜った。 「それじゃ私、バイオリンのレッスンがあるからこれで」 「うん、僕の方こそなんかごめん」 二人は気まずい空気を残して店を後にした。
エロでしょ?
一方のび太はしずかとの電話を切った後、mixiのページを開いた。 もうログインしなくなってかなり経つ。 最初は珍しくていろいろやったのだが、ネット上でも他人とのコミュニケーションがうまく取れず、マイミクもほんの数人だけだった。 日記をマメに更新すれば良いのだろうが、それもあまりしなかった。 何より日記にするようなネタがないのだ。 パスワードを何回か間違えた後ようやくログインすると、1件の新着メッセージがあった。
見ると差出人のハンドルネームはいい加減なアルファベットの羅列だった。 メッセージにはmixi内のリンクが貼られていた。 他には何も書かれていない。 のび太は不審に思いながらもそのURLをクリックすると、誰かのトップページに飛んだ。 「誰だこれ」 至って普通のプロフィールである。 現住所は東京、性別は男となっている。 日記は全体公開にしてあるようだ。
ふと目をやると「中学生ゲットだぜwwww」という日記のタイトルが目に飛び込んできた。 そこには、一枚の写メが載せられていた。 本人であろう若い男(20代前半だろうか)と、目線の入った若い女の子がうれしそうに笑っている。 「これってもしかして…」 しずかの言っていた友達の名前は確かミドリちゃんだった。 のび太はミドリちゃんと同じクラスになったことはなかったものの、ボンヤリとではあるが顔は覚えていた。 見れば見るほどミドリちゃんに見えてくる。
(でもこの人こんな日記をよく全体公開にするなあ)と思いながら下にスクロールすると、日記の公開範囲が「一部の友人まで」となっていることに気付く。 「あれ?」 クリックすると数人の名前が出てきた。 しかしのび太の名前はない。 一部の友人どころか、マイミクでもないのだから当然だ。 「なんで?バグってんのかな」 のび太は彼のトップに戻ると、たくさんある日記を上から順番に読んでいった。
古いネタ引っ張ってきたなw
何時間経っただろう。 辺りはすっかり暗くなっていた。 のび太の両親も寝てしまったようだ。 のび太は晩ご飯を食べないことが多い。 夜中までこうやってPCをいじりながら、適当に台所からお菓子などを持って来ては机で済ますことが多い。 最近はのび太のママも「ごはんよ」とのび太に声を掛けることが少なくなった。
上げるの早いけど用意してあったのか?
mixiやってた頃に書いたやつだからねw
更新はっや
集中して画面に向き合っていたせいだろうか、のび太は肩に疲れを感じ、イスにもたれてうーんと伸びをした。 すると窓にコツンと何かが当たる音がした。 窓を開けると、下にはジャイアンが街灯に照らされて手招きをしている。 「おーいのび太。ちょっと顔貸せよ」 傍若無人のジャイアンでも、夜中の静かな住宅街では大声を控えるという程度の常識は身に付けたようだ。 「ちょっと待ってて」
中学に入ってからジャイアンはますます凶暴になり、他の小学校から同じ中学に上がった連中はみんなジャイアンを恐れていたが、幼馴染ののび太たちに対しては、さほど暴力を振るうことがなくなっていった。 確かに機嫌が悪いときのジャイアンは怖いが、今ではのび太も以前ほどジャイアンを恐れなくなった。 グレて学校にあまり来ないジャイアンにとって、落ちこぼれののび太は同類だという気持ちがあるのかもしれなかった。 こっそり家を出ると、ジャイアンの他にもう一人男子がいた。
髪は長く金髪で、テラテラと光るジャージのようなものを着ている。 眉も丁寧に剃り、だらしなくガムをクチャクチャと噛んでいる。 「チース」 ジャイアンの後輩だろうか。 頭を下げることなくあいさつをしてきた。 「空き地行こうか」 さらに恰幅のよくなった巨体を揺すりながらジャイアンが歩き出した。
昔よく来た空き地に着くと、ジャイアンは定位置かのように土管にどっかと腰掛けた。 「で、話ってなに?」 「俺の入ってる族のステッカーをよ、お前にも買ってもらおうと思ってな」 ジャイアンはそう言うとポケットからタバコを取り出して火をつけた。 「族って暴走族のこと?」 「ああ」 煙を吐き出す姿は堂に入っていて、とても中学生に見えない。
「いくらするのか知らないけど、僕にはそんなお金ないよ。スネ夫に頼んだ方がいいんじゃない?」 「あいつはダメだ」 ジャイアンはタバコを投げ捨て、吐き捨てるように言った。 「たまに俺と学校で会うと、サッと逃げて行きやがる。俺は友達だと思ってたのによォ」 「今のジャイアンを見たらそれも仕方ないよ。それにスネ夫は勉強で忙しいだろうし」
「のび太だけだよな、昔みたいに俺としゃべってくれるのはよ。スネ夫にしたって出来杉にしたって、しずかちゃんだってそうだ。何なんだよあいつら!ドラえもんがいた頃はよォ────」 のび太の顔が強張る。 「あ、すまねえのび太」 「…いいよ」 ドラえもんがいなくなってから、のび太たちの間でドラえもんの話題はいつしかタブーとなっていた。
「しかしお前アレだよな。この話題が出たときってすげえおっかねえ顔するんだよな」 のび太はそれには答えず 「とにかく僕は無理だから他をあたってよ」 と言い残して空き地を去ってしまった。 「剛田さん、あいつ剛田さんのツレなんスか?何かショボイ奴ッスね」 「お前には関係ねえ」 ジャイアンはのび太が去った方をぼんやり眺めていた。
「それにさっき言ってたドラえもんとかって何なんスか?ヘンなあだ名の奴ッス───」 「うるせえつってんだろ!!」 言い終わらないうちに、ジャイアンの拳が男の顔にめり込んだ。
-------------------------------------- ジャイアンは後輩と共に、暴走族の集会に来ていた。 けたたましい爆音が辺りにこだまする。 今日は20台くらいの単車と数台の車が集まっていた。 規模としてはなかなかのものであった。 そこから少し離れた場所に、ジャイアンはチームの幹部といた。 「剛田ァ、最近調子いいみたいじゃねえか」 「とんでもないッス」 ジャイアンが属している暴走族は、他のそれと比べ若干性質が異なっていた。
暴走族というからには、もちろん暴走行為を主体とするのだが、このチームにはもうひとつ大きな別の顔があった。 ステッカーをはじめとして、パーティー券やバイク用品など様々なものを人を介して売りつけていき収益を上げる。 いわゆるマルチ商法だ。 この収益は、バックについている暴力団の貴重な収入源となっていた。 ジャイアンは持ち前の強引さ、義理堅い性格も手伝ってか、かなりの子を開拓・フォローし、めきめきと頭角を現すようになっていた。
そんなコミュがあったなw
「この調子で頑張りゃ幹部も夢じゃねえぞォ」 ユタカという名のこの幹部も、チームの後ろ盾となる暴力団構成員である。 サラッとした肩まで伸びた髪にピアス、腕には派手なロレックスがはまっている。 大きくはだけたシャツの胸元には金のネックレスが揺れていた。 暴走族というよりホストといった風貌であった。 「剛田ァ、今日はヨ、お前にいい話を持って来てやったんだ」 ユタカは口元にいやらしい笑みを浮かべた。
「いい話っスか」 悪党の持ってくるいい話が、本当にいい話である確率はかなり低いと相場は決まっている。 「まァここじゃナンだからヨ、こっち来いよ」 強引に肩を組まれ、引きずられるようにしてジャイアンは奥の暗がりへと連れて行かれた。
ジャイアンがこの暴走族に入ったのには理由があった。 ジャイアンが中学に入ってすぐ、父が交通事故によって急逝したのだ。 父に任せっきりだった剛田商店の経営を急遽母が引き継ぐことになったのだが、所詮は素人の経営。 これまで父の営業力で獲得した大口顧客がひとつ、またひとつと離れていき、剛田商店は倒産の危機に瀕していた。 母は夜な夜な内職を行って、何とか父が築いたこの店を守ろうとしていた。 この暴走族に入った目的は、それを目の当たりにしたジャイアンの、中学生なりの精一杯の答えだった。
「コレ何だかわかるか?」 ユタカはポケットから小さな包みを取り出し、ポンとジャイアンに投げて寄こした。 約3cm四方のビニールの包みの中に、茶色の枯れ草のようなものが入っていた。 「──大麻だ。俺たちはクサって呼んでるがな」 ジャイアンはゴクリと唾を飲み込んだ。 大麻。マリファナ──。これが麻薬であることくらいジャイアンも知っている。 「コレを捌きゃお前の実入りもハネ上がるぜ」 ヒヒヒと下品な笑い声が耳に入る。
何も言わないジャイアンに対し 「何だお前。ビビってんじゃねえだろうな。」 「ユタカさん、これって犯罪なんスよね。俺捕まったらどうなるんスか」 「ば~か。おめえ中坊だろうが。間違っても刑務所なんかにゃ入れられねえから心配すんナよォ!ぎゃはは」 麻薬に手を出したらもう後には戻れなくなる。 もし少年院に入ってしまったとしたら、母は自分をどう思うだろうか。 拳を固く握り締める。 こめかみを汗がつたう。
「おい、まさかテメエ断るつもりじゃァねえヨなぁ?お?」 ユタカは相変わらず下品な笑みを浮かべてはいたが、もう目は笑っていなかった。 ジャイアンの脳裏に夜中内職を続ける母の背中がよぎった。 「…話聞かせてもらえますか」 「さすが剛田。俺が見込んだだけのことはあるナぁ!」 ぎゃははと笑い、ユタカはジャイアンの肩に手を回しギュっと掴んだ。 骨ばって血色の悪いその手は、まるで悪魔の手のようにジャイアンの肩に食い込んだ。
