2023-08-16

チャイナジョイレポート!中国最大のゲームの「祭典」とは

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7月27日から31日まで、中国の上海にて、中国最大のゲームイベントであるチャイナジョイ(China Digital Entertainment Expo and Conference)が開催された。本イベントはコロナ流行の影響から中止やオフライン開催が続き、平常規模でオフライン開催されるのは2019年以来のこと、かつ今回が20回目という節目の開催だということもあり、国内外からの期待も高かった。

一方で今年2023年は、世界最大のゲームショウの一つであるE3(アメリカ・ロサンゼルス)の開催中止が決定されるなど、コロナによる半強制的なオンラインの時代を経て、オフラインで行われる展示型のゲームイベントの存在意義そのものが問われつつある時代でもある。そんな中で開催されたアジア最大級のゲームイベントでは一体何が起こっていたのか、現地に赴いたライターからレポートをお届けする。

チャイナジョイとは

チャイナジョイとは毎年中国の上海新国際博覧中心で開催されている中国最大のデジタルゲームの展示会……という風にしばしば説明されるが、実際にはその名称が指している通り、単なるゲーム展示会というだけではなく、より広い意味でのエンタメコンテンツ全般を扱う巨大なイベントとでも言うべきものだ。
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今年は一般向けのBtoCエリアだけで200社を超える企業が集まり、BtoBエリアではさらに300社近い企業が参加。展示ブースの総面積は約1万2千㎡で、これは東京ドーム2.5個分の広さにもなる。節目となる20回目の開催だった今回は、これまでで最大ののべ30万人を超える来場者があったという。

コロナ以前の2019年に行われたTGS(東京ゲームショウ)の総来場者数が26万人余りだったというから、その規模の大きさが知れるだろう。
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会場の熱気はすさまじく、どこを見渡してもとにかく人、人、人!春先の上野公園のようなレベルで人がごった返しており、ブースによっては20分、30分待たなければ入れないような場所もざらだ。

テンセントやネットイース、ビリビリといった日本でもおなじみの巨大パブリッシャーを始めとした様々な企業がブースを展開しているが、大がかりなブースを用意しているところであっても、中国国内でのみ展開しているタイトル・企業も多い。というよりむしろブースの大半はそうした中国国内のローカルな企業であり、日本人の筆者にとっては初めて目にするようなゲームタイトルの方が圧倒的に多かった。
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なんでもありのお祭り騒ぎ

会場の雰囲気を一言でまとめるなら、「なんでもありのお祭り」というのが筆者の印象だ。というのも、各社とにかく来場者を楽しませようとあの手この手と様々な手段を尽くしているのだ。

プロチームなどを招いて行われるゲームのエキシビションマッチや、ゲームの世界観を再現したセットや、コスプレイヤーさんたちを配置した撮影スポットといったいかにも順当なゲームイベントらしいところから、アイドルのミニライブや大がかりなセットを用いた舞台演劇など様々なパフォーマンスが行われるステージや、なぜかロボットアームがお給仕してくれるドリンクサービス、一見すると……というよりどう考えてもゲームとは全く関係のなさそうな車や飛行機の展示など、とにかく楽しそうなものならなんだってOK、という雰囲気なのだ。
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またコスプレイヤーさんたちの配置についても面白い。ブース側で招待しているレイヤーさんたちというのは相当気合の入った方々であり、例えば有名どころでは日本でも多くのプレイヤーを抱えているmiHoYoの崩壊スターレイルの展示ブースでは、ゲームに登場する星穹列車の展示と高クオリティなレイヤーさんという組み合わせで、ゲーム内の世界観を豪華に再現しているようなところもあった。
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それがチャイナジョイの見所の一つとなっているのだが、中にはどうもブースの展示自体とはあまり脈絡なく配置されているようなところも多いらしい。

前述した車の展示ブースなどはモーターショーのコンパニオンさながらに日本でもおなじみのアニメキャラクターの格好をしたレイヤーさんが登場していたりもして、なんだか笑ってしまった。ともかく、来場者を楽しませることさえできれば、細かいところはオッケー!という様子で、単にゲームのイベントとは言いきれない様々な要素が複合されているのがこのチャイナジョイと言うイベントなのだ。
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もちろん会場の中には、これからリリースされるタイトルを体験プレイできるブースや、今年度リリースされたゲームの中で革新的な要素を持っていた新作タイトルを紹介するための展示など、実機でゲームを遊ぶことを目的にしたものも数多く存在していた。

筆者が直接確認できた範囲だけでも、PS5の新作タイトルを並べたSIE(ソニー・インタラクティブ・エンタテイメント)や体験版でかわいらしさとバイオレンス味の融合が話題を呼んでいたPartyAnimalsのブースなどには、かなりの行列ができていた。
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だが、会場全体の割合でいえばそうしたプレイを目的にしたブースというのは少数派であって、前述したようなちょっとしたミニゲームなどを行う体験型のイベントや、特設ステージ上で行われるショーなど、直接はゲームのプレイに関わらないような催しの方がずっと多いのだ。
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実機での体験が可能なものの中で注目を集めていたのは、PicoやSnapDragonなどVR系のコンテンツを提供していた企業のブースで、特に後者は映像や音声だけでなく、座ったシートの揺れなども含め身体全体での体感を得る4D映画のような展示を行ってブース周りに長蛇の列を作っていた。

