「雰囲気ゲー」という言葉をご存知だろうか。明確な定義があるわけではないものの、良い意味ではアートワークに特別優れていたり、悪い意味ではストーリーやゲーム性が希薄だったり、まあ他者への紹介が難しいタイプのゲームの、その、アレだ。アレのことを言う。
本作『黄昏ニ眠ル街』はそんな、いわゆる雰囲気ゲーと呼ばれるジャンルに相当することを、あらかじめ理解してもらいたい。
目次
▲「双子大橋」の一風景。桜を連想させる木々が特徴的
本作は「3D探索アドベンチャー」というジャンル付けがされている。驚くほどそのジャンルが適切な本作だが、言い換えるなら「探索パズルアクション」といったところだろうか。
ストーリーは単純明快だ。プレイヤーキャラクターである少女「ユクモ」が、遠い東の地「トウエン」を目指し飛行船で移動中に不慮の事故に会い、「黄昏の霧」に覆われた街に迷い込む。ユクモは自身の飛空船の修理のために「大地の源」を集め、黄昏の霧の原因究明に挑む。記号的な悪や敵は存在せず、陰鬱な要素もない。
▲「双子大橋」の夜の風景。また違った趣が楽しめる
そして触れなければならないのは、オリエンタルな雰囲気漂う建造物と、広々とした街並みの魅力だ。メインとして探索する黄昏に眠る街々は、多少ゲーム的に不自然な構造になっている部分こそあれ、雰囲気を大きく壊さずプレイヤーを引き込んでくれる。
無駄に広いということはなく、代わりに上下に入り組んだ場所が多いため密度は高く、迷う。そして、迷うことによる楽しみと発見を、ゲーム的な収集要素が与えてくれている。
▲チープなアクション。ここにアートワークの誉はない
本作において最もアクションを求められるのは、「神木の聖域」と呼ばれるステージクリア型ゲームだ。しかしこのステージ群、難易度が低すぎるためクリアにあたって達成感が小さく、ひたすらに退屈なのだ。そもそも石造りで殺風景な部屋が連続している時点で、この場所は『黄昏ニ眠ル街』全体の独特な東洋ファンタジー世界から隔絶されたコンテンツと言える。
▲世界観は一応垣間見えるものの、あまりにも粗雑だ
また、背景ビジュアルについては力が入る一方で、ストーリーやキャラクターの深堀りはほとんどなく、アクション性やUIについてもギリギリ及第点の域は出ない。明らかに力を入れていないであろうことは、プレイして30分もしないうちに自然と気づく。
▲「潮風埠頭」の風景。遊覧船で行き着く先は?
筆者は勝手に想像する。まず綺麗な街並みを表現したいという出発点から、それをアプローチするのに最も効率的な方法はなにか、という流れで本作が生まれたのだろうと。であれば、安っぽいパズルアクションや希薄なストーリー・キャラクター、UIの簡素さにも納得がいく。それを手抜きと片付けてしまうのは簡単だが、代わりに丹精込めて製作したであろう街々を表現するための工夫は随所に見られる。
▲現在位置が分からない、リアルだが役立たない地図
例えば基本画面に表示されるのは左上の大地の源と通貨のみで、ミニマップもコンパスも表示されなければHPやスタミナなどという要素もない。ここにもし先述したような機能が表示されていたら、恐らく背景に目を向ける機会はぐっと減ってしまったことだろう。例えば住人の近くを通るだけでデカデカと吹き出しや字幕が出ていたら、逐一冒険のヒントをゴテイネイに伝えられていたら、街中を探索する必要もなくなってしまうだろう。
「探索すること」以外の要素について、賛辞するほど優れた部分は本作にない。ゆえに、プレイヤーは自然と「探索すること」が本作の目的であり楽しむべき部分であると自覚させられる。そして、意外なことに探索が楽しくなる。
▲「潮風埠頭」の上空からの夜風景。初めて狭さに驚く
操作性が悪くアクション性もほぼない本作であるが、ゲーム進行によって2段ジャンプや飛空船での移動などのアクションが増えてくると、移動できる範囲が広がり探索を続けたくなる。特に、飛空船に乗り上空から見下ろす街の景色は、思わず声が出てしまうほどだ。
