【インタビュー】自治体の主体性が未来を変える!サードウェーブがふるさと納税で紡ぐeスポーツの「価値連鎖」
取材・インタビュー

【インタビュー】自治体の主体性が未来を変える!サードウェーブがふるさと納税で紡ぐeスポーツの「価値連鎖」

schedule2026.07.24 18:31editゲーム山本

現場を誰よりも知る強みを活かす!叩き上げの新社長が目指す純粋な事業会社への進化

━━まずは読者の方に向けて、永井さんのこれまでの歩みについてお聞かせいただけますでしょうか。

【永井正樹氏(以下、永井氏)】:
株式会社サードウェーブ 取締役社長の永井正樹です。よろしくお願いいたします。

私は工業系の学校を卒業した後、大手電気メーカーにシステムエンジニア(SE)として入社しました。しかし、3年ほど経ったときに「このまま大きな組織にいるだけでなく、もっと自分の力で圧倒的な成長を遂げたい」と一念発起し、転職を決意したんです。

そんなとき、秋葉原のパソコンショップ「ドスパラ」の求人が目に留まり、平成5年(1993年)4月にサードウェーブへ入社しました。店舗スタッフからキャリアをスタートし、購買や製品企画など、常に現場の最前線を駆け抜けてきました。

入社6年目で取締役に就任し、長年役員として会社を支え、2025年2月に社長に就任いたしました。現場の課題やユーザーの声を誰よりも知っているという自負を強みに、会社の新たなる成長へと向き合っています。

━━現在のサードウェーブの事業体制についてもお伺いできますか。

【永井氏】:
サードウェーブは、バックオフィス系(経理、人事、総務、開発など)のセクションを持株会社である「サードウェーブフィナンシャル」へと明確に統合・集約しました。

これにより、現在のサードウェーブは純粋な事業会社として、PCの製造や小売、サービス、そしてeスポーツ関連事業の実行にすべてのリソースを100%集中できる体制を整えています。私はそのチーフとして、事業全体のハイスピードな実行を統括している立場です。

すべてはインフラ構築から始まった!「3年で20億円」の投資に隠されたエコシステムへの執念

━━サードウェーブといえば、2018年に「eスポーツに20億円を投資する」と発表し、業界に大きなインパクトを与えました。当時を振り返ってみていかがですか。

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【永井氏】:
当時は、野球やサッカーのような伝統的なリアルスポーツと比較すると、eスポーツ界にはエコシステム(持続可能な循環の仕組み)やインフラがまったく存在していませんでした。世の中に一過性のブームではなく「文化」として根差していくためには、まず土台となる仕組みを我々が作らねばならないという、ある種の使命感があったんです。

そこで、東京・池袋にeスポーツ施設「 LFS (ルフス)池袋 esports Arena 」をオープンしたり、高校生たちのための大会「全国高校eスポーツ選手権(現在はNASEF JAPAN全日本高校eスポーツ選手権に継承)」をゼロから立ち上げました。

しかし、地方の高校生たちが大会に参加したくても、そもそも高性能なパソコンは非常に高価です。そのため、環境そのものを支援しなければ何も立ち上がらないと考え、1校につき3年間無償で5台のハイスペックPCを貸し出す「 eスポーツ部発足支援プログラム」を開始しました。

━━5台という台数は、FPSのチームを組むのにジャストな規模感ですね。当時貸し出されたPCのスペックはどのようなものだったのでしょうか。

【永井氏】:
当時、大会の採用ゲームタイトルが滑らかに動くミドルレンジ(中位モデル)の「GALLERIA(ガレリア)」を、多くの学校に貸し出しました。初年度だけでも、本プログラムをご利用いただきeスポーツ部が創設された学校は80校以上を数えました。

世界へと繋がる国際大会「ガレリアグローバルチャレンジ(GALLERIA GLOBAL CHALLENGE、GGC)」も主催しましたし、今振り返れば、日本のeスポーツの未来のために20億円を投資しきりましたね(笑)

━━初年度だけで80校!?すごいですね…!

