2025-11-20

【独占インタビュー】サードウェーブ永井新社長が語るガレリア新シリーズと「THE OTHER REAL」:挑戦の哲学とAIに踏み出す未来

今年2月に就任したサードウェーブ永井新社長に独占インタビューを実施。デザインを一新したガレリアの新シリーズへのこだわりや、VTuberコラボの展望を直撃した。新スローガン「THE OTHER REAL」に込めた想いとインドからのAI技術者大規模採用の狙いに迫る!ショップ販売員入社から社長に就任した永井氏が語る、「踏み出す」ことが重要というサードウェーブの挑戦の哲学と未来像とは。

永井社長のスタートはショップ店員だった!?永井社長の来歴に迫る!

━━まずは読者の方にこれまでのご経歴や現在のお仕事について、自己紹介をお願いできますか。

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永井正樹社長(以下、永井氏): 株式会社サードウェーブ 取締役社長の永井です。よろしくお願いいたします。

私は子供の頃にファミコンを買ってもらえなくて、初めて買ってもらえたのがパソコンで、当時安価だった8ビットの「MSX」でした。そこで自分でBASIC(プログラミング言語)を書いたり、ドット絵を作ったり、音楽を入れたり、簡単なゲームを作ったりして遊んでいましたね。もちろんゲームをプレイするのも好きで、子供の頃に一番時間を費やしたのは『ウィザードリィ』です。

その後、工業系の学校に進み、卒業後は大手電気メーカーにSE(システムエンジニア)として入社しました。そこで3年ほど働いたのですが、ふと「この先10年、20年と考えた時に、ここで自分がどれだけ成長できるだろうか」と疑問を持ち転職を決意しました。親にも相談したところ「お前がやりたいなら好きにすればいい」と背中を押されまして。

当時、東京で就職情報誌を見ていたら、秋葉原のパソコンショップの「店員募集」という記事を見つけました。給料もそんなに悪くなかったので面接に行ってみたところ、「いつから来れますか?」と聞かれて「4月の頭ぐらいなら行けます」と返事したのを覚えています(笑)

そして、平成5年(1993年)4月3日にサードウェーブに入社しました。入社後はまず店員として1年ほど働き店長を経験してから、本社勤務になりました。

本社では購買を担当し、2年目で購買の課長、3年目で部長、その後は製品企画なども担当しながら、6年目で取締役に就任しました。その後も役員を続けていて、今年の2月に社長を拝命しました。

━━現場の店員からトップまで、すべてを経験してきたんですね!

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永井氏:そうですね。人事や製品企画、工場の管理など、本当に色々なことをやりました。本格的に専属で「営業」や「経理」だけをやったことはないですが、中身の数字や知識は理解しています。

━━凄いですね…!本日はよろしくお願いします!

永井氏:よろしくお願いします!

新デザインPC「S」「F」「X」シリーズと、この先もファンと共に創る「GSL」

━━まずは新製品についてお伺いします。今回、デザインを一新された「S」「F」「X」の各シリーズについて、それぞれのこだわりや開発チーム内でのエピソードなどがあればお聞かせください。

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デザインを一新したガレリアの各シリーズ。左からX、S、Fシリーズ

永井氏:私が社長に就任したのが今年の2月でして、それ以前は副社長として経営企画を中心に行なっていたので、実務の方に深く入り始めた2月にはもうデザインやコンセプトは固まっていて、量産化へ進む段階だったんです。

ただ、もちろんこれまでの製品もずっと見てきていますから、その中で「ああ、これだよな」と一番思い入れが強いのは、やはり「Xシリーズ」ですかね。

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ガレリアの今までのデザインを踏襲したXシリーズ

永井氏:過去のシリーズをきちんと受け継ぎながら、よりこだわったデザインに昇華できています。例えば、他のケースでも好評だったフロントのエアフィルターといった”良いところ”はうまく継承しつつ、ライティングはこれまで外側を照らしていたものを少し内側に入れ、間接照明のような高級感を出す形に変えています。

フィルターもフロント、トップ、下面の3箇所に入っていますし、前のモデルでも好評だった「フロント上面にあるUSBなどのインターフェイス」も、いかに洗練させるかにこだわりました。

━━インターフェイスの位置は使いやすいですよね!今回の新モデルは曲面も美しい印象を受けます。

永井氏:曲面を綺麗に出すのは結構大変なんですよ。USBの差し込み口一つとっても、綺麗に加工する「ダイヤモンドカット」を施していたり、「ガレリアと言ったら、やはりこの重厚感のあるフォルムをいかに進化させるか」という点にみんながこだわってくれたので、完成品を見た時は「お、来た来た。正常進化だ」と思いました。あとは今回から登場したホワイトモデルですね。

