「AIをもっと身近に、もっと楽しく」を体現した『AIフェスティバル 2025 Powered by THIRDWAVE』にゲームエイトライターが現地取材してきた。落合陽一氏が語ったAI共生の世界観、過去最大の応募を集めた「AIアートグランプリ」の熱狂、そしてNPU搭載の「Copilot+ PC」やDGX Sparkなど、ローカルAI処理を加速する最新ハードウェアの動向まで、AIカルチャーの最前線を紹介しているので、ぜひ最後までチェックしてみてほしい。
『AIフェスティバル 2025 Powered by THIRDWAVE』とは

『AIフェスティバル 2025 Powered by THIRDWAVE』とは、「AIをもっと身近に、もっと楽しく!」をテーマにAIカルチャーの「今」と「未来」を体感できる祭典だ。今回の会場は、ベルサール秋葉原の2フロア(2階&地下1階)に拡大され、これまでの「見る」中心のイベントから、自ら参加する「体験型」に大幅リニューアルされて開催された。来場者が最新技術を文字通り「体感」できるように設計されており、会場全体がまるで「AIカルチャーの学園祭」のような熱気に包まれていた。
そんな最新技術を身近に感じられるイベントにゲームエイトライターが参加してきたので、会場の様子を中心にみなさんにお届けしていくぞ!
イベントステージの熱狂:AIが変えるアートと哲学
特別講演:メディアアーティスト 落合陽一氏

AI業界をリードするキーパーソンによる講演会が開催された。メディアアーティストの落合陽一氏が登壇し、最先端のAI技術やクリエイティブに関する知見が得られる貴重な機会となっていた。

昨年のテーマ「計算機自然(デジタルネイチャー)神社」を経て、落合氏が今年掲げたテーマは「そしてパビリオンを建てる」。大阪・関西万博で実現させた集大成とも言えるパビリオンを通して、AIが進化し続ける世界における人類の存在意義を熱く語った。
講演では、「デジタルネイチャー」という概念を深掘り。人類が作った人工物の総質量が、全生物のバイオマスを上回ったという事実に基づき、「もはや生き物よりコンピューターの方が重い」時代に突入したことを指摘した。そんな世界では、人間は「作る」ことから「選ぶ」ことに役割がシフトする。AIが作った曲をDJが「選ぶ」こと「旗を振って現場を盛り上げる」ことこそが、AI時代のクリエイティブワークだというメッセージには深く考えさせられた。
「第四回AIアートグランプリ」の激戦

AIの進化に伴い、新しいレギュレーションで実施される「第四回AIアートグランプリ」の決勝戦および表彰式が会場で行われた。最先端のAIアート作品が一堂に会し、日本一のAIアーティストが決定するイベントとなっていた。
2023年3月の開始以来、4回目を迎える今回は動画短編、動画長編、静止画、技術革新など計6部門を設け、全国から231作品が寄せられたという。前回(139作品)から約100作品も増加し、AIアートシーンの熱狂的な広がりを示す結果となったのは、AIの進化の速さとともにクリエイター側の情熱も爆発しているのが見て取れたぞ。
最終審査会で選ばれた優秀作品が表彰され、グランプリ受賞者には賞金15万円と副賞としてサードウェーブ提供の「GALLERIA デスクトップPC」が贈呈された。
特に、グランプリに輝いたmajikitchen(マジキッチン)のリアルタイム発話合成技術「Mouth2Mouth」は、「この技術が世界中に広がるかもしれない」という未来の可能性を評価された形だ。「AIをどう捉え、どう使うか」という哲学が問われるグランプリになっており、AIアートが次のフェーズに進んでいることを肌で感じられた瞬間だった。
企業ブースの充実!ローカルAIの最前線
会場の企業ブースでは、AI処理に特化した最新ハードウェアの展示が目白押しだった。キーワードは「ローカルAI」で機密保持や高速処理を実現するために、クラウドではなく手元のPCでAIを動かすというトレンドが各社から強力にプッシュされていた。
サードウェーブ(THIRDWAVE)