ーーーーーとりあえずここまでーーーーー
次の週末、のび太、スネ夫、出来杉、ミドリ、しずかの5人は歌舞伎町のマックにいた。 例のmixi男を呼び出すことに成功したのだ。 待ち合わせは午後4時にアルタ前。 のび太たちは作戦会議兼遅めの昼食を摂っていた。 「───というわけなんです」 ミドリは今にも消え入りそうな声でそう言った。 「とにかくのび太くんが集めてくれた情報を盾に、向こうの口をどうにか塞ぐしかないようだね」と出来杉。
「いくら中学生といったって男が3人もいれば相手もおかしなマネはできないだろうしね」 スネ夫はいつも自信に満ちている。 一方のび太はここから逃げ出したくて仕方がなかった。 「僕なんかいたって戦力にならないばかりか、逆に足手まといになるだけだよ」 食い下がってみたものの、スネ夫に 「ばーか。こういうときは質より量なんだよ」 と言われ、何も言い返せなくなってしまった。 「野比くんごめんなさい。面倒なことに巻き込んでしまって…」 ミドリはしきりに恐縮している。
「いいのいいのミドリちゃん。こいつは少し鍛えてやらないといけないんだから」 スネ夫はケラケラと笑う。 「じゃ私はそろそろ行くわね」 しずかはここで離脱することになっていた。 万一を考え、しずかに何かあってはいけないとのみんなの意見だった。 「ちょっと早いけど僕たちも行こうか。先に現場の状況も見ておきたいし」 さすが出来杉。逃げたい一心ののび太とは大違いだ。 「その前に私トイレ行ってきていいですか。何だか緊張しちゃって」 不安げに微笑むミドリ。
「だよねー。どうぞどうぞ」 ミドリがトイレに姿を消すと、すかさずスネ夫が 「しかしわかんないもんだね。あんな大人しい子が出会い系なんかで男にひっかかるなんてさ」 「mixiは出会い系じゃないよ」 「でも結果的には一緒じゃねえかよ」 「まぁそういう奴もいるかもしんないけどさ…」 「おまたせー」 明るい声に振り向くとミドリが戻ってきていた。
あれ?トイレで化粧でもしたのかな。何だか印象が変わった気がする。 「そうそう、今日はみんなに頑張ってもらわなくちゃいけないから、わたしスペシャルドリンクを持ってきたんだ」 ミドリはそう言うとカバンから小さな栄養ドリンクを取り出した。 「はい。はい。はい」 トン、トン、トンと順番に目の前に小ビンを並べて行く。 スネ夫と出来杉にはリゲイン。のび太の目の前に置かれたのは見たことのない銘柄だった。
「ツヨクナール?」 ラベルには簡素な文字でそう書かれているだけだった。 「なんでのび太だけ違うやつなの?俺こっちがいいな」 と手を伸ばすスネ夫に 「ダメ!これはのび太さんのなの!」 凄い剣幕にスネ夫も思わず怯んだ。 のび太さん?さっきまで野比くんって呼んでたのに。 のび太は何とも言えない違和感を抱いていた。 「ミドリちゃん、なんかさっきと様子が違くない?」 「だよな」 スネ夫と出来杉はリゲインのフタを開けながら口を揃えた。
「そんなことないわよ」 ニコニコとした笑顔を浮かべている。 「さ、のび太さんも飲んで」 「あ、うん」 のび太がフタに手をかけてミドリに目をやると、こちらを見て微笑んでいる。 フタを開けると、何だか漢方薬のような匂いが鼻をついた。 怪しいなぁと思いながらものび太はそれを飲み干した。 「さ、それじゃ行きましょうか」 ミドリはさっさと席を立つと、一人で行ってしまった。 3人はお互いに顔を見合わせ、首をかしげた。
マックからアルタへは歩いて数分の距離だ。 アルタ前に到着して時計を見るとPM3:50だった。 4人が辺りをキョロキョロ見回していると、背後からミドリの肩が叩かれた。 「よう」 みんなが一斉に振り向くと、絵に描いたような、いわゆるチャラ男が立っていた。 「お、今日はお友達が一緒なのか?」 出来杉が一歩進み出て 「あなたが服部さんですか」 いきなり本名を言い当てられた男は眉をピクリと動かした。
「誰だよお前。ミドリの同級生か?」 大人の男性の威圧感が3人を襲う。 「まぁいい。とにかくここじゃ何だから、どっか話できるとこに行こうか。ミドリ行こうぜ」 と言うとミドリの肩を掴み歩き出した。 慌てて追いかける3人。 しばらく行くと白い高級車の前で男が立ち止まった。 「乗れよ」 誰もがヤバイと感じながらも、みんな口には出せない。 ビビってるところを見られたくないのだ。
男が助手席を開けると、ミドリはさっさと乗り込んでしまった。 「お前らも早くしろよ」 3人はお互い顔を見合わせ、恐る恐る後ろに乗り込んだ。 車は都心を抜け、晴海の方へと向かった。 男は携帯を取り出し、 「おう俺。今から例のとこ行くからよ。──ああ。──あと20分くらいかな。みんなにも声かけといてくれよ」 携帯を切って鼻歌を歌いだした。 「これからどこに行くつもりなんですか」 出来杉の声は、心なしか少し震えているようだ。 男は鼻歌を歌ったまま何も答えない。
のび太が隣のスネ夫を見ると、膝が小刻みに震えている。 のび太も喉がカラカラに渇いて、うまく声が出せそうになかった。 言葉を口にすると声がひっくり返ってしまいそうだ。 のび太は震えないように、膝を強く握り締めた。 3人の動悸だけが車内を支配していた。 助手席のミドリの様子は全くわからない。 ミドリもさぞ怯えていることだろう。 程なくして車は晴海埠頭へと入った。 立ち並ぶコンテナの一角にゲートの開いたボロボロの倉庫があり、車はそこへ入っていった。
中は裸電球がポツリポツリあるだけの、大きめのガレージといった感じであった。 男はさっさと車を降りると、 「降りろ」 と、ドスの利いた声を出した。 のび太たちが車を降りると、待ち構えていたかのように、倉庫の中に数人の男が現れた。 「ぼ、僕たちをどうするつもりなんだッ!」 スネ夫がヒステリックな声を張り上げた。 見ると膝がガクガクと震えている。 出来杉も気丈な素振りを見せてはいたが、顔色は真っ青だ。
のび太は冷静に周りを観察している自分に驚いていた。 さっきまで激しかった動悸も、膝の震えも今は治まっている。 それに体中に不思議な力と高揚感が満ちてくるのを感じる。 これは一体何だろう、とぼんやり考えていると、物陰から現れた男が音もなくスネ夫に近付き、いきなりスネ夫の顔を殴りつけた。 「ギャッ」 数メートル飛ばされたスネ夫は、うずくまったまま動かない。 「何するんだ!」 出来杉はその男に殴りかかったが、ひょいと簡単に避けられ、反対に男の拳が出来杉の腹にめり込んだ。
「ううっ」 腹を押さえて倒れこむ出来杉。 「お前ら中坊が大人を舐めるとどうなるか教えてやるよ」 服部は口を歪めながら出来杉に更に歩み寄った。 「──舐めてんのはお前の方だろ」 低い声でのび太が呟く。 スネ夫と出来杉が同時にのび太を見た。 「んだとコラァ」 服部はのび太の方へと向きを変えた。 「いい大人が子供相手に情けねえなぁ」 ジャイアンならともかく、のび太の口をついて出る言葉とはとても思えない。 のび太自身も夢に浮かされているような気分だった。
自分の意思と関係なく、勝手に口が動いているかのようだった。 「テメエっ!」 服部がのび太に殴りかかった瞬間、服部の身体が宙を舞った。 のび太は他の男たちに向き直ると、 「お前ら中学生を舐めてんじゃねえぞ」 そして、オラァァ!という叫び声と共に他の男に突っ込んで行き、次々に殴り倒していった。 あっけにとられたのはスネ夫と出来杉である。 目の前の光景を信じられないといった顔で眺めている。 当然だ。
全員がのびてしまった後、 「スネ夫、大丈夫?」 のび太はスネ夫に近付いて手を差し出しながら言うと、スネ夫はポカンと口を開けたまま、 「ああ」 と間抜けな声で答えた。 「…の野郎ォ!」 声に振り向くと服部がナイフを手にしていた。 「ヒイッ!の、のび太!うしろ!」 スネ夫と出来杉が思わず後ずさる。 のび太はフッと笑うと服部の方へ歩いていく。
「このガキャァァ!!」 ナイフが振り下ろされるより先にのび太の拳が服部の腹に深く刺さった。 ゲエエと吐きながらのた打ち回る服部を見下ろしたのび太は、顔を靴で思い切り踏みつけて服部の耳に口を近づけ囁く。 「お前のヤサは割れてんだ。今度ミドリに近付いてみろ。今度は殺すぞ」 そして床に転がったナイフを手に取り、服部の手の甲に深々と突き立てた。 ぎゃあああああああああああ!転げまわる服部を尻目にのび太は立ち上がると、 「さ、帰ろうか」 ミドリはのび太を見て微笑んでいる。
「さすがのび太さん!いざというとき頼りになるわ」 スネ夫も出来杉も言葉を失っていた。 「ここを出て右に行くと確かバス停があったわ。行きましょ」 スネ夫たちはヨロヨロと立ち上がるとミドリについて行った。 この話し方、前にどこかで…。 のび太の中で様々な光景が去来する。 「のび太さーん」 ミドリの呼ぶ声に、ある姿が鮮やかにフラッシュバックした。 ドラえもんより一回り小さな、黄色い身体。 かわいい赤のリボン。
のび太は駆け出すとミドリの肩を掴み 「ミドリちゃんってもしかして、もしかしてドラ──」 そこまで一気にしゃべって言葉に詰まる。 「なぁに?」 ミドリは無邪気に微笑んでいる。 もしこれが本当に、本当に彼女だとしたら、僕がそれを口に出した瞬間彼女は消えてしまうのではないか。
そんな予感にのび太は固まったまま動けないでいた。 「いきましょ」 ミドリはのび太の手をかわすと軽快に歩き出した。 帰りのバスの中はのび太を賞賛する話でもちきりだった。 「すげえすげえ」を連呼するスネ夫と驚きを隠せない出来杉に挟まれ、ただ一人のび太だけが別のことを考えていた。