━━ホワイトカラーは日本人受けも良さそうですよね。

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ガレリアXシリーズ白モデル

永井氏:これまでのガレリアは王道で男性的なイメージもありましたが、前回は途中で白モデル(パンダ的な配色)を出したんです。でも、今はユーザー層も広がっているので、今回は最初からホワイトも仕込んでいこうと。ブルーのライティングとのバランスが美しくて、Xシリーズは本当によく仕上がったなと思っています。

━━近年は女性ユーザーも増えている中で、白と間接照明の組み合わせはすごくいいと感じています。友人の女性ゲーマーも「白いパソコンが欲しい」と言っていたので、Xシリーズを勧めました(笑)

永井氏:ありがたい話です(笑)Xシリーズは、ライティングがあるタイプとない(非ライティング)タイプも用意しています。モデルが増えると管理は大変なのですが、お客様のニーズを満たせるように準備しました。

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置いていて楽しいガラス張りのガレリアFシリーズ

永井氏:さらにFシリーズには透明な「ピラーレスケース」を採用して中を見えるようにしたい。「ピラーレス、かつガレリアらしさを出す形を考えてみてほしい」とみんなにお願いしましたね。

━━今回、発表会ですべてのシリーズを拝見しましたが、どれもガレリアらしいカッコよさと、近未来的なイメージが融合していて「全部欲しいな」と思いながら見ていました。

永井氏:これだけ同時に出すのは初めてなので、みんな準備が大変だったみたいです(笑)

人気インフルエンサーコラボも今後も登場予定!?

━━渋谷ハルさんや葛葉さんなど、著名なVTuberの方々とのコラボ(GSL:GALLERIA SPECIAL LINE)は大きな反響を呼んでいます。今後のコラボのご予定やどのような点に魅力を感じていらっしゃるかお聞かせください。

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GSLコラボモデル 左から渋谷ハル、ぶいすぽ、CRモデル

永井氏:我々はこれまでも多くのインフルエンサーさんをご支援し、そのご意見を伺いながら製品を作ってきた歴史があります。そういった方々の「スペシャリティ」を形にしたものを作りたいという思いがずっとあり、今後も強化していきたいという思いで今回「GSL(ガレリア スペシャル ライン)」というラインを新設しました。

━━「単なるコラボモデル」ではなく、一つの「ライン」にしたんですね。

永井氏:もちろんお相手があることなので、何をどれだけ準備できるかは分かりませんが、お客様が「これ待ってたんだ!」と思っていただけるものを出せたらいいな、と思っています。

デザインも我々と先方さんとで協議して決めていくことなので、先方がどういう絵を使いたいか、というご意向も含めて調整していきます。中には「そう来たか」という予想外なものも今後あるかもしれませんね。

━━今後も予定しているんですね!今回のコラボPCも現物を見ると仕上がりが良くて感動しました。

永井氏:開発用デスクにサンプルが並ぶのですが、私も新しいものが来ると見に行って、仕上がりについてメンバーと話し込んだりしますね。自分たちが作ったパソコンが世に出ていくのを想像するのが楽しい瞬間です(笑)

新スローガン「THE OTHER REAL」とユーザーのための支援体制

━━刷新されたスローガン『THE OTHER REAL 踏み出せ、その場所へ』についてもお伺いします。「THE OTHER REAL」とは、具体的に何を指しているのでしょうか。

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永井氏:我々が今暮らしている世界の延長線上にあるのが、通常の「リアル」だとすると「THE OTHER REAL」は、デジタルによってもたらされる現実、および仮想の「分岐」のようなイメージで、現実だけでは叶えられなかった「もう1個のリアル」です。

それは、デジタルによって創作活動がより豊かになることかもしれないし(音楽や映像)、現実ではない仮想現実の世界にいることで今とは違うリアルを感じ取ること。それが我々の目指している「OTHER REAL」です。

━━仮想現実(VR)だけでなく、クリエイティブ(創作)も含めた「もう一つの現実」ということですね。

永井氏:先日開催した発表会でもお話ししましたが、コンテンツを作ったり、創作活動をしている人たちが、現実世界と仮想世界の双方で色々なことを実現できる。そういった世界を目指したい、というのが「THE OTHER REAL」の意図するところです。