主催である株式会社サードウェーブは、ローカル環境でAIを動かすための最先端ハードウェアを展示し、来場者の注目を集めた。
AIの進化に伴い、機密情報を社内に留めたままAIを活用したい企業やローカル環境でAI開発を始めたい個人に向けた、ハイスペックなワークステーションとAI特化型ミニスーパーコンピューター「NVIDIA DGX Spark」の2モデルが展示されていた。特に「DGX Spark」は、ハイエンドワークステーションを上回る128GBのメモリを搭載しながら、競合製品よりも圧倒的に安価に提供できるというコスパで、ローカルAI開発の敷居を大きく下げてくれるだろう。


さらに、Web上でカスタマイズを行うシミュレーションを展示!AIを動かすための高性能PCをユーザーの好みに合わせてパーソナライズできるサービスに驚きを隠せなかった。AIの普及とより高度で安全なAI活用環境の実現を、ハードウェアという「武器」で後押ししてくれるサードウェーブの熱意を強く感じたぞ。
NVIDIA(エヌディビア)

NVIDIAとBlackmagic Designのコラボレーションブースでは、プロフェッショナルな映像制作現場で広く使用されている動画編集ソフトウェア「DaVinci Resolve(ダビンチ・リゾルブ)」のデモンストレーションを通じて、NVIDIA GPUがいかにAI機能を加速させているか体験できた。

DaVinci ResolveのAI機能、特に「トラッキング(被写体追尾)」のデモでは、複雑な動きをする被写体に対し、AIが瞬時に追従する様子に驚愕!NVIDIA GPUの高速なAI処理能力によって実現しているとのことだ。高解像度の動画データ処理だけでなく、AIを活用した高度な編集機能のパフォーマンスが劇的に向上し、プロの要求に応える高速かつ高品質な制作環境が実現できることを確認できた。NVIDIAは、プロのクリエイティブを支える縁の下の力持ちと言えるだろう。
Intel(インテル)

インテル(Intel)のブースの核となったのは、「人流検知ソリューション」に関するローカルLLM(大規模言語モデル)のデモンストレーションだ。会場では、ソリューションの仕組み、LiDARの原理、活用事例といった機密性の高い説明資料をLLMにインプットし、ローカル環境に構築されたAIに対して質問を投げかけると、LLMが学習した資料に基づいて即座に回答を出力する様子が実演されていた
近年、AI活用を進めたい企業の間で、ChatGPTなどの外部クラウドサービスに機密情報や社内データベースをアップロードすることに抵抗を持つケースが増加している中、「ローカルでのLLM活用」の需要に注目が集まっている。顧客自身の資料やデータベースをAIに学習させ、インターネットに接続することなく、社内だけでAIによる情報検索や分析を可能にするアプローチが実現できる。


このローカルLLMのデモは、企業の機密性を担保しつつ、最先端のAI技術をビジネスに組み込む具体的な方法を示すものとして、来場者からも高い関心を集めていた。
Microsoft(マイクロソフト)

マイクロソフトのブースでは、AI処理に特化した専用チップを搭載した次世代PC「Copilot+ PC(コパイロットプラスピーシー)」が展示されていた。AI機能をクラウド接続なしの「ローカル(オフライン)」環境で実現する新しいカテゴリーのPCであり、私たちの働き方やコミュニケーションのあり方を根本から変える可能性を秘めている。


▲絵を瞬時に描いてくれる機能にも驚かされた。簡単にラフ画を描いてコクリエーターに指示を出すだけていい簡単仕様だ。
機能がすべてオフライン(エッジ側)で実行されるので、セキュリティ面でも大きなメリットがある。クラウドに機密情報を送信する必要がなく、AIの利便性を享受しながらもデータのプライバシーをPC内部で守ることが可能だ。
デモンストレーションは、Copilot+ PCに搭載されたNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)が、AI処理をローカルで効率的に実行していることを示してくれている。NPUによる処理の高速化によって、動画生成やAIを活用した編集作業が従来のPCよりも格段にスムーズになり、クリエイターの想像力を途切れさせることなく具現化することが可能となる。
マイクロソフトのブースでは、AI時代においてPCが単なる作業ツールではなく、クリエイティブな「相棒」となる未来を提示してくれた。
AMD