【永井氏】:
私たちは、予算やノウハウがなくて一歩を踏み出せないという課題に対して、その車輪が回り出すように裏方として手を貸す立場。実際に熱量を注ぎ、形にしていくのは自治体や現地の皆さんですからね。

━━大人が真剣にeスポーツに取り組む子供たちを本気で応援してくれる環境があるのは、本当に素晴らしいことですね。

【永井氏】:
自分が子供の頃を思えば、今の世代が本当に羨ましいですよ(笑)

部活動を立ち上げたくても環境がなくて諦めかけていた子供たちが、生徒自身の力で「こういう支援プログラムがあるから、我が校でもやらせてください!」と先生に直談判したり、逆に先生が熱量を持って背中を押したり。

そういう「きっかけ」があったからこそ、新しい未来に挑戦できたという地域からの生の声を聞くと、この支援をやって本当に良かったと心の底から嬉しくなりますね。

相乗効果(シナジー)ではなく「価値連鎖(チェーン)」。ふるさと納税がもたらす自治体の主体性

━━インフラ支援を形にした後、2021年頃からは「企業版ふるさと納税」を活用した地方自治体へのご支援にシフトされていると思います。この取り組みにはどういった狙いがあるのですか。

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【永井氏】:
最初の3年間で20億円を投資し終えたとき、次のミッションとして掲げたのが「日本全国の津々浦々まで、草の根の活動を広げること」でした。

しかし、これは我々一社だけの力では到底カバーできません。それぞれの地域で生まれる独自のニーズや課題に寄り添った支援を行うために、辿り着いたシステムが「ふるさと納税」だったのです。

━━ふるさと納税をハブにすることで、自治体との間に素晴らしい「相乗効果(シナジー)」が生まれているように感じます。

【永井氏】:
実は、社内では「相乗効果」という言葉はあまり使っていなくて、どちらかというと価値の「連鎖(チェーン)」だと思っているんです。

全国にeスポーツを普及させる上で、私たちが自治体と手を繋いで一つのイベントを作るというよりは、それぞれの地域が「思い思いに、主体性を持ってプロジェクトを動かしていくこと」が何より大切です。

私たちは、予算やノウハウがなくて一歩を踏み出せないという課題に対して、その車輪が回り出すように裏方として手を貸す立場。実際に熱量を注ぎ、形にしていくのは自治体や現地のプレイヤーの皆さんですからね。

プロ選手が講師に!高校生5人が商店街を沸かせた「eスポーツ地方創生」

━━各自治体での取り組みの中で、特に永井さんの心に響いたポジティブな事例を教えてください。

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【永井氏】:
客観的に見ても、群馬県での事例が非常に印象的でした。一つは、プロのeスポーツ選手を招いた子供向けの体験会です。

実は、その講師を務めてくれたプロ選手の一人は、不登校だった過去を持つ子だったんです。

しかし、eスポーツという競技に出会ったことで、「チームの仲間と勝つために、対戦相手にリスペクトを持ってコミュニケーションを取らなきゃいけない」という必然性が生まれ、そこから彼の人生がアクティブに自走し始めました。今ではグローバルなシーンを見据えて英語もペラペラなのですが、それも「海外のプレイヤーと意思疎通をしたい」というeスポーツを通じた強いモチベーションが、自身の成長へと直結した結果です。

大好きなことを極めていくプロセスの中で、人間としても驚くほどのスピードで成長していく。その光景を見て、eスポーツが秘める「人の育成」の無限の可能性を確信しました。

━━もう一つの、群馬県での商店街の事例はいかがでしたか。

【永井氏】:
こちらは、高校生5人が中心となって、過疎化が進む地元の商店街を盛り上げるためにeスポーツイベントを丸ごとプロデュースした事例です。

なんと高校2年生の子たちが、半年前から企画を練り上げ、会場の手配からゲーミングPC・機材のコントロール、さらには本戦前のオンライン予選の切り盛りまで、すべて自分たちで行ったんです。若い世代が「大好きな地元を活気づけたい」というポジティブな初期衝動から、大人を巻き込んで行動を起こしていく。その泥臭くも輝かしい姿は、大人の目から見ても強烈に感動するものがありました。

私たちは支援の対象を「高校生」に限定しているわけではありません。小学生でも、シニア世代でも、eスポーツを通じて地域が活性化するなら、どんな枠組みでも頑張って支援します。

答えのない世界で振り返りを繰り返す!仕事で即戦力となる「ゲームのPDCAサイクル」

━━2023年には茨城県で教育セミナーを開催されるなど、クリエイティブや産業創出の側面も強まっています。次世代のIT人材育成において、eスポーツはどのような役割を果たせると考えていますか。

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【永井氏】:
eスポーツを戦略的にプレイするためには、ビジネスにも共通する高い「想像力」と「修正力」が求められます。試合前に「相手はきっとこういう戦術で来るから、自分たちはこのフォーメーションでいこう」と必死に戦術を組み立てる。ですが、本番では予期せぬトラブルや予想外の展開が次々に起こりますよね。その瞬間、チームで瞬時に作戦を修正し、試合後には徹底的な反省を行わなければなりません。