なんだここ
ーーーーーーーーーーーー 「ただいま」 しずかが帰宅すると、リビングから母の楽しそうな話し声が玄関にまで聞こえていた。 しずかがリビングのドアを開けると、 「あ、娘が帰って来たみたいだから」 と、慌てた様子で電話を切る。 「ただいまくらい言いなさいよ」 母はエプロンをつけてキッチンへと入っていった。 しずかはムッとして「言ったわよ」 「お母さんが電話に夢中で私の声なんか聞こえなかったんじゃないの」 「何言ってるの」
母は機嫌がいいのか鼻歌を歌っている。 しずかの父は今日もいない。 毎週土日のどちらかはゴルフに出かけ、帰宅が夜になることも珍しくなかった。 ここ1~2年、しずかは両親が会話をしているところを見たことがない。 母も今日は出かけていたのだろうか。 エプロンの下からは、あまり見たことのないワンピースがのぞいていた。 「お母さん、今日どこか行ってたの?」
母は一瞬しずかを見て 「どこにも出かけなかったわよ。どうして?」 「ううん、何でもない」 しずかは冷蔵庫からお茶を取り出しコップに注ぐと一気に飲み干した。 「私、出来杉さんに付き合ってって言われてるのよね」 「あらいいじゃない。女の子は恋をしなきゃダメよ~」 しずかは急に吐き気を催しトイレへに駆け込んだ。 さっき食べたハンバーガーを全部吐き出すと涙がにじんだ。 嘔吐する声は、キッチンまでは届いていないのだろうか。 母は心配して声をかけてくれることもなかった。
しずかは自分の部屋に戻ると服のままベッドに寝転がった。 母の携帯にメールが届いてることに気付き、何気なく覗いてしまったのは何週間前だったろう。 そこには生々しい男と女のやりとりがあった。 それ以降、しずかは母を汚らわしいと感じるようになっていった。 父も母には無関心のようだ。 不意に思い立って、本棚で埃を被っている昔のアルバムを引っ張り出す。 そこには遊園地のベンチで笑う家族3人が写っていた。 「どうしてこんなことになっちゃったの?」
しずかの目から涙があふれ出す。 お腹がシクシクと痛む。 去年からしずかの身体に大きな変化が現れ始めた。 生理が来た。 胸も膨らみ始めた。 しずかは自分が女へと変貌していくことに戸惑い、恐れを抱いていた。
なんなの、この人
脳裏には、見知らぬ男に抱かれる母の姿があった。 「…汚らわしいッ」 しずかは机の引き出しを開けカッターナイフを取り出した。 チキチキチキと出されていく刃は鈍く光を放ち、汚れを浄化してくれるような力に満ちていた。 しずかは左手の手首にカッターナイフを当てた。 ヒヤリと吸い付くような感触が火照った身体に心地いい。 そして一気に右手を引いた。 ~中学校編 了~
あまり面白く無いけどお茶よりか脳みそありそうだから応援してみる件。
続きはまた後ほど。
外見はしろくま中身は龍二
ひくわーこれ 暗い過去でも背負ってるん?
その名は滅探偵ソ◯ン!!
イメージ画像
いい心療内科紹介してあげるおっおっおっ
「コラぁ!野比ィ!!!」 まで読んだ
おいしろくまに激似じゃねーかw
ドーラじゃねえかw
すげー頑張ったなお前w
俺は「~中学校編 了~」 だけ読んだ
感想文書くときにやりがちなやつなw
~高校編1~ スネ夫は一人、机に向かっていた。 高校2年、夏休み前の期末テスト直前だった。 スネ夫はその財力に物を言わせ、中学の頃から家庭教師・マンツーマンの学習塾などの英才教育を受け、出来杉と同じ有名進学校に入学した。 高校に入ってからも安定した成績を保ち、このまま順当に行けば六大学クラスへの入学が確実視されていた。 コンコン。部屋がノックされ、母親が入ってきた。 「スネちゃま。お夜食ざますよ」
この母親も相変わらずだ。この調子では、いつまでも子離れできそうにない。 「うん、そこに置いといて」 スネ夫は顔も上げずに言った。スネ夫は案外マザコンタイプではなさそうだ。 スネ夫の父はまだ帰らない。 どんな仕事をしてるのか、スネ夫も実はあまりよく知らなかった。 ただ、かなりの収入があることだけはわかっていた。 そして、それなりの収入を得るには、家庭をある程度犠牲にしなくてはならないことも何となくスネ夫はわかっていた。 スネ夫の母も特に父に不満があるようでもない。
幸せいっぱいの家庭とは言えないかもしれないが、みんながそれなりに満足していた。 また両親にとっては、スネ夫がなによりの自慢の種だった。 と、そのとき玄関ドアが乱暴に閉められる音が聞こえてきた。 「おうい、帰ったぞぉ!」 最近スネ夫の父は酒を飲んで帰ってくることが多くなった。 母が階下に下りて行き、 「あなた、また酔ってるざますね」 ため息交じりにそう言うと、 「まぁまぁいいじゃないか。おういスネ夫ー!」 息が酒臭い。
スネ夫も一応階段の上から顔を覗かせた。 「なに。いま勉強で忙しいんだけど」 「スネ夫、明日から家族で旅行にでも行かないか。ハワイでもヨーロッパでもどこでもいいぞぉ!パーッとな!どうだ」 顔を真っ赤にしながら、大声を張り上げる。 「何言ってんの、無理無理。明日から期末テストだよ」 スネ夫は自分の部屋へと取って返そうとした。 「そんなに勉強勉強言うなよ!」 スネ夫は少しカチンときた。
「今まで散々勉強しろって言ってきたのはどこの誰だよ!」 スネ夫は部屋に戻ると勢いよくドアを閉めた。 「あなたどうしちゃったの。最近おかしいざますよ」 父は顔を歪めながら笑うと、力なく靴を脱いだ。
ーーーーーーーーーーーー 一方しずかは女子高に進学した。校内での評判が良かったこともあり、推薦ですんなり入学した。それほど進学に力を入れている学校ではなかったが、自由な校風がしずかは気に入っていた。 しずかは電車通学だ。しかもスネ夫・出来杉の通う高校と方向が一緒なので、朝電車でスネ夫たちと顔を合わせることも多かった。 「おはよ」 3人が乗る位置は、いつからか前から3両目と決まっていた。
「スネ夫さん、なんだか眠そうね」 微笑むしずかの目元は、どんどん女のそれになってきている。 スネ夫や出来杉は妙に女を感じて、ドキッとしてしまうことがあるくらいだ。 「今日からテストだからね。お陰であんまり寝てないよ」 あくび混じりのスネ夫。 「しずかちゃんのとこはテストいつからなの?」 出来杉はいつもさわやかだ。 「私のとこはもう終わったわ。後は夏休みを待つだけ。ウフフ」 電車がホームに滑り込んできた。
いつものように超満員だ。どこにも隙間などないように見えるが、この状態からさらに乗れてしまうから不思議だ。 出来杉はしずかとくっつきながら電車に揺られた。 間近で見るしずかの横顔は、昔と変わっていないようで、やはり違っている。 よく見ると眉毛やまつげなど、うっすらではあるが化粧が施されていることに気付く。 しずかの体からは、女性特有のいい匂いがした。 しずかはそんな出来杉のことなど一切気にすることなく、携帯を触っている。
足元には大きめのバッグ。一体この中には何が入っているんだろう。 部活でもしてるのだろうか。いや、とてもそんな感じではない。 間もなくしずかの降りる駅に到着した。 「それじゃ」 「バイバイ」 結局一言も言葉を交わすことなく、しずかは行ってしまった。 扉が閉まると、出来杉は改めて言った。 「しずかちゃん、ずいぶん雰囲気変わったよね」
「そりゃもう高校生だし。それに女子高ってコンパとか結構あるんじゃないの?しずかちゃんかわいいしさ。そう言えば、しずかちゃんに告ったの?」 スネ夫はヒジで出来杉を突付く。 「そんなの無理だよ。…しずかちゃん彼氏いるのかな」 「どうかなぁ。ま、僕は昔のしずかちゃんの方が好きだけどな。なんか今は少し派手っていうか、ああいうのは似合わない気がする」
背中が寒くなってきました
「そうだね…」 スネ夫は少し元気のない出来杉の肩をポンと叩くと、 「とにかく今僕らは恋愛どころじゃないでしょ。昨日なんかさ、夜勉強してたらパパに邪魔されちゃってさ──」 出来杉は、改めて考えてみると自分がしずかのことをほとんど知らないことに気づき、暗い気持ちになるのだった。
しずかは高校に入ってから、あまり友達ができなかった。母親のこと、家族のこと、心に屈折を抱えるしずかには、何でもないことで屈託なく笑い転げるクラスメイトが、自分とは別の人種かのように思えてしまうのだ。 しかし2年生になってしずかにも仲のいい友達ができた。 エリカという名のその子は、髪が黒くおかっぱのような髪型と、あっさりとした目鼻立ちで、地味で大人しい印象を誰もが抱いた。おそらく卒業後、エリカの顔と名前が一致しない子も多くいそうな、そんな感じだった。
また、どこか厭世的な雰囲気を漂わせていた。他の子たちとは違い、女子同士で群れることもなく、教室ではしずかと同じように一人で過ごすことが多かった。 何となく波長が合うのだろうか、二人はやがて意気投合して、いろいろな話をするようになり、今では共通の秘密を持つまでになった。 夏カゼでも引いたのだろうか、今日エリカは朝から調子が悪そうだった。 「エリカ、今日はどうする?体調悪いんだったらやめとく?」
エリカは少し咳込みながら、 「大丈夫、そんなに大したことないから」 「じゃ、いつもの時間にいつもの場所で、ね」 「オッケー」 その日の夕方、しずかは新宿にいた。 バッグを手にデパートのトイレへと入っていく。 数分後、伊勢丹前にエリカの姿があった。 濃いめのメイク、胸元が開いたドレスシャツに、大きくスリットの入ったミニスカート。 これがあのエリカだとは誰も気付くまい。
