スマートフォン向けに絶賛リリース中のアドベンチャーゲーム『まつろぱれっと』が家庭用ゲーム機とPC版にて発売される。そんな『まつろぱれっと』について原作者のふりふら氏に直接質問をさせていただける機会を得ることができた。まつろぱれっとの制作秘話や、スマートフォン版との違いなど興味深い内容をお聞きすることができたので、ぜひチェックしてみて欲しい。
まつろぱれっと原作者「ふりふら」さんについて
──読者のみなさんに簡単に自己紹介をお願いいたします
ふりふら氏:小さな川沿いの森でひとり細々とゲームを作っています。
このゲームの他に、太陽の光で灰になる女の子を太陽が守るディフェンスゲーム「テラセネ」や「バベルンルン」、「森クマ脱出」など手軽に遊べるゲームを出してきました。
今はスマホとPC向けにそれぞれ新作を作っており、それらと並行して移植作業も進めてまいりました。
『まつろぱれっと』について
──本作では画家と絵画を中心としたストーリーをベースに物語が展開されていますが、画家と絵画をテーマに選んだ理由を教えて下さい
ふりふら氏:小さい頃から絵を見ることが好きで、展覧会によく足を運んでいました。(閉館間際に行くと混雑を避けて一人で見て回れるのでおすすめです。)
その絵画がどうして描かれたのか、この表情は何を意味していたのかみたいのを思い浮かべるのが好きだったところから、絵画との対話をテーマにした物語を1度は作って見たいという気持ちがずっとありました。
漫画や小説にしてみようと試みたこともあったのですが、対話の部分を上手く表現することができませんでした。 ゲームが一人でもある程度作れるようになってきたところで、プレイヤーを画家にして絵画との対話(戦闘)形式にしたゲームならいけるのではと思ったのが発端だったと思います。
──独特の世界観の作品ですが、影響を受けた作品やモチーフはあるのでしょうか?
ふりふら氏:テレビ東京で放映していた「美の巨人たち」という番組が好きでした。
美術品を小劇を交えながら紹介する番組で、ナレーションの方のミステリアスな語り口も印象に残っており、ストーリーをミステリー仕立てにする上で影響を受けていると思います。
──所謂死にゲーともいえるトライ&エラーのリプレイ性の高さが特徴であり魅力だと思いますが、このようなゲーム性を選んだ理由はありますか?
ふりふら氏:ホラー寄りのアドベンチャーゲームやサウンドノベルゲームが好きなのですが、道中に出てくるパズルや謎解きが苦手で途中で投げ出してしまうことが多かったです。
なので自分が作る時は、ロジカルな謎解きは封印して、不正解を楽しみながら正解に辿りつけるようなゲーム性にしようと思いました。
──「まつろぱれっと」というタイトルの様に主人公の画家は様々な”末路”を辿ります。中にはユニークなゲームオーバーもありますが、ゲームオーバーのパターンはどのように決めていたのでしょうか?
ふりふら氏:絵画のモチーフやストーリー展開を踏まえつつ、ゾッとするようなものからクスッとできるようなものまで色々考えて、緩急を意識しながら散りばめました。
また一人旅が好きなので末路を都道府県の個数分作ることを目標にしましたが、最後の方はもうこじつけで首を捻りながら捻出していました。
『まつろぱれっと』の移植について
──今回家庭用ゲーム機向けに移植することになった経緯を教えてください
ふりふら氏:岐阜で毎年開催されている「ぜんため(全国エンタメまつり)」に出展していた時に、ケムコさんにお声がけいただいたのがきっかけになります。スマートフォンアプリは年々OSのアップデートに伴う対応要件が厳しく、一人でいつまで保守できるか不安もあったので、できるなら他ハードへ移植したいと考えていた折でした。
またパソコン(Steam)版は過去にも一度挑戦していたのですが、横画面やコントローラーへの対応が不十分でした。そういった経緯もあり、家庭用ゲーム機/アドベンチャー系統のゲームを多く手掛けられているケムコさんの力をお借りすることになりました。
──移植にあたりメーカーの方など沢山の関係者の方と関わることになったと思いますが、原作者としてどのように関わりながら移植を進めたのでしょうか?