そして、何もしなければその世界には行けません。環境や思いを持って、思い切ってその世界に踏み込んでいく必要があります。「踏み出せ、その場所へ」というのは、一人ひとりが持っている「その場所」、それがゲームという仮想世界かもしれないし、新しい音楽や映像をデジタルクリエイトする今とは違う未来かもしれない。そこへ、ガレリアと一緒に踏み出してほしい、という思いを込めています。

━━私も昨年PCを新調してから、それまで仕事でしかやらなかった映像編集をプライベートでもやるようになったり、ゲームをキャプチャして編集したり、見えない世界が広がっていく感覚があります。

永井氏:このスローガンは、当社のミッションである「人々の想像活動の可能性を最大限にする」ということから来ています。人々の想像活動の可能性というのは、仮想世界も現実世界も想像によって色々な新しいことができる世界です。その可能性を我々がいかに整備することで最大化できるかが重要になってくると感じています。なのでハードやソフトだけでなく、サポートや環境なども力を入れていきたいですね。

例えば、当社で「DCP(ドスパラクリエイティブプロダクション)」という取り組みを行っています。ドスパラの会員様ならDCP会員になれて(いずれも登録は無料)、不定期ではありますが、頻繁に実施されるプロによる1時間の無料セミナーが何度でも受けられるんです。

━━無料で話を聞けるんですか!?

永井氏:「ゲーム配信をするために何を揃えればいいか」「どうやったらフォロワーを伸ばせるか」といったコツから、DTM(音楽制作)、写真の撮り方まで、いわゆる「創作活動」をする上でのアドバイスを講義して質疑応答も行います。その講義内容はアーカイブされて、ものすごい数が溜まっているのですが、それも全部無料で見られます。

これも「想像活動の可能性を最大限にする」というミッションが根底にあるからです。興味はあるけど、どうやったらいいか分からない人の背中を押すことで、一人ひとりの「THE OTHER REAL」への道が開いていくと考えています。

━━ウェビナーだけでなく、オフラインイベントも開催しているんですね。

永井氏:やっていますね!カメラの先生と一緒に写真を撮りに行ったり、とあるゲームのゲームサーバーを一つ立てて活動する「場」を提供したりもしていますね。勉強したはいいけど活動する場がないと困りますから。TGS(東京ゲームショウ)の後にはオフ会もやりましたね。

東京ゲームショウ後のイベントの様子はコチラ!
https://www.dospara.co.jp/dcp-seminar-event-detail_1711126.html

AI技術者の大規模雇用とサードウェーブの「チャレンジ」

━━AI技術者を中心に、インドのANNA(アンナ)大学の学生を雇用すると発表されました。ANNA大学以外に注目されていた教育機関はありましたか。

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永井氏:実は、仲介でご協力いただいた方からのご紹介が大きいです。「IT系の技術者を日本に来てもらうならどこがいいか」という中でご紹介を受け、今回はそちらの大学を中心にお話を進めました。

━━今回の大規模雇用に期待されているビジョンやAIによる社会課題の解決について、サードウェーブ様が特に課題だと考えている点は何でしょうか。

永井氏:今の世の中の流れとして、AIがどんどん使われていくのは紛れもない事実です。もうAIのない世界には戻れないので、その流れの中でどうするかを考えた時に「日本だけでは技術者が採れない」ためインドの方々の力を借りました。

IT系の情報ソースは、大元をたどると大体「英語」なんです。英語がきちんと読めた上で技術的なバックボーンがあり、成長しながら開発やプロジェクトを回せる人材を考えた時、日本だけでは追いつかないと考えました。

AIの流れが変わらない中でまず我々がやるべきことは、「社内のAI化」だと思っています。会社の中でAIにできそうな業務を片っ端からAI化していく。その経験をもとに、社外にソリューションとして提供することも見据えていきますが、まずは自分たちが「AI ready」になることがスタートラインです。

あと日本は海外の方に人気が高いんですよ。綺麗だし、平和だし、アニメやコンテンツもあるし(笑)

━━アニメやゲームが理由で来られる方は多いですね。

永井氏:この前、採用した学生と話したら、少し日本語が上手な子がいて「日本語うまいね」って聞いたら、「アニメをずっと見てました」って話していました。数年前から日本語に興味を持ってアニメを見始めて勉強に身が入るようになったのだと思います。

━━現地の学生が日本で安心して働けるようどのようなサポート体制を構築されていますか。

永井氏:日本に来る前、来てからの日本語学習の支援はもちろん行います。また、住むところも大変なので、ある程度まとまって住めるような場所を確保してスタートできるようにしています。ただ、食は結構こだわりが強いので…。