クチャクチャとガムを噛むその姿は、娼婦のように見えなくもない。 ほどなくしてしずかもやってきた。 しずかもまるで別人のようである。 もしここで出来杉とすれ違っても、おそらく気付かれることはないだろう。 二人はお互いを舐め回すように見つめ笑い合うと、寄り添うように夕闇に包まれ始めた街へと消えていった。
~高校編2~ しずかたちが夜の街に消えた数時間前、スネ夫は得意な世界史のテストに取り組んでいた。 今日はツイてる。 昨夜ヤマを張ったところが見事に的中していた。 2年生1学期の期末テストは非常に重要な意味を持つ。 スネ夫は万全を期して5回も答案を見直した後時計を見ると、まだ時間は15分も残っていた。
その時である。 教室の前の戸が開けられ、学年主任の先生が入ってきた。 「骨川君はどこかね?」 教室内がにわかにざわめく。 教壇に座っていた担任も思わず腰を上げる。 「主任、どうしたんですか?」 「ちょっと急用らしくてね。骨川君」 テスト中にもかかわらず、クラスのみんながスネ夫を振り返った。 「僕ですけど」 スネ夫はおずおずと学年主任を見た。
「テスト中悪いが親御さんから急用の電話が入っている。ちょっと抜けられるかね」 「テストはほぼ終わっていますから大丈夫です」 スネ夫は立ち上がると、学年主任と職員室に向かった。 これはきっとただごとではない。 家族が事故にでもあったのだろうか。 嫌な予感に胸が締め付けられる。 職員室に着いて受話器を受け取る。 「スネ夫か」 父の落ち着いた声が聞こえてきた。
「うん、どうしたの」 もしかしたらどこかの親戚が倒れたとか、そんな話なのではないか、そんな気がした。 「スネ夫、落ち着いて聞いてほしい。父さんは今から警察に行かなきゃいけなくなった。」 ケイサツ?一瞬理解できなかった。 何か交通違反でもしたのか?それとも万引きとか?そんなわけはない。どういうことだ? 様々な疑問が去来する。
「そして多分明日から当分、この家から学校へ行けなくなると思う。今から帰ってきて荷造りをしてほしいんだ」 ますます意味がわからない。 「どういうこと?」 受話器の向こうからは母の泣き叫ぶ声が聞こえてきた。 家から学校に行けないとは一体どういう意味だ。荷造りって夜逃げでもするつもりなのか。 「とにかく電話じゃ話せないことだから、すぐに帰ってきてくれ」 スネ夫は受話器を置くと、こちらを心配そうに見つめる学年主任に一礼し、教室に一旦戻ってから家路についた。
家に戻ると、全ての窓にシャッターが下ろされていた。 玄関を開けリビングに入ると父はダイニングテーブルに腰掛けていた。 母はソファに座り、両手で顔を覆っている。 「帰ったよ」 母はスネ夫に気づくと、立ち上がりスネ夫に抱きついた。 「スネちゃん!」 そしてわあわあとその場に泣き崩れた。 「パパどういうこと」 父はテーブルの上で固く拳を握り締めていた。
2があるんかいw
「いずれ分かることだろうし、お前ももう子供じゃない。正直に話すよ」 スネ夫は、父が会社の指示で多額の金を横領したこと、そしてそれがバレて今から警察に連行されること、マスコミが今夜にでも押しかけてくるかもしれないことを聞かされた。 「本当に済まない。しかし父さんだけが悪いんじゃない。仕方なくやってしまったことなんだ。信じてくれ」 頭を下げる父。
泣き声を上げていた母は、おもむろにテーブルの上においてあったグラスを掴むと、壁に投げつけ叫んだ。 「そんなこと言ってもあなたは逮捕されるんでしょう!これからわたしたちどうやって暮らしていけばいいのよッ!」 少しの静寂の後、父は 「すまん」 と、もう一度頭を下げた。 そして母はまた声を上げて泣き崩れた。 ──泣きたいのは僕の方だ。 スネ夫は奥歯を噛みしめた。
「とりあえず骨山のおばさんのところに行っててくれ。父さんには会社の弁護士もつくことになっているし、会社は父さんの味方をしてくれるはずだ。そんなに重い罪にはならないと思う。しばらくしたらお前たちのところへ帰って来るよ」 これからどうなってしまうのだろう。 明日のテストは?これからの高校生活は?もうこの家には住めないのか? 玄関のチャイムが鳴った。 母が顔を拭い、リビングのモニターを覗き込んで「キャッ」と短い叫びを上げた。
「○○テレビですが今の率直なお気持ちをお聞かせ願えますか?」 モニターには、犯罪者を糾弾しようと押しかけたマスコミが画面いっぱいに映っていた。 奥には警察官の姿も見える。 どうやらマスコミと揉めているようだ。 「こんなに早く来るとは。お前たちは裏口から出ろ。父さんは後で玄関から出る」 スネ夫たちは当面の衣服などをバッグに押し込み、裏口へと急いだ。 不意に今朝の電車での会話が思い出される。
ほんの数時間前の、あの平和な時間はなんだったんだ。 これじゃまるでドラマじゃないか。 スネ夫はまだ現実感のないまま、世界史の後に予定されていた数学のテストのことを思った。 今回のテストはもうダメだな。 次頑張ればいいか。 次。 次なんてあるのかな。
待てよ、もしかしてドアを開けたら誰かが「ドッキリ」の看板を持って立ってるんじゃないか。 そんな淡い期待を抱いて、スネ夫が裏口を開けた瞬間、無数のフラッシュがスネ夫たちに襲いかかった。
しずかたちはクラブの中にいた。 しずかもエリカも、家には帰りたくなかった。 最初は2人でマックなどで時間を潰していたのだが、次第にそれにも飽き、繁華街をうろつくようになり、いつからか週に数回のペースでクラブに出入りするようになっていった。 しずかの母は、いまだに不倫を続けているようだ。 しずかが中学のときからだから、もう何年も続いていることになる。
服装も、髪型も、化粧も変わったことに、父は全く気付いていない様子だ。 もう昔のような、あたたかい家族に戻れない。 しずかは家庭そのものに失望していた。 一方エリカは父子家庭であった。 母はエリカが小さい頃に男と一緒に逃げていったと父から聞いている。 エリカには、夫婦のことはよくわからない。 父は一方的に母が悪いみたいなことを言っているが、本当にそうなのか?とも思う。 エリカの父は、とにかく暴力的なのだ。 酒を飲んではよくエリカに手を上げる。
もしかしたら、母はこんな父に嫌気がさして出て行ったのではないか、とも思うのだ。 二人は大音量の空間で踊っているときだけは、家のことを忘れることができた。 それに二人はモテた。 一日に何人もの男たちが声をかけ、酒をご馳走してくれた。 しずかはともかく、エリカはそれが楽しくて仕方ないのだった。 また、しずかは酒が飲めなかったが、エリカは飲むことが大好きだった。 酒乱の父を見て「酒なんか」という思いがあるのだが、そんな気持ちとは裏腹に酒の魅力に取りつかれていた。
しかし今日は体調が悪いせいもあったのだろう、いつもより飲んでいないにもかかわらずエリカはかなり酔っていた。 「遅いなぁ」 エリカがトイレに入ってからもう20分近くが経っていた。 そろそろ終電の時間だ。 終電を逃してしまうと、タクシーでいくらかかるか見当もつかない。 しずかは狭い通路抜けて女子トイレに入った。 2つあるドアのうち、閉まっているのはひとつだけだ。 ドアをノックする。 「エリカ、大丈夫?」 返事はない。 もう一度、強めにノックする。
「エリカ!もう行こう。電車なくなっちゃうよ」 しばらくしてエリカの弱々しい声が返って来た。 「…うん、大丈夫」 エリカがこんなに酔うなんて珍しいわ。 しずかは時計を気にしながら、その場でエリカが出てくるのを待つしかなかった。 結局エリカがトイレを出てきたのは、もう午前1時近かった。 おそらくもう電車はない。 しずかはエリカに肩を貸しながらフロアを横切っていく。 途中、誰かと肩がぶつかった。
「あれ、まだいたの?友達大丈夫?」 さっき声をかけてきた2人組の男だ。 「大丈夫よ。もう帰るわ」 と歩き出した途端、しずかは何かにつまずいて転んでしまった。 「おっと」 男に抱きかかえられると、しずかは「キャッ」と反射的にその手を払いのけた。 「おいおい、助けてやったのにそんな風にしなくてもいいだろ。つか友達ヤバいんじゃね?送っていこうか?」 「ごめんなさい。いいの、大丈夫。何とかして帰るから」 しずかが体勢を立て直し、歩き出そうとした瞬間右足に激痛が走った。
「痛っ」 さっきの転倒で足をくじいてしまったらしい。 どうしよう、これではエリカを運べない。 「ほらぁ。送っていってやるよ。俺たち何もしないから心配すんなよ」 なあ、ともう一人の男に話しかける。 「送ってってえ」 突然エリカが甘えた声を出した。 「エリカ起きてたの?」 しずかがびっくりしてエリカを見る。 「ねぇ、送ってってえ」 「ほら、エリカちゃんはそう言ってんじゃん。行こうぜ。あんま遅くなるとマズイんだろ?」
男に触られることも嫌なのに、見知らぬ男の車に乗るなど、しずかはまっぴらごめんだった。 「タクシーで帰るからいい」 しずかがエリカの手を取って行こうとすると、 「いや!あたしは送ってもらうんだから!」 「エリカなに言ってるの。さ、早く帰ろうよ」 と、なおもエリカの手を引くと、エリカはそれを振りほどいた。 「いやよ。しずかはかわいいからいつもモテるだろうけど、あたしになんて誰も声かけてくれないじゃない。あたしだってチヤホヤされたいんだから!」 「エリカ…」