AMDブースでは、ハイエンドなAIワークステーションと、一般ユーザー向けのゲーミングPCの2機種を展示し、AMDプロセッサーとGPUが実現するローカルAI推論の新たな可能性を確認できた。
特に注目されたのは、AI推論に最適化されたRadeon PRO W7900(32GB VRAM搭載)を2枚挿しするワークステーションモデルのコンセプトだ。これは、競合製品と比較してコストパフォーマンスに優れるGPUを複数枚搭載することで、圧倒的なAI性能を低コストで発揮するというものだ。

AMDは、ハイエンドな開発環境の低コスト化と一般ユーザーへのAI利用の普及の両面から、AI時代のハードウェア環境をリードしてくれることだろう。「安く、強く」というAMDのコンセプトは、AI開発の民主化を大きく後押ししてくれるに違いない。
JDLA

AIの社会実装と普及を推進するJDLA(日本ディープラーニング協会)がブースを出展し、AI時代のキャリア形成に不可欠な「G検定」や「E資格」といった資格制度の紹介を聞くことができた。

AI技術が企業の競争力に直結する現代において、JDLAが認定するこれらの資格は、AIを「理解し活用できる人材」と「自ら作り出せる人材」を明確にし、社会全体のAIリテラシーと技術水準を引き上げるための重要な指針となっている。ブースには、AI時代のスキルアップに強い関心を持つ来場者が熱心に情報収集する姿が見られ、AI人材への意識の高さを感じられたぞ。
様々な展示物も多数確認!

▲2階のフロアも大盛り上がりで、様々な展示物を確認できた。

▲第3回のAIアートグランプリ 絵画部門 GALLERIA賞に輝いた『希望の夜明け』のポストカードも確認!

『AIフェスティバル 2025』会場の「AIワークショップ」で特に注目を集めたのが、AIを搭載したラジコンカー(RCカー)を走らせる「AIでRCカーを走らせよう!」のコーナーだ。単なるラジコン操作ではなく、AI技術の最も基礎的かつ応用的な側面である「模倣学習」を楽しく体験できる企画だ。
このAI RCカーの学習の仕組みは、AI入門で習う手書き文字認識と構造が同じだという話に驚いた。人間が手動で走らせた時の「風景」と「操作数値」をセットで学習させることで、AIが人間の運転を模倣して自律走行を実現する。
AIが「何を見ているか」はブラックボックスでありながら、人間が教えたことを忠実に人間臭く再現するAIの驚異的な学習能力を体感できた。「AIが黄色い靴を好きになってしまう」というエピソードには思わず笑ってしまったが、AIが人間の「癖」や「好み」まで取り込んでしまうというAIとの共存の面白さを象徴していたぞ。

▲可愛らしいカエルちゃんの姿も!会場の至るところに、来場者の心をつかむ展示が散りばめられていた!
来年の開催にも期待大!
『AIフェスティバル 2025』は、AI技術者だけでなく、AIアートを楽しむクリエイターやAIに興味を持ち始めた初心者まで、すべての人々がAIを「楽しく」感じられる、進化し続けるAIカルチャーの最前線となるイベントとなっていた。
技術の最先端と、その技術を使って生まれるカルチャーの両方を体感できるこのフェスティバルは、AI時代の「文化祭」と呼ぶにふさわしい熱量と多様性を持っていた!来年以降もこの熱狂が続くことを心から期待しているぞ!
『AIフェスティバル 2025 Powered by THIRDWAVE』の概要
© THIRDWAVE CORP.
[取材協力]:株式会社サードウェーブ
(編集・執筆/ゲーム山本)