そのほかにも、現実の行動とゲームがリンクして動く体感型ゲームなど、プレイしている本人だけでなく、周囲の来場者もその様子を見て楽しめるような展示も少なくなかった。また、大型のブースでは一部を来場者のための休憩スポットとして提供しているようなところが多かったことも面白いポイントだった。
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日本のエンタメコンテンツも大きな存在感

展示ブースの多くは中国の国内企業ではあるが、中国国外企業のブースも少なくはない。中でも目立っていたのが、強力なIPを抱えたブースだ。日本からも前述したSIEやDeNAなどといった企業が出展していたが、とりわけ多くの人々の足を止めさせていたのがバンダイナムコのブースだったろう。

お台場さながら……とまではさすがに言えないものの、会場を見下ろす形で設置された巨大なガンダム像の前では、多くの人が足を止めて嬉しそうに写真撮影を行っていた。かくいう筆者もその一人で、異国の地でエアリアルを見上げたときの頼もしさというのはちょっと筆舌に尽くしがたい。
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人気のキャラクターたちを前面に押し出したブース展開は、もちろんガンダムだけではない。ワンピースやナルトといった定番の有名キャラたちはもちろん、今年アニメ映画が中国で大ヒットしたスラムダンク、すずめの戸締りといった作品の展示ブースもあった。

またブース自体は中国の国内企業ではあったものの、ステージ上で日本語のボーカロイド曲が流れるような場面などもあり、日本のエンタメコンテンツも強い存在感を発揮していた。
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実は今回のチャイナジョイでは、同じ会場の中でデジタルゲームだけではなく、ホビーやフィギュアの展示イベントも同時に行われており、会場の各所で精巧なフィギュアの展示や、グッズの販売なども行われていた。

そしてそうした場所で強いのが、やはりというべきか日本のアニメ・漫画コンテンツのキャラクターなのだ。カドカワ(角川天聞)などでは、中国語訳された日本のコミックを購入していく来場者なども多かったようだ。
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知ってもらうイベントではなく、楽しませるためのイベント

これらは、チャイナジョイというものが新作ゲームお披露目や体験などが行える展示会というより、一種のファンイベント、企業とユーザーが一体となって作り上げるお祭りのような趣きが強いイベントであることをよく表している。そもそも、オンラインのプラットフォームが発達した現代では、オフラインで開催される見本市というものはそれだけでは存在感を発揮できない。

新作のタイトルなどであれば、オープンβテストを行ったり体験版を配布したりするほうが、より手軽かつ安価に、そしてより多くのユーザーに対してアプローチをとることが可能だからだ。そうした背景は、例えば昨年の行われた東京ゲームショウで任天堂・SIE・MSといった家庭用ゲーム機の3大メーカーが出典を見送ったといったところにも表れている。ニンテンドーDirectなどは配信の度にTwitter(X)のトレンドに上がるように、こうしたメーカーでは、注力の場をオンライン上での広報活動へと移行している。
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チャイナジョイの来場者の多くは当然のこととしてゲーム好きの人たちだろうが、彼らはゲームをするために来ているわけではなく、とにかくイベントを楽しむために来ているのだ。これは筆者のものすごーく個人的な感触ではあるが、TGSなどよりもむしろ、子供のころに参加したポケモンフェスタのようなファンイベントに近いものを感じた。

要するにこれは、ゲームの発信側(企業)が自社タイトルを遊んでくれているファンを楽しませるためのイベントなのだ。知ってもらうためのイベントではなく、親しんでもらうためのイベントだと言い換えてもいい。
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その意味で、チャイナジョイというのはリアル開催ということの強みを最大限に生かすべく、いまその場所でしか得られない体験を提供するイベントになっており、まさにお祭りと呼ぶにふさわしい。出展されているブースは本質的には縁日の屋台のようなもので、だから直接にはゲームと関係のない企業も、来場者を楽しませる催しさえ準備できればブースを出展できる。

前述したような車のメーカーや電子決済などのプラットフォーム、さらには銀行などなど、その顔ぶれも実に多様だが、面白いところでは女性誌のELLEが化粧品メーカーとのコラボブースを出したりもしていて、ここまでくると(いや他も大概なのだが)もうゲームとは全く関係がない。

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しかしこのようなイベントだからこそ、これからの時代にも存在感を発揮し続けることができるということなのかもしれない。オンラインでの配信が容易なデジタルゲーム領域において、それでもなおリアルイベントを行うことの強みは、いま・そこだけで得られる体験を生み出せることにある。

この点だけは、いつでも・繰り返し見直せることが最大の強みである配信のような媒体にはない特徴だからだ。こののち、来週にはドイツで3大ゲームショウと呼ばれるGamescomが、日本では9月にTGSが開催されるが、こうしたイベントもコロナによって強制的にオンラインの強みを見せつけられてしまったいま、以前とは異なる役割を果たさなければならないのかもしれない。

また、本年は開催が見送られたE3も、来年24年には再度復活することが予告されている。オフラインのゲームイベントが今後どのように変わって行くのか、いちゲームファンとして楽しみに待っていたい。
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