こんなエリカを見るのは初めてだった。 何も言えず立ち尽くすしずかをよそに、男はエリカを抱えて歩き出した。 「ちょ、ちょっと待ってよ。私も行く」 エリカを放って勝手に帰るわけにいかない。 しずかはエリカと共に男たちの車に乗り込んだ。 車は順調にエリカたちの家の方向へ向かっているようだ。 これなら安心かも、しずかがそんなことを考えていた矢先、エリカが吐き気を催した。 男が急ブレーキをかける。 「おいおい、この車新車だぜ?吐くのは勘弁してくれよ」
車を路肩に寄せ、エリカを降ろしてみたものの、吐くまでには至らないようだ。 エリカは依然グロッキー状態である。 車に戻るとしずかは 「あとどれくらいで着きそう?」 「今日は道が混んでるからなあ、まだ結構かかるよ」 仕方ない。ここまで来てしまったからには男に任せるしかない。 「どこかで休憩してく?」 助手席に座っていた男が口を開いた。 しずかの全身に鳥肌が立つ。
エリカw
「いい。大丈夫だから。ね、エリカ」 しかしエリカはもう話せる状態ではなかった。 「そんなこと言ったって、車の中で吐かれたらたまんねえし。いいじゃん、ちょっと休憩するだけだよ」 「休憩ってラブホテルとか行くんでしょ?そんなの嫌よ」 「しょっちゅう行ってるくせに」 ゲラゲラと笑い転げる二人。 車はやがてラブホテル街へと入っていった。 「嫌っ!降ろしてよ!」 「何もしないってば」 大声で叫ぶしずかと男の笑い声の中、車はラブホテルの駐車場に吸い込まれていった。
ドアが開けられ、運転席の男がエリカを抱えてさっさとホテルの中へ入っていく。 「ほら、エリカちゃん行っちゃったぜ」 しずかは震えながらジッと座っていたが、自分だけここにいるわけにもいかない。 「絶対に何もしないで。何かしたら警察呼ぶから」 「わかったよ、とりあえず行こうぜ」 部屋に着くと、男がエリカの服を脱がせているところだった。 「なにしてんのよっ!」 「服着てたら苦しいだろ?脱いだら楽になるよ」 とニヤニヤした笑いを浮かべる。
「何もしないって言ったじゃない!」 しずかが服を脱がせている男の腕をつかんだ。 「うっせえな!」 男がものすごい力で手を振りほどく。 しずかの足はカタカタと震えだした。 男はエリカの下着に手をかけている。 エリカは眠ったままだ。 しずかの目に涙がにじむ。 「ドラちゃん、のび太さん、たすけて…」 しずかの脳裏には、なぜかドラえもんとのび太の姿が鮮やかに蘇っていた。
もう一人の男がしずかをベッドに押し倒した。 「嫌アアアアァァ!!!」 足掻くしずかを男は力任せに押さえつける。 「お前だっていろんな男とヤリまくってんだろ?え?」 そして男はしずかにのしかかり、しずかの口に舌をねじ込んだ。 しずかの目から涙があふれる。 どんなに力を込めても、男の腕はピクリとも動かない。 ドラちゃん、のび太さん、たすけて…。
~高校編3~ 時は、のび太の中学校卒業間近にさかのぼる。 「つまんないな」 のび太は、一人ごちて家路についていた。 思い返せば、冴えない中学時代だったと思う。 ドラえもんのいた頃が懐かしい。 あの頃はみんなでよく冒険をしたものだ。 「ただいま」 のび太が階段を登りかけると、居間の方から母の声が追いかけてきた。 「お友達がみえてるわよ」 誰だろう。襖を開けると、ミドリが立っていた。
「ミドリちゃん」 「のび太さんおかえりなさい」 ニッコリ笑いかけるミドリ。 「どうしたの突然。またなんかのトラブル?」 するとミドリは急に神妙な顔つきになって、 「今日はね、すごく大事なお話をしにきたの」 のび太は、なんとなくこうなるような気がしていた。 ミドリを見た瞬間から、なにか大きな運命の歯車が回りだすような、そんな予感がしていた。 「ミドリちゃんって、ドラミちゃんでしょ?」 「うふふ、そうよ。さすがねのび太さん」
のび太は笑いながら、 「ドラミちゃんを知ってたら誰でも気付くよ。ねえ、そんなことよりどうしてドラえもんはいなくなっちゃったの?もうここには来れないの?一体何があったの?」 まくし立てるように疑問を口にする。 「ちょっと待って。順番に話をするから」 のび太はドラミに座布団を勧め、自分は学習机のイスに座った。 「うーん、どこから話せばいいかな」 ドラミは首をかしげ 「まずね、いきなりの話なんだけど、2200年初頭に地球は滅んでしまうの」 「えっ」
それはあまりにいきなりすぎる話だ。 「正確には、まず人類が滅んで、次に地球そのものが崩壊してしまうの」 ドラミの話はこうだった。 様々な要因が複雑に絡み合って、温暖化を始め地球規模の異常気象が頻発し、生態系が崩壊を始める。また高度医療・文明の発達により人口は爆発的に増え、利便性を追求することによる環境破壊が加速度を増す。しかし、やがて人類は大規模な飢饉や疾病に襲われ自滅の一途を辿る──。
それを予知した国際最高議会(ISA)は、未来の地球を救済するために緊急討議を重ねる。 その結果出された結論とは、「許可なき者の、過去への渡航を一切禁ずる」というものであった。 未来の文明が過去に流出することにより環境破壊等が加速したのであれば、それを阻止しなければならないというのがISAの言い分だった。 しかしそこには裏があった。
世界各国の富豪や権力者で構成されるISAは、高度な情報文明が過去に流れることによって民衆が革命を起こし、自分たちの思い通りにならなくなることを予見していた。また化石燃料や鉱物資源をはじめとする自然資源や、特許や知的財産の占有をも目論んでいた。 つまり一部の人間による、歴史操作が行われようとしていたのだ。 それに気付いた一部の民衆は決起し、各所で人民解放軍が蜂起した。 ドラミはその混乱の隙を突いて、こうしてのび太の元へとやってきたのだという。
「それでドラえもんが来れなくなっちゃったのか…。で、ドラえもんは今何をしてるの?」 「お兄ちゃんは解放軍のリーダーをしてるわ」 「へえー!あのおっちょこちょいのドラえもんが!?」 のび太は笑いながら涙があふれそうになった。 ──ドラえもんは生きている。
もう会えないかもしれないが、それが何よりうれしかった。 「話はだいたいわかったよ。で?」 一瞬間があって、 「ISAの魔の手は、のび太さんたちにも襲いかかってくるの」 「どうして?僕たちなんて何もできない一般市民だよ」 ドラミは首を横に振った。 「いいえ、私たちの未来はあなたたちにかかっているのよ」 「どういうこと?」 「スネ夫さんは新しく制定される人民憲法の創設者、タケシさんは第1期解放軍のリーダー、出来杉さんは新生日本の初代総理大臣になるのよ」
「マジ?すっごいねそれ!信じられない。で、僕は?ねえ僕はどんな風になるの?」 ドラミは少しうつむいて、 「のび太さんは未来とこの現代をつなぐパイプ役なの…」 「え…それだけ?」 肩を落とすのび太。そして自嘲気味に笑う。 「そりゃそうだよな。うん、僕はどうせ何をやってもダメなんだから」
「そんなことないわ!その役目はのび太さんにしかできないことなのよ。それってすごいことなんだから。特別なんだから」 のび太はドラミを手で制して、 「そんなにフォローしなくてもいいよ。ありがと」 苦笑いを浮かべるのび太。 「あ、そういえばしずかちゃんはどうなるの?僕と結婚するんだよね?」 ドラミの顔がさらに曇る。 え?何だよそのリアクション。 気まずい沈黙が二人の間を流れる。
ドラミは言おうか言うまいか逡巡した後、 「隠しても仕方のないことだから言うわね。のび太さん落ち込まないでね」 嘘だろ?ちょっと待ってくれよ。 「しずかさんは出来杉さんと──」 「ちょっと待った!」 「もういいよ。もう聞きたくない」 のび太は襖を開けて階下に行こうとした。 とてもこの場にいられない。 「…のび太さんごめんなさい。私たちのせいだわ」 ドラミの声は涙声に変わっていた。 襖を開ける手が止まる。
「私たちが不甲斐ないばっかりに…。本当ならのび太さんはしずかさんと結婚してたの。けれどISAが好き勝手に過去をいじくりまわしたものだから、未来がめちゃくちゃになってしまって、それで──」 「…で」 ドラミがのび太を見る。 「それでしずかちゃんは幸せに暮らせているの?」 のび太はドラミに背を向けたまま尋ねた。 「それは─、それは私にはわからないわ。でもきっと幸せだと思う」 のび太はドラミを振り返った。
「出来杉くんかぁ、ならいいや。しずかちゃんが幸せならそれでいいや」 「のび太さん…」 「本当のこと言うとさ、僕もおかしいなってずっと思ってたんだ。いつまで経っても僕はダメな奴のままだし、しずかちゃんはどんどんかわいくなっていくしさ。誰がどう見たって釣り合わないよね」 口をゆがめハハッと声を出すも、のび太の瞳は悲しみに揺れていた。 「のび太さん…」 「話ってそれだけ?」 「あ、ごめん。一番大事な話を忘れてた」 その後ドラミの口から語られた話は驚くべき内容だった。
「ありあとやんしたァ!」 威勢のいい声が剛田商店に響き渡る。 ジャイアンは母と二人でお店をやっていた。 「お兄ちゃん行ってきまーす!」 ジャイ子が元気よく高校へと向かう。 中学時代から麻薬を売りさばいていたジャイアンは、いつしかかなりの額を稼ぎ出すようになった。 折りしも妹のジャイ子が高校受験を控えていた時期であった。
食べていくのが精一杯の生活の中で、ジャイ子は塾に通うこともできず、また店の手伝いに忙殺されていたため、受験勉強など満足にできるわけがなかった。 中学3年の進路指導で、 「剛田さんは真面目だから、この高校であれば学校から推薦してあげられますよ」 と教師が指差したのは、入学金や学費の高いことで有名な私立高校であった。