ふりふら氏:移植の方針を決めてからは、横画面のおおまかなレイアウト変更を自分が対応し、コントローラー制御など新規に必要になった処理をケムコさんにお任せしました。
またスマートフォン版では見逃していた(見て見ぬふりをしていた)バグも多数あったので修正対応をしていました。
──移植版に新たに追加された要素など、原作のスマートフォン版との大きな違いがあれば教えてください
ふりふら氏:本編とは別に、短編を1つ用意しました。展示室(OptionRoom)を探してみていただければと思います。BGMを使用させていただいてる魔王魂様に短編用の新曲も作っていただけたので、ぜひぜひ。
また移植作業が長引いた間に絵画がフランス語とドイツ語も習得してくれたので、より多くの方に遊んでいただければ幸いです。
──家庭用ゲーム機ではスマートフォンと違いコントローラーでの操作がメインになると思います。操作方法で工夫されたところはありますか?
ふりふら氏:スマートフォン版は片手持ち操作に特化しており、絵を描くときもドラッグ操作(ドラッグアンドドロップ)で行う仕様でした。コントローラー操作ではドラッグ操作に馴染みがあまり無さそうだったのでケムコさんと他の操作方法も検討したのですが、絵を描く時に緊張感があってほしいという自分の希望もあり、ジョイスティックとボタンでのドラッグ操作に対応していただきました。
マウス/キーボードはもちろんのこと、Switchのタッチ/タッチペン操作やリモコンを片手に持っての操作も可能なので、お好みの方法でプレイしていただければ幸いです。
それから探索時の移動がコントローラーのL/Rキーで手軽にできるようにしていただいたので、探索が捗るかと思います。
メッセージ送りのボタンを長押しするとメッセージを早送りすることもできるので、「死にざま」のコンプリートもしやすくなっています。
──ゲーム内ではモチーフとなるアイテムを探すために部屋の探索が重要になります。今回スマートフォンから移植されることで、テレビやモニターの横画面になりますが、部屋の見え方や探索のしやすさで工夫した点がありましたら教えて下さい
ふりふら氏:スマートフォン版の時は縦画面で見える範囲も限定されていたため、見えない部分はかなり手抜きの状態になっていました。そのため単純に横画面にすると背景の切れ端部分が見えてしまったり、ストーリーの進行的に見えるといけない箇所や調べられたら困る箇所が調べれられて誤作動するような不具合がとても多かったです。
画面の両端は「謎のそれっぽい黒いモヤ」で覆って調べられないようにした上で、隠せない領域は光源の強さやカメラの画角を調整したり、背景絵を描き直したりして違和感を軽減するなど、四苦八苦しつつどうにか対応し切れたかと思います。
──原作ではゲームオーバーのパターンの豊富さや演出が魅力の一つだと思います。移植版でもこちらの点はこだわって作られているのでしょうか?
ふりふら氏:原作同様に47種類の死にざまになることができます。一部の演出は横画面化に伴い、演出を変更したり最適化を行いました。
──ゲームオーバーのパターンをすべて集めるには工夫が必要な場面もあり、攻略にはヒントが重要になると思います。移植版でもヒントをもとに進めることは可能ですか?
ふりふら氏:死にざまギャラリーでは各ゲームオーバーに至るためのヒントが見られるようになっています。一部分かりにくいものもありますが、色々試していただければと思います。上述したメッセージの早送りもあるので繰り返しプレイもしやすくなっています。
──死にざまギャラリーをすべて収集した際の「ひみつ」は移植版でも変わらず見ることはできますか?
ふりふら氏:スマートフォン版と同様に、死にざまコンプリート後に見ることができます。移植に伴い内容も少しだけ変わっているので、またコンプリートを目指していただければ幸いです。
読者の方に向けて一言
──最後に読者の方へ向けて一言お願いいたします
ふりふら氏:当初の予定を大幅に超過して1年がかりになってしまいましたが、どうにか縦画面から横画面に無事引っ越すことができたので、ぜひまた遊んでみていただけると嬉しいです。
──ありがとうございました!
まつろぱれっとの概要
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(編集・執筆/きりゅう)