学校の勉強にはあらかじめ決まった「答え」がありますが、eスポーツの世界は何が起きるか予測がつかない上に、自分たちの選択が正解かどうかもやってみるまで誰にも分かりません。その不確定な中で「仮説を立て、実行し、検証して、次に繋げる」というプロセスは、まさにビジネスで必須とされる「PDCAサイクル」そのものなんです。

社会に出てからの実践的な仕事の感覚を、学生のうちにプレイを通じて体感できるのが、eスポーツの最大の強みですね。

━━ゲームのときはあれほど熱心に戦略を考えられるのに、仕事になると難しく捉えてしまうのは面白い現象ですよね。

【永井氏】:
大切なのはやはり「仕事を楽しむマインド」ですよね(笑)ゲームだって、勝って嬉しいときもあれば、ボロ負けして悔しいときもある。ピンチのときでもチームメンバー全員で「まだいける!」「ここからひっくり返そう!」と声を掛け合う。

そうした協調性、忍耐力、チームワークといった「人間力(非認知能力)」が養われる点は、野球やサッカーなどの伝統的なリアルスポーツと完全に一致しています。戦略的なデジタルスキルと、泥臭い人間力の掛け算があるからこそ、社会のどこに行っても即戦力として活躍できるスキルセットが自然と身につくのだと思います。

一発きりのイベントで終わらせない!佐賀県で実証された「地域定着」へのロングスパン戦略

━━佐賀県で行われた「デジタル人材育成プログラム」では、御社の誇るゲーミングPC「GALLERIA」を提供されたそうですね。

【永井氏】:
大変光栄なことに全面的にご協力させていただきました。3年間の長期プログラムとしてスタートしたのですが、なんと60名の定員に対して、倍以上の応募が殺到したんです。自治体さんが中長期的な目線で「デジタル人材を育てる」というビジョンを掲げ、そこに子供たちが「学びたい!」と集まり、私たちのGALLERIAを使ってくれるというのは、メーカー冥利に尽きる本当にありがたいお話です。

もちろん、お祭りとして一発きりの大規模なeスポーツイベントを開催することも、認知拡大の面では非常に素晴らしいアプローチです。ただ、繰り返し行われる仕組み(プログラム)が地域に存在すると、活動がその土地にしっかりと「定着」するんですよね。

できる限り長いスパンで、その地域に根差す仕組みやカルチャーへと昇華してもらうこと。それこそが、eスポーツが地域に最も深く浸透していくための王道戦略だと考えています。

転がり出した車輪をさらに前へ!裏方として各地の取り組みを支え続けるサードウェーブの決意

━━地方自治体の関係者の皆様へ向けて、メッセージをお願いします。

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【永井氏】:
プロジェクトの立ち上げ当初は、自治体の中でも「本当にゲームを地方創生に使えるのか?」という、産みの苦しみや激しい議論が多々あったかと思います。その重い球が転がり出すまでは本当に大変だったと思いますが、皆さんの熱意によって徐々に社会の理解が進んできました。

何より、それぞれの地方に「eスポーツを一般化したい!」「このカルチャーで大好きな地元を絶対に盛り上げるんだ!」という熱いパッションを持った大人がいて、そういう方々が草の根で支えてくれたからこそ、今、日本全国で大きな定着を生んでいるのだと確信しています。最近のGALLERIAのパソコンなんて、昔に比べて非常にスマートでインテリアにも馴染む高性能モデルになりましたしね(笑)

サードウェーブは今後も、それぞれの地域が主体となって、10年、20年と長く続くような持続可能な仕組み作りを、黒子(裏方)として全力でサポートしていきます。

ぜひ、皆さんの地域に生きる子供たちの未来、そしてコミュニティの未来を盛り上げる最高の手札として、eスポーツの可能性を信じて最初の一歩を踏み出してみてください。応援しています!

━━ありがとうございます!最後に読者の方に向けても一言いただけますか。

【永井氏】:
今はパソコンやAIが発達し、プロでなくても自分の「やりたい」という想いを形にできる時代です。音楽を作るにしても絵を描くにしても、AIが手助けをしてくれます。

大切なのは、何もないところから有を生み出す「ゼロをイチにする想像力」と、トライする気持ちです。昔はゲームばかりしていると怒られた時代もありましたが(笑)、今はその熱量が武器になります。思い立ったら、まずは色々なことにチャレンジして、とことん楽しんでください!

━━本日はお忙しい中、本当に貴重なお話をありがとうございました!

『株式会社サードウェーブ』の会社概要

社名:株式会社サードウェーブ 設立:1984年3月 公式サイト:https://info.twave.co.jp/ 公式X:https://x.com/dospara_web

© THIRDWAVE CORP.

[取材協力]:株式会社サードウェーブ

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