高校に進学できなかったジャイアンは、何としてでもジャイ子を高校に行かせてやりたかった。 母を裏切っていると知りつつ、真面目に仕事をしてると嘘をつき、黒い金を稼ぐことに夢中になった。 そしてその金を貯め込んだ通帳をジャイ子に見せたとき、ジャイ子は涙を流して喜んだ。 「あたしのためにここまでしてるなんて…。言葉にできないくらいうれしい」 と、ジャイアンのゴツゴツした手を握り、涙を落とした。母も、 「お前がこんなに立派になるなんて。父さんも天国で喜んでるよ」 と涙ぐんだ。
一人ジャイアンだけが奥歯を噛みしめていた。 (俺はそんな立派な人間なんかじゃねえ。俺の手は、俺の手には麻薬の臭いが染み付ちまってんだ) 次の日、ジャイアンは組織を抜けた。 ひどいリンチを受けて身体も精神もボロボロにされながらも、ジャイアンの心は最後まで折れなかった。 その強いまなざしの奥にはジャイ子と母の笑顔があった。
「母ちゃん、少し休みなよ」 ジャイアンが店に入ってから、安心したのだろうか、母は体調を壊しがちだった。 「じゃお言葉に甘えさせてもらおうかねえ」 母が店の奥に消えてふと外を見ると、道端に意外な顔があった。 「ユタカ…さん」 ジャイアンがユタカに近付いていく。 「あの剛田が乾物屋とはなァ!」 「大声出すのやめてもらえんスか」 「ツラ貸せよ」 ジャイアンの胸に黒い不安が広がっていく。
ユタカは人気のないところまで来ると、 「お前に頼みがあってよォ。コレ捌いてくれよ。お前なら楽勝だろ?ヒヒヒ」 ユタカは耳元で囁いて、白い粉の入った包みを渡してきた。 「これ…シャブっスか」 「頼むよ、なァ。俺もこないだ正式な盃もらってよ、今が一番大変なときなんだよ。わかるだろ?」 「もう俺はあのとき足を洗ったじゃないスか」 ジャイアンがそう言うと、ユタカの顔色がサッと変わった。
「おいコラァ。テメエみたいなクズがそう簡単にこの世界から逃げられるとおもったら大間違いだぞ。お?」 さらに狂気を増したユタカの眼光がジャイアンを貫く。 「お前あの店が潰れちまったら悲しいだろ?かわいい高校生の妹もいるんだしよォ!」 奥歯をきつく噛みしめる。 ジャイアンの中に抑えきれないほどの怒りがこみ上げてくる。 「んだとコラァ…!」 「あ?お前ヤクザ者に手ェ出すんか?おうコラァ!!」 しかし、睨みつけた下品なユタカの顔の先には、ジャイ子の顔があった。
ジャイアンは長い息をひとつ吐き出し、 「これで本当に最後スよ」 「わかってるって!さすが剛田。とりあえずモノがモノだからよ、捌くにもやり方ってのがあるんだよ。ちょうど今から取引すっからついて来い」 連れられた先は、パチンコ屋だった。 タバコの煙と喧騒が充満する中、ユタカがパチンコをしている一人の若者をアゴでしゃくった。 「あいつが俺の常連さんだ。ヒヒヒ。まぁここで見てろ」
ここからでは若者の後姿しか見えないが、どこか見覚えがある。 若者の隣に座ったユタカは、さりげなくタバコを交換し、席を離れる。 これで取引は終了ってわけか。 続いて若者も席を立った。 「──スネ夫?」 まさかそんなはずはない。あいつは確か出来杉と同じデキのいい高校に行ってるはずだ。少し前、親父さんのことでいろいろあったみたいだが、あいつが覚せい剤に手を出すなんてありえない。 ジャイアンは若者の後を追った。
若者の肩をつかんだ。 若者は振り返って目を大きく見開いた。 「ジャ、ジャイアン…」 「やっぱりスネ夫か」 ユタカが追いかけてきた。 「おい剛田、お前何やってんだ。ん?知り合いなのか?」 「…ダチッス」 ユタカが弾かれたように笑った。
「ワハハハハ!こいつはおもしれえ!よし、じゃあこいつは俺からのプレゼントだ。お前にやるよ」 スネ夫はうつむいている。 「また連絡するからよ」 ユタカはそう言い残して店を出て行った。 ジャイアンはスネ夫の首をつかむと、外へと連れ出した。
外はもうすっかり暗くなっていた。 しばらく後、二人はいつもの空き地で向かい合っていた。 「スネ夫、てめえ何やってんだ」 ジャイアンはスネ夫の胸倉をつかんで締め上げる。 街灯に弱々しく照らされたスネ夫は憔悴しきっていた。 「…ジャイアンこそ、あそこで何してたんだよ」 目だけが異様に鋭い。 それは麻薬中毒者特有の目だった。
「俺のことは関係ねーだろ!」 ジャイアンはスネ夫を突き飛ばすと、 「シャブだけはやめろ。お前廃人になりてえのか」 スネ夫は身体を起こして、 「ジャイアンには関係ないだろ」 と吐き捨てた。 「テメエっ!」 ジャイアンの拳でスネ夫の身体はさらに吹っ飛んだ。 「てめえに何があったか知らねえけどな──」 「ジャイアンに何がわかるんだよッ!!」 「スネ夫…」 スネ夫がジャイアンに飛びかかった。
力の入らないパンチがジャイアンの腹や顔を打つ。 「このやろう!、このやろう!」 わけのわからない言葉を叫びながら、スネ夫は何度もジャイアンを殴った。 スネ夫は泣いていた。 泣きじゃくりながら、咆哮を上げていた。 「クソッ」 ジャイアンは暴れ狂うスネ夫を抱きしめた。 「スネ夫ッ!」 それでもスネ夫は泣きながらジャイアンの背中やわき腹を殴り続けた。 「てめえっいい加減にしろよっ!」 太い声が詰まる。 ジャイアンも泣いていた。
ーーーーーとりあえずここまでーーーーー
まぐろ氏登場するのあとどれくらい?
中学生外伝まだ?
よくわからないが、とりあえず続きを待とう
面白いです。有難うございました。 出来れば続きを読ませて頂きたいです。 凄い才能をお持ちなんですね。
まぐろ氏と不倫中
このあとジャイアンとスネ夫の絡み?
どらえもんの板行け!! 星ドラ関係無いじゃん!!
もっともだな!
まあ待て、これからかもしれないぞ
1行しか読んでないから何とも…w
原稿済みの状態で打ってるのか? これまともに読んでる奴いるのだろうか、、
正論だな! イカレテル!!
ドラえもん板なんてあるの? そんなに怒らなくても…。
なければ、あなたのホームページでやりなさい! ここは星ドラ!!
星ドラに無関係のスレだっていっぱいあるやん。 なんでそんなにムキになってるの?
その考えがあなたみたいな人が増える原因じゃない? みんなやるから自分もやる。中二病!
君しろくまさん面白い 返し好きだわーーーー
まぐろ氏登場するなら応援するお
続きを待っている人もいることを忘れないでもらおう
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「さっきも話したとおり、のび太さんたちはISAにとっては邪魔な存在なの。だから目に見えないような形でみんなを潰しにかかってくると思うわ。それに負けないための、22世紀最後の秘密道具がこれよ」 ドラミはバッグから一輪の花を数本取り出した。 ガーベラのようなその花は、見たところ何の変哲もなさそうで、まだ花は咲いておらず蕾のままであった。
「これがそんなすごい道具なの?もっと手っ取り早くて便利な道具いっぱいあったじゃない。あ、もしもボックス出してよ」 「そうね。のび太さんはお兄ちゃんが持ってる道具、いっぱい知ってるもんね。でも残念だけど、のび太さんが今まで見てきた道具は一切使えなくなってしまったの。例の法律によって、私たちがタイムトンネルを通過するときに、従来の秘密道具がすべて無効化されてしまうようになってしまったのよ。だからもう、どこでもドアもただのドアでしかないってこと」
「未来の道具を過去に持ち込めなくなったってことか…。これは違うの?」 「解放軍の特殊開発部と、地球史上最高の頭脳と評されるマキシマス博士との共同開発でやっと完成した特別な道具よ。これなら、いかなるISAの干渉にもビクともしないわ」 「へえ…。で、この花はどういうときに使うの?」 「この花それぞれにタグがついているでしょ?」 よく見ると、茎の部分に小さな白いタグがくっついている。
「花が咲く直前、このタグに誰かの名前が浮き上がってくるわ。そしたら───」 ドラミの説明はその後も続いた。 のび太の表情が段々と暗く、険しくなっていく。 陽はとっくに暮れ、階下から「のびちゃん、お友達も一緒にごはん食べるの?」という声がして、ドラミが「お構いなく!もう帰りますから!」と答えた。
「説明はそんなところね。残酷な話だと思うわ。けど、これしか方法がないの。誰かがその役目を果たさなくちゃならないの。誰がその役目をやるかは、みんなで話し合ってみんなが納得してから決めて。本当なら私もお手伝いしたいんだけど、ISAの監視がかなり厳しくなってきてて、この先ここに来れるかわからないから」 「うん、わかったよ。あ、あと使うとき失敗するといけないから、もう少し余分にもらえない?」 ドラミは下を向いて首を振った。
「言い忘れちゃったけど、マキシマス博士は、この“身代わり花”の開発直後にISAの手によって殺されてしまったのよ。だからこれが全部。失敗は許されないわ」 そしてのび太をまっすぐ見つめ、 「未来はのび太さんたちの手にかかっているの」 と言うと、ドラミはそっとのび太を抱きしめた。 「こんなつらい選択をさせてしまってごめんなさい」 しばらく抱き合った後、ドラミはのび太からそっと離れて顔を見つめた。
「みんなにもよろしくね。お兄ちゃんも私もあっちで戦うから。時代は違うけど、のび太さんたちと一緒に戦ってるから。みんなのこと信じてる」 ドラミが帰った後、のび太はイスに座り、机に並べられた5本の“身代わり花”を見つめていた。 「身代わり…か」 のび太は窓を開け、一番星を眺め未来を想った。 あの星は、のび太が生まれる前からそこにあって、きっとのび太が死んでからもずっと輝き続けることだろう。