▲大地の源。これを集めるのがゲーム的な目的
紹介が前後するが、街を探索するゲーム的な理由はただ1つ、大地の源と呼ばれるアイテムを収集すること。大地の源は茂みに隠れていたり、高い塔の上にあったり、複数スポットを訪れてようやく出現したり、プレイヤーが意図せずとも街の様子を見ることで入手できるような作りになっている。
▲こんな張り紙剥がしを楽しみたいわけではない
しかし残念ながら、この収集要素を完璧にこなそうと思えば思うほど、探索が目的ではなくなってしまう。夜を照らす灯籠や揺れる草木、生活感を与える数々の小物ではなく、橙色に発行するランタンを血眼で探すようになってしまう。
プレイヤーがその状況に陥った時、恐らく本作のゲームコンセプトは見向きもされなくなる。
▲大地の源の進捗。あまり気にしないのが吉
アクションや謎解きの爽快さを期待すると、痛い目を見る作品である。街を探索し、風景を眺め、ふと目に入った大地の源を取りに行く。ゆったりとした、カジュアルな作品が好きな人にとっては、きっと良い出会いとなるだろう。
本作を楽しむコツを1つ提示するならば、熱中しすぎないことに尽きる。トロフィーや実績のコンプリートなど、もってのほかだ。なんなら、クリアを目的にしないほうが楽しめる可能性まである。『黄昏ニ眠ル街』を巡る体験を、綺麗なまま心に残しておくことをおすすめする。
なお、本レビューは2021/04/14(水)発売のSteam版によるものである。Switch・PS4での発売は2022/04/28(木)となるため、留意いただきたい。
総合評価 | ||
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5.7点/10 | ||
世界観 | グラフィック | ゲーム性 |
9.0/10 | 8.0/10 | 2.0/10 |
キャラクター (ストーリー) |
サウンド | 快適さ |
2.0/10 | 7.0/10 | 6.0/10 |
【総合評価】 編集部が話し合いによって決める参考値です。総合評価は10点満点となっており、10点=神ゲー、5点=普通、1点=致命的のように点数が高いほどより面白いゲームと言えます。 【6項目評価】 世界観:世界や設定の出来栄えの参考値 グラフィック:映像や背景の綺麗さの参考値 ゲーム性:戦闘や収集要素などの面白さの参考値 キャラクター:キャラたちの魅力、背景の参考値 サウンド:ボイスやSE、BGM等の参考値 快適さ:ロード時間や操作性、運営の更新性の参考値 |
タイトル | 黄昏ニ眠ル街 |
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発売 | PLAYISM |
開発 | nocras |
発売日・ハード | 2021年4月14日(PC) 2022年4月28日(Switch/PS4) |
ジャンル | 3D探索アドベンチャー |
プレイ人数 | 1人 |
対応言語 | 日本語/英語/中国語 |
CERO | B |
公式サイト |
このゲームはいわゆる癒し系の作品です。 散歩コースにアクションパズルのアスレチックコースがある感じ 町中にある白いコイン20枚支払ってショートカットで 攻略法は操作テクニックの問題なくらいです。 アイテムのショッピング 写真と遊び 情緒を持ち合わせたカジュアルな仕上がりのゲームですね
『黄昏ニ眠ル街』評価レビュー|「雰囲気」を破壊しない「攻略」法
このゲームを買いました。和風な世界観とカーブミラーや自販機、ガチャガチャの機械などがあり面白いです。 猫にぶつかると倒れたり、ローアングルでユクモちゃんのパンツを眺めたり、いろいろ楽しい。