━━食文化は国によって全然違いますよね…。

永井氏:そうなんです…!「この肉はOKだけど、こっちはダメ」といった意見もあるのですが全部はケアしきれないので、食に関しては各自でやってもらう形になりますが、立ち上がりは安心して仕事ができるようにサポートしています。

━━今回の雇用でインドとの繋がりが強くなると思いますが、近年急成長しているインドの(ゲーミング)PC市場への本格進出も視野に入れたりするのでしょうか。

永井氏:現状では予定はないです。将来的には、アジアを代表する企業にはなっていきたいと思っていますが、まずは日本の市場で弊社のシェアを固めるのが先だと考えています。

今後の展望は製品を完成させることと取り組み続けること

━━今後の新しい製品やサービスの構想について、現時点でお答えできる範囲でお聞かせください。

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永井氏:まず、コンセプトモデルとして発表した「Eシリーズ」を仕上げていきたいと思っています。高性能になればなるほど、冷却のためにケースはどうしても大きくなります。ですが、「ハイスペックじゃなくてもいいから、よりコンパクトに」というニーズも間違いなくあるので、そういった方々に向けたパソコンを届けられればと考えています。

━━日本はミニマリストな方も多いので、余計なスペースを取りたくないという需要は高そうですよね。

永井氏:ガレリアらしさを出したコンパクトな領域をきちんと作り上げて、デスクトップのラインナップとしては、一つの完成形に近づけたいと思っています。

あとは、GSL(ガレリアのコラボを中心としたライン)も一気に出しましたが、今後は時間を空けてラインナップを整えていきたいと考えています。

━━AI技術の活用は、これらのサービスにどのように反映されていくのでしょうか。

永井氏:まだ色々なところに適用させてみないと、何がどこまでできるか分からない部分は正直あります。例えば、FAQ(よくある質問)的なところがもっと楽になるとか、ユーザーさんに分かりやすいところで利便性が高まればいいと考えています。以前の方が、精度がよかったと言われてしまったら意味がないですから。

ただ、AIは一発でうまくいくものではなく、徐々にチューニングしていくものですから、データの持たせ方一つで変わりますし、情報は常に切り替わるのでメンテナンスし続けないといけません。プロジェクトを組んで実際にやってみて、その中で「当たり」が何個出てくるか、というところですね。

━━AI技術が御社の掲げる理念「人をつくり 価値を生み出し 社会に貢献する事業を行う」を、どのように加速させていくとお考えですか。

永井氏:理念自体は普遍的なもので、ビジネスをする上での価値観のベースです。AIが社内の効率化を進め、それがゆくゆくは他の会社さんでも使っていただけるサービスに昇華できるといいな、と思います。

ただ、このゲームやクリエーションの世界でAIをどう組み合わせるのが最適なのか、正直まだ答えはないですね。でも、これだけ(70人)の技術者を入れて社内で研究開発していく過程で、「あ、こういう活かし方もあるんだ」ということが必ず見えてくると思っています。

また、今一番リスクだと感じていることは”やらないこと”です。弊社は常にチャレンジングな会社で、パソコンのパーツ販売も誰もやってない時からアメリカから輸入して始めたり、「ゲーム専用のPCがないなら、一番特化したやつを作ればいいじゃん」とガレリアを始めたりしました。

なので、弊社は「これって求められてるはずだよね」をひたすらやり続けてきた会社です。AIという時代の変化が起きているなら、AIをやってみればいい、人がいないなら採ってくればいいと思っています。言葉で言うのは簡単ですが…(笑)

それが「第3の波(情報化社会)」を示す「サードウェーブ」という会社だと思っているので、そこは明るくチャレンジしていきたいですね。

読者の皆様へ

━━最後に、この記事を読んでいる読者の皆様へ、一言お願いいたします。

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永井氏:今回、これだけのラインナップを本当に思いを込めて作りました。まずは、お近くのドスパラ店舗や量販店さんに足を運んでいただいて、ぜひ実物を見てほしいなと思います。

そして、少しでも興味を持っていただいて、読者の方のゲームプレイがもっと楽しくなったり、パソコンが部屋に置いてあることで幸せを感じていただけたり、そういう形で共感していただけたら、我々作っている側としてすごく嬉しいですし励みになります。

ぜひ、製品を手に取っていただいて、ご意見を伺えたらありがたいなと思っています。

━━本日は、貴重なお話をありがとうございました!

『株式会社サードウェーブ』の会社概要

社名:株式会社サードウェーブ 設立:1984年3月 公式サイト:https://galleria.net/ 公式X:https://x.com/thirdwave_pc

© THIRDWAVE CORP.

[取材協力]:株式会社サードウェーブ

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