変わらないもの。 変わっていくもの。 変えてはならないもの。 変わるべきもの。 大切な何かを守るために15歳ののび太ができること。 今ののび太にしかできないこと。 ドラミの言葉が蘇る。 「他の人たちを救うためには、5人のうち誰かが犠牲にならければならないの」 「のび太さんは未来とこの現代をつなぐパイプ役なの…」 「しずかさんは出来杉さんと──」
のび太は頭を振った。 「僕しかいないんだ」 言葉にしてみたものの、立ちふさがる壁の大きさに足がすくむ。 僕にできるのだろうか。 強くなりたい──。 変えてはならないもののために、のび太は変わろうとしていた。 数日後、のび太は進路について両親と話した。 高校へは進学しないこと、しばらく旅に出ること。
母はのび太の突拍子もない話に怒り、執拗に考え直すよう求めた。 しかしのび太の決心は揺るがなかった。 最後に父は、 「これも貴重な経験になるかもしれない。これからの時代、学歴があれば安心とも言い切れない」 と、のび太の背中を押してくれた。 スネ夫やしずか、出来杉が高校の門をくぐった朝、のび太は一人あてのない旅に出た。
ーーーーーーーーーーーーーーー しずかの様子がおかしいことに、母は数日前から気づいていた。 このところ食欲もなく、帰るとすぐに部屋に篭るようになっていた。 「ただいま」 以前は、たまにではあるが友達と夜まで遊んでいたときもあったが、最近はいつも学校からまっすぐ帰宅しているようだ。 「しずか今日ね、すごくおいしいって評判のケーキ買ってきたの。一緒に食べない?」 と、明るく誘う母に、 「いい。いらない」 と階段を登りかける。
「いいから食べてごらんなさいってば。2時間も並んで買ったんだから」 母は半ば強引にしずかの肩を抱くようにしてリビングへと連れてきた。 しずかはまるですべてに興味を失ったかのように、力なくソファに座る。 母はいそいそとケーキと紅茶の準備を始めた。 「ママは毎日楽しそうね」 しずかは遠くを見つめながら呟いた。 「楽しいわよぉ」 母は最近しずかとほとんど会話らしい会話をしてなかったことを後悔していた。
「そりゃあママは楽しくて仕方がないでしょうねえ」 しずかの口調が刺々しいものに一変する。 母は聞こえない振りをした。 ケーキと紅茶をテーブルに運ぶと、 「さ、食べましょ。わぁおいしそう!ほら見て」 と、しずかを振り返った母に、 「ママは穢れてるわよ」 母の顔が凍りつく。
「な、何を急に言い出すのよ。ビックリするじゃない」 と、作り笑いを浮かべる母に、 「私が何も知らないとでも思ってるの?」 しずかの冷え切った口調で空気が張り詰める。 一瞬の沈黙の後、 「何が言いたいの」 母も真顔でしずかに向き合う。 心臓の音がしずかに聞こえてしまうのではないかと思えるほど激しく全身に響く。 しずかはフッと笑って立ち上がると、 「ママ浮気してるじゃない。もうこの家もおしまいね」 とリビングを出ようとする。
「ちょ、ちょっと待ちなさい」 しずかの手首を掴む。 と、そのとき掌に妙な感触があった。 手首を返すと、そこに何本もの傷跡が残っていた。 「しずか、何これ」 「離してよっ!」 母の手を振り解いて、しずかは部屋へと駆け上がった。 そのとき、リビングに置いてあった母の携帯がメールの着信を知らせた。 《今度いつ会える?》 男からのメールであった。 母は携帯をソファへ放ると、しずかの部屋へと急ぎノックした。
「しずか」 返事はない。 さらにノックする。 「入るわよ」 と、ノブに手をかけると 「入ってこないで」 としずかの声がした。 構わずドアを開ける。 しずかは部屋の真ん中に立っていた。 右手にカッターナイフを握り締めて。 「しずか、ママのこと?ママのことが原因なの?だったらママの話も聞いてほしいの」 しずかに近づく母に、 「来ないで!」 しずかはカッターナイフを両手で構える。
「しずか落ち着いて、ね。話せばきっとしずかも──」 「ママのことだけじゃないわ」 母が固まる。 しずかは口を歪めながら、 「私ね、ちょっと前からクラブに通ってたの。週に1回くらいなんだけどね。ママ知らなかったでしょ。彼氏に夢中だもんね」 「しずか…」 「でもそんなことどうでもいいの。ママはママ、私は私だから。けどね、私こないだクラブ行ったときにね、そこにいた男に、知らない男にね」 しずかの目から涙があふれる。 カーペットにポタリ、ポタリと染みができる。
しずかは何度もしゃくりあげながら、 「犯されちゃったのよ」 母の目が大きく見開いた。 よろよろとしずかに近づく。 「来ないで!」 しずかの目は血走っていた。 「私ね、もう汚れちゃったの。だからね、もうこんなんじゃ生きていけないの」 しずかは静かに目を閉じて、カッターナイフを自分の首に持っていった。 「しずかッ!」 母がしずかに飛びかかる。 が、しずかもとっさに後ろに飛びのいた。
「来ないでって言ったでしょうっ!」 母はしずかをまっすぐに見据えて言った。 「あなたは何も汚れてなんかいない」 しずかは鼻で笑った。 「ママに何がわかるのよ」 「わかるわ。自分の子だもの。あなたは何も汚れていない」 「ふざけないでっ!ママに私の気持ちがわかるとでも言うのっ!」 母も大粒の涙をこぼした。 「ごめんなさい、しずか。あなたが一番つらいときに私は何もしてあげられなかった」 「後からなら何とでも言えるわ」
「そうね。ママを許してとは言わない。ただあなたが自分で命を絶つのは間違ってる。刺すならママを刺しなさい」 しずかは大声で笑った。 「そう言えば私が『はい、そうですか』とでも言うと思ったの?」 そして真顔になって、母を睨んだ。 「私は本気よ」 「じゃあしずかはママが本気じゃないと思ってるの?」 母が一歩前に出る。 「来ないでって言ったでしょ」 しずかが後退ると背中が壁に当たった。
「あなたは私が命をかけて産んだ子よ。そんな大切な子を目の前で死なせるなんてできると思う?それにあなたには輝かしい未来がある。どうしても刺したいならママを刺しなさい」 母はゆっくりとしずかに近づいていく。 「イヤっ!来ないで!」 カッターナイフを力いっぱい握り続けたせいだろうか、しずかの腕も指先も固まったように動かない。 このままでは本当に母を刺してしまう。
「ダメっ!来ちゃだめぇっ!!」 母は両手を広げ、首を激しく振るしずかに近寄る。 「しずか、ごめんね。つらかったね」 そして母はしずかを強く抱きしめた。 「いやあああああああああ!!!!」 しずかの悲痛な叫びと母の穏やかな顔が交錯した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ジャイアンを殴るスネ夫の拳にも力がなくなってきた。 「クソッ!クソッ!」 と嗚咽を漏らすスネ夫を力強く抱きしめるジャイアン。 二人はもうヘトヘトだった。 元々体力のないスネ夫は、ついにジャイアンの足元にへたり込んでしまった。 ハァハァと肩で息をする二人。 二人ともびっしょりと汗をかいていた。 「ごめん…よ、ジャイアン」 息を切らしながらスネ夫が呟く。
ジャイアンはスネ夫を見下ろしながら、 「シャブだけはやめろ」 ドスの効いた声が、荒い息遣いと共に吐き出される。 ジャイアンのこめかみを汗が幾筋も伝う。 「もう僕はダメだよ」 スネ夫は下を向いたまま泣き笑いの顔を浮かべる。 そしてジャイアンに向けて手を伸ばした。 「ほら、見てよ」 伸ばした腕が小刻みに震えている。 「僕の身体は、もうこうなっちゃったんだ」 スネ夫はそう言うと、自嘲気味に笑い、自分で自分の身体を抱くようにした。
「もう僕はダメだよ」 「俺がやめさせてやる」 力強い声がスネ夫の頭上から降ってくる。 そしてジャイアンはしゃがみ込むと、スネ夫の肩を掴んだ。 「俺にまかせとけ」 ジャイアンの瞳は燃えるように揺らめいて、まっすぐにスネ夫を捉えた。 しかしスネ夫は力なく目を逸らした。 「僕だって、何度もやめようとしたんだ。でもダメなんだよ。今だってほら」 スネ夫は震える指先を見つめた。 「頭ではいけないって分かってるんだけど、もう身体はアレなしじゃ生きていけないんだ」
そのとき、空き地へと入ってくる人影がスネ夫の視界に入った。 「のび太」 ジャイアンも振り返る。 「お前、いつ戻ってきたんだ」 「やあ」 のび太は軽く手を上げて、優しい微笑みを浮かべながら二人に近付いてくる。 二人は街灯に照らされるのび太を改めて見た。
中学卒業後、のび太が誰にも何も言わず旅に出たという話は、ジャイアンたちの間で一時期話題になった。 ドラえもん探しの旅に出たのではないか?というのが大方の予想だった。 あれから約2年が経ち、二人がのび太と再会したのは、これが初めてだった。 久しぶりに見るのび太は、背はあまり変わっていないが、髪は伸び、少し痩せて精悍な印象を受ける。 また言葉ではうまく表現できないが、独特の何とも言えない雰囲気を全身から醸し出していた。 「スネ夫、待たせたね」
のび太はしゃがみ込むと、スネ夫の肩に手をかけた。 「お前今までどこ行ってたんだよ」 ジャイアンの言葉に、 「あちこちさ。みんなを助けるために戻ってきたんだ」 と言うと、背負っていたリュックから一輪の花を取り出した。 「ほら、綺麗に咲いてるだろ」 とスネ夫に差し出した花は、ほんのりと光を帯びている。 そしてその花びらを一枚一枚ちぎると、すべて口に含んで数回噛み、ゴクリと飲み下した。 のび太が立ち上がる。
