
【BitSummitレポート】『にゃんこ大戦争』のポノス×RGA対談「にゃんこは何と戦っているのか?」━━世界を爆笑させる「ボケ」の哲学とインディー精神に迫る
インディーゲームの祭典「BitSummit」のメインステージにて、ポノス株式会社のCOO兼開発部長・佐野星一郎氏と、グローバルクリエイティブエージェンシー「RGA TOKYO」のエグゼクティブクリエイティブディレクター・中出雅也氏によるトークセッションが開催されました。
テーマは「にゃんこは何と戦っているのか」。今年で14周年を迎える『にゃんこ大戦争』の知られざる原点から、世界に「関西のボケ」を届けるためのクリエイティブの裏側まで、熱く、そしてユーモアたっぷりに語られたセッションの模様をお届けします。
『にゃんこ大戦争』の原点━━「同僚を笑わせたい」から始まったインディー精神

始まりは、1人のデザイナーの悪ふざけから
今や世界中で愛される大ヒット作となった『にゃんこ大戦争』ですが、佐野氏によると、最初からここまでのスケールやインパクトを狙っていたわけではなかったと言います。

佐野氏:
「始まりは本当にシンプルでした。1人のデザイナーが、面白い絵を描いて、横に座っている同僚を笑わせてやろうとしたところから始まったんです。そこで描かれた『キモ猫』を見た同僚が大爆笑し、『このキャラめっちゃ面白いからゲームにしようや!』となったのがきっかけです。まさに、今日のBitSummitに集まっているインディーゲームの皆さんと同じ、身近なところからのスタートでした。」
当時はガラケー向けのゲームとしてスタートし、その後のスマートフォンの普及の波に乗る形で形を変えていきましたが、その根底にある「インディー精神」は今も変わっていません。
関西特有の「ボケ」のカルチャーを世界へ届ける挑戦

自分たちがオモロイと思うもので勝負する。ダメならそれでええやん
未上場企業であるポノスには、2代目社長の辻子依旦氏から受け継がれる強烈なDNAがあります。それは、世間のトレンドを追うこと以上に、「自分たちが面白いと思うかどうか(=ボケるかどうか)」を徹底的に大事にするカルチャーです。

佐野氏:
「誤解を恐れずに言えば、『自分たちがオモロイと思ったもので勝負して、それでダメだったら、それでええやん』という空気感があります。ゲームだけでなく、オフラインイベント、グッズ、タイアップなど、すべてにその『味噌』が詰まっています。」
グローバルで「笑いのツボ」をどうアジャストするか

しかし、その関西特有の「ボケ」をそのまま海外(英語圏、韓国、台湾など)に持っていっても、文化や習慣の違いからそのままでは伝わりません。そこでタッグを組んだのが、4年来のパートナーであるRGAの中出氏のチームです。
佐野氏:
「お笑いを海外に届けるのは本当に難しい。アメリカなら漫才よりもスタンドアップコメディが主流ですし、笑いのポイントが全く違います。そこでRGAさんの力を借りて、僕らのDNAの鮮度を保ったまま、現地の文化に合わせた『テーラーメイド』の表現にアジャストしています。」
ゲームの枠を超えた「ユーザーとのコミュニケーション」

ポノスとRGAが仕掛けるマーケティングは、単に「お金を払って広告を出して終わり」ではありません。ゲームの内と外の境界線をなくし、ユーザーを巻き込む独自の「遊び」を展開しています。
事例①:オーディションに落ちた不採用にゃんこの逆襲(アメリカ)

アメリカで実施されたキャンペーンでは、「過去にデザイナーのドローイングで描かれたものの、オーディションに落ちてゲームに出られなかったにゃんこ(アウトキャッツ)」が、ポノスに挑戦状を叩きつけてネコカンを盗むという、メタ的なストーリーを展開されました。
広告という枠を超え、ユーザーが「ゲームを乗っ取ろうとする側に巻き込まれていく」というエンターテインメントを提供しました。
事例②:10周年記念「ミッション・インパウシブル」

10周年時には、敵である「わんこ」たちに記念ガチャを乗っ取られるというミステリー仕立てのキャンペーンをグローバルで実施されました。
SNS上でのユーザーによる考察や、モールス信号の解読など、ゲームの外側でもユーザーが「遊びきる」信頼関係が生まれました。

中出氏:
「ポノスさんのすごいところは、広告が終わった後も、ゲームの中と外が繋がったような遊びがどんどん展開されていくところです。これほど長くユーザーが付き合ってくれる関係性は、他にはなかなかありません。」
言語化されない「にゃんこっぽさ」とチームの信頼

多くの企業ではキャラクターの取り扱いに厳格な「レギュレーション(取扱説明書)」が存在しますが、ポノスにはそれがほとんどないと言います。
佐野氏:
「社内で『にゃんこはこうあるべき』というルールは言語化されていません。その代わり、長年『にゃんこ』に携わってきた信頼できる仲間がいます。企画の会議で複数の案が出たとき、不思議とみんなが『これぞにゃんこっぽいよね』と同じ案(答え)に収斂していくんです。この感覚を共有できているチームの存在こそが、最大のバロメーターです。」
ゲームの余白(ストーリーをあえて語りすぎない)を大切にし、ユーザー自身に想像してもらう楽しさを残すことも、彼らが大切にしている「にゃんこっぽさ」の秘訣です。
にゃんこは「何と」戦っているのか?

セッションの締めくくりとして、中出氏から「結局、にゃんこは何と戦っているんでしょうか?」という問いが投げかけられました。佐野氏の答えは、ポノスの哲学を象徴するものでした。
佐野氏:
「ひねくれた答えになってしまうかもしれませんが、社内で『何か他のタイトルや世界と戦っている』という感覚はほとんどありません。
僕たちが常に戦っている相手がいるとすれば、それは『自分たち』です。自分たちの届けたい笑いやエンタメが、100%の形で表現できているか。にゃんこの面白さを損なわずに、世界中の人たちに届けられているか。向き合っているのは常にそこだけですね。」
競合を意識するのではなく、自分たちの「オモロイ」を信じ、研ぎ澄まし続けること。『にゃんこ大戦争』が14年間愛され、これからも進化し続ける理由は、この飽くなき「自分たちとの戦い」にあるのかもしれません。
『にゃんこ大戦争』について

『ポノス』について
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[取材協力]:BitSummit Punch!
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