「さあスネ夫。僕と抱き合おう」 のび太が両手を広げる。 スネ夫とジャイアンは呆気に取られた。 「何言ってんだのび太。お前頭おかしくなっちまったのか?」 ジャイアンは訳がわからない。 スネ夫も立ち上がって、 「一体何なんだよ。どういうことか説明してくれよ」 「この花はドラえもんにもらった秘密道具さ」 「ドラえもんだって!?」 二人が声をそろえる。
「ああ。それで僕がみんなを救う役目に選ばれたのさ」 「どういうことだよそれ。ドラえもん帰ってきてんのか?っていうか、のび太は最初から僕がこうなるって知ってたのか!だったらなんでもっと早くに来てくれなかったんだよっ!」 スネ夫が激しい口調でのび太を責める。 「ドラえもんはもう帰ってこないよ。それに誰がいつ、どんな風に危ない状況になるか僕にはわからない。ただ2~3日前からスネ夫がヤバくなりそうなのはわかってた。
あれが咲いたら初めてこの道具を使うことができるんだ。そしたらさっき花が咲いてさ、なんとなくこの空き地にスネ夫がいるんじゃないかと思って来てみたところさ」 「僕とのび太が抱き合ったらどうなるっていうんだよ。パパは会社に裏切られて刑務所行きだし、僕はこんな身体になって学校にも行けやしない。一体どう助けてくれるんだよ!」 切羽詰った顔で訴えるスネ夫の目の下には、大きなクマができていた。
ここのところ、まともな食事も睡眠も摂っていない。 家に帰っても、母は酒を飲んでばかりで料理などほとんどしなくなってしまっていた。 スネ夫はスネ夫で昼夜逆転の生活をしており、高校にもほとんど行かなくなった。 事情を知った学校の特別の計らいにより、現在は辛うじて休学扱いとなっていたのが唯一の救いだ。 「詳しいことは僕も聞かされていないんだ。とにかく僕と抱き合ってみよう。何か変わるかもしれない」 そう言うと、のび太は再び大きく手を広げた。 「さあ」
スネ夫は半信半疑のまま、気力も体力も尽き果てた様子で、よろよろとのび太に近付くと抱き合った。 すると、二人の身体が淡く、柔らかい光に包まれていく。 「なんだこれ…」 ジャイアンが驚きの声を上げた。 「ああ…」 スネ夫が思わず声を漏らす。 一体どういうことだろう。スネ夫の身体に精気が満ちてくる。 黒ずんだ大きなクマが消え、ギスギスと痩せこけてしまったいた頬もふっくらと元通りになっていく。 カサカサに乾いていた肌には張りが戻り、目にも力が蘇った。
そして何十秒か後、二人を包んでいた光はフッと消えた。 スネ夫はのび太から離れると、 「すげえよ、これすげえよのび太!身体が別人みたいだ」 と感嘆の声をあげた。ジャイアンものび太に駆け寄る。 「すげえなのび──」 と言いかけたそのとき、のび太は急に糸の切れた人形のように、ガクッと膝から崩れ落ちた。 「どうした!?」 ジャイアンがのび太を助け起こそうとする。 ガハッ。
のび太の口から吐瀉物が吐き出された。 「のび太っ!」 それは大量の血だった。 のび太は両手を地面に突いて身体を支えた。 「おい、どうした!」 のび太は血を手でぬぐうと、 「…そうか、身代わりってこういうことか。ジャイアン、いいんだ。最初からわかってたことだから」 と、ゆっくり身体を横たえた。 「身代わりってどういうことだ!」 のび太は“身代わり花”のことを二人に説明した。 話を聞き終えた後、スネ夫はのび太の頭を抱くと、
「すまん、のび太。僕のために、僕のためにこんな・・・」 とのび太の頭をさすり、涙をこぼした。 ズルリ。 のび太の髪がごっそりと抜け落ちる。 「ヒッ」 スネ夫が思わず短い叫び声を上げた。 それを見たジャイアンはスネ夫を跳ね飛ばすと、代わりにのび太の頭を抱いた。
「おいのび太ァ!なんでお前がこんな役目をやってんだ。今までだってこういうのは俺様の役目だろうが!」 のび太はやさしく微笑む。 「ジャイアンは…ジャイアンは未来の日本になくてはならない人だから…」 「ばかやろう!お前みたいなヒヨッ子に他人の不幸の身代わりなんて務まるわけねえだろッ!なんで俺のこの頑丈な身体を使わないんだっ」 「この…この道具は僕じゃなきゃ使えないんだ。そういう風に設定して…あるんだ」 これはのび太が以前から用意していた嘘だった。
「なんだと」 ジャイアンがのび太を睨みつける。 そのとき、夜の空き地に携帯の着信音が響いた。 ジャイアンとのび太は音のする方を見た。 スネ夫の携帯だ。 ディスプレイには自宅からとあった。 「もしもし。──え?パパが釈放?──うん。──うん」 ジャイアンがのび太を見る。 のび太は安心したように笑顔を浮かべた。
電話を切ったスネ夫はのび太に 「のび太!パパが釈放になったって。本当に何て言ったらいいか…。とにかく今から家に戻らないといけないから。のび太ごめん」 一気にそう言うと、空き地を飛び出していった。 「…よかった」 「お前、このまま死んじまうわけじゃねえよな?」 「まさか。死んだりはしないよ」 ──少なくともみんなを助け終わるまではね。 のび太は力なく笑った。
「今夜はうちに泊まれよ。今のお前の姿を見たら、お前のかあちゃん腰抜かしちまうぞ」 ジャイアンはのび太の答えを待たず、のび太をおぶった。 青白い顔の口元には血がこびりつき、髪は半分くらい抜け落ちてしまっている。 剛田商店までの帰り道、ジャイアンは背中にのび太の体温を感じながら、チクショウと奥歯を噛みしめた。 自分の不甲斐なさが腹立たしくて仕方なかった。
一方で、のび太の変貌ぶりに驚いていた。 小学生の頃、ジャイアンとスネ夫にいじめられてすぐ泣いていた頃が懐かしく感じられる。 「お前は男の中の男だ。もうお前は弱虫ののび太じゃねえ」 のび太はジャイアンの大きな背中に安心したのか、安らかな寝息を立てていた。
ーーーーー今日はここまでーーーーー
これなんなの?嫌がらせ?
病気だから許してやれ!
そんなー(´・ω・`)
著作権に引っかかります。 外伝、海賊版は違法です。
森の熊さんてきなw 沢山の人見てるからな!これはマズイ!
違法性があるなら運営側に通報します。
自分で書いたって言ってなかった?
何故こんなくそつまらんことはじめたのか?
これを読んで面白いと思える奴の感性を疑うわ。
ん?当然自分で書いてるだろwだから問題! 登場人物まんまじゃん!
具体的にどんな罪でしょっぴけるかな?
勘違いャローだからですw
そういうことかw
とりま運営から削除か、本気だされたら本人捜索始まるんじゃない! まー損害賠償だろうな!
くだらねえw じゃアニメの似顔絵描いた奴は みんな著作権に引っかかっちまうなwww
心ない荒らしに蹂躙され、 ここも潰されてしまうのですね。涙
へたしたらGame8閉鎖!
無知だなw 似顔絵とレベルが違う!連載しちゃってるしw
確かに!似顔絵と連載は違うのです。
楽しみにしてくれてた人 ごめんなさい。 精神を病んでしまった荒らしさんのせいで これ以上貼れないかもです。涙(^ω^)
明日にはスレごと消えてるかもよ
このスレ自体荒らしって事がわからない? ここ星ドラ!わかる?
この連載の方が病んでるw
自分の快楽や欲のためなら相手の権利も無視。 むしろ何が悪いと吐く。 民度が低い国の人かよ。
自ら著作権侵害しておいて他のせいにすんなって
良識を疑う発想がお茶と同じだから仲良しなんだね。 無駄に歳だけ重ねるとこうなるのか。
この時間はイかれた奴多いんだな 作戦会議室の奴らか?
ちゃいな発想だなw
アホかこいつ。 個人で描くのは自由。 それを何処にどの様な形で公開するかは別次元の問題。
しろくまに忠告しなければ著作権侵害で痛い目に遭っていただろうに余計な事すんなよ名無しどもw
クソスレ警備員がクソスレを立てた末路
嫉妬ってこえーな
著作権は利害がなければ大丈夫では
著作権、利害? このサイトは広告載せてるから、金銭発生してるんだよ。わかる? 1人の為にGame8が可哀想。
なら コカ・コーラ ↑これはアウト?
キチ沸いとるなw
早く答えてくれよ 孫悟空 ↑これはアウト? 賢いんだろ!
はじめまして。 みなさんの補足ですが。 正式には、著作者人格権の同一性保守権にあたります。 著作者が自分の著作物のタイトルや内容を、他の誰かに勝手に変えられな い権利。簡単に説明しますと。 1.作者の了解なしにみんなにみせる。 2.作者の了解なしに作者の名前を公表する。 3.作者の了解なしに作品を変える。 1.3にあてはまります。 個人で楽しむのは自由ですが、ここでは不適切ですよね。 これ以上論争しない方が良いと思われます。
あれ? 今、全部読んで感動してたんだが… この続き?どうなった? ジャイアンめっちゃ好きだわー! のび太はどうなるんだよー? バカヤロー!! しずかちゃんに手ー出したクソ野郎ー!! お前だけは大っ嫌いだからな!アホタレ! で、続き早よせろ!
(´・ω・`)
スレの規約違反して他SNS勧誘するしこれみたいに人様の著作権も無視するし......... 自分が楽しければ何でもアリなんだろうな.......................
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もしドラえもんがいなくなったら、 のび太たちはどんな人生を送ることになるんだろう。 そんな俺の妄想で描く空想小説。 なるべく原作の世界観を踏襲するようにします。