2025-09-09

【インタビュー】AIでゲームはもっと面白くなる!ドリコムが開発したAIプラットフォーム『ai and』の全貌

今やゲーム開発の現場でも、AIは無視できない存在となりつつあります。そんなAI技術を積極的に活用し、自社で開発したAIプラットフォーム「ai and」をゲーム開発に導入している株式会社ドリコム。AI活用における業界の課題に挑み、新たな可能性を切り拓こうとする彼らの取り組みは、多くのクリエイターから注目を集めている。今回は、その「ai and」を牽引する担当者の方に、直接お話を聞くことができたので、その熱意と挑戦の物語に迫っていく。

自己紹介と「ai and」のサービス概要

━━自己紹介とドリコムのAIプラットフォーム「ai and」のサービス概要について教えていただけますか。

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國安雄氏(以下、國安氏):株式会社ドリコムでAI部の部長を担当しています、國安雄と申します。私は、元々通信事業者でエンジニアをしており、その後海外での新規事業やAIスタートアップにてAI戦略、実行支援、新規事業開発のコンサルを経て、ドリコムに入社しました。去年からAI部を立ち上げ、ゲーム開発現場の課題を解決するAI活用を推進しています。

今回お話しする「ai and」は、社内での活用を経て外部提供を開始した「コンパウンドSaaS」です。強みは、制作チーム内で利用する翻訳・カスタマーサポートなどの個々のプロダクトが、裏でチーム内共通のデータ基盤と繋がっている点です。

AIが出したものを人間が修正すると、その修正内容が追加学習され、どんどん賢くなっていく「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の仕組みを提供しています。

━━ありがとうございます!よろしくお願いします!

AIがもたらすゲームクリエイターの変化

━━AIが翻訳や分析などのタスクを代替することで、ゲームクリエイターに求められるスキルや能力は、今後どのように変化していくとお考えですか。

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國安氏:ゲーム開発における知的労働の約8割はAIで代替可能になると言われています。逆に、残った2割こそが、人間がやるべき本質的な「クリエイティビティ」です。いかに作業をAIに任せて、このクリエイティビティを極めるか、そして細部にどれだけ力を入れられるかが重要になります。

また、AIに的確な指示を出すための「マネジメント能力」、そして新しい技術を常に学び続ける「キャッチアップ力」も、今後より重要になるでしょう。この3つの要素が、AI時代を生き抜くクリエイターに求められるものだと考えています。

━━AIをゲーム開発に導入する上で、業界全体が向き合うべき課題はありますか。

國安氏:まず、AI活用以前に「業務の見える化」ができていない現場がまだ多いことが課題です。AIを導入する前に、どの作業にAIが活用できるかを見極めることが非常に大切です。単にAIを導入しましょうではなく、本当に必要とされる活用を見出すことは必要不可欠です。

次に、ユーザーにAIが作ったものだとネガティブに受け取られないよう、人の生み出す品質を確保することが重要です。「AIが作ったからこのゲームはやりたくない」といったハレーションが起こらないよう、AIを品質向上に活かすべきです。どれだけユーザーに価値を提供できるかの視点は、どれだけAIを活用できるようになっても欠かせません。

そして、AIの進化は非常に速いため、常に最新の情報をキャッチアップし、自社の業務にどう活かせるかを見極める必要があります。この「危機感」と「情報収集」のバランスが取れていない企業も少なくありません。

最後に、経営層がAIの可能性を理解し、トップダウンで活用を推進していく姿勢が不可欠です。

━━なるほど!AI活用の前提として、まず「現場の見える化」が重要だということですね。お話を聞いていると、どうしてもAIの進化のスピードに追いつくのが大変そうだなと思ってしまうのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

國安氏:おっしゃる通りAIの進化は非常に速いので、社内でも常にキャッチアップしています。各社が新しいAIツールを出すたびに、私たちのチームで常にアップデートして活用しています。

新しい機能や用語が出てくると、それを自動的に開発フローに組み込むところまで作り込んでいるので、開発の速さに関してはそこそこ自信を持っています。

━━万全な体制が整えられているんですね!

ドリコムのAI活用と現場への浸透

━━ドリコムでは、どのようにAI活用を現場に浸透させているのでしょうか。

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國安氏:社内には、ゲーム開発経験者で構成された「社内コンサルチーム」がいます。彼らが現場のニーズを的確に汲み取り、AI活用のユースケースを提案しています。

施策は「ボトムアップ」と「トップダウン」の二軸で進めています。ボトムアップでは、社員全員がAIに触れる機会を増やし、年度内に80%の社員が毎日業務活用でAIに触れる状態を目指しています。これは、AIの価値を実感してもらい、手放せなくなる状態を作るためです。

トップダウンでは、私達が率先して「業務の見える化」を行い、AIで効率化できる部分を特定して導入を進めています。

━━なるほど、社員が自らAIに触れたくなるような工夫をされているのですね!AI活用で直面した失敗談やそこから得られた学びがあれば教えてください。

國安氏:当初は、画像生成AIなど、いくつかのプロダクトを開発しましたが、品質がエンタープライズレベルに達していない、レギュレーションに合わないといった理由でクローズしました。

そこから学んだのは、「プロダクトありき」で導入しても意味がないということです。チャットGPTをそのまま導入するだけでは使ってもらえません。現場のプロセスに合わせたUI/UXを作り込み、そこからデータが蓄積される仕組みを作ることが重要だと痛感しました。

よく「紙に絵を描いていた人がPhotoshop活用に移る」ような話に例えますが、最初こそ抵抗があっても便利さが分かれば皆使い始める世界を目指しています。チーム内での例え話で「チャリンコで頑張って走っている人に、フェラーリはいかがでしょうか。と提案するのが私達。『チャリンコで頑張る!』と言う人に無理矢理使ってもらうのではなく、便利だから使ってもらうように推進しよう」というものがあり、意識しています。

しかし、いつの間にかみんなフェラーリに乗っている状態になっていくのが理想だと考えています。

━━すごく分かりやすい例えですね!私も使わせてもらいます(笑)

國安氏:どうぞどうぞ(笑)

ユーザーの声を活かす「ai and インサイト」

━━「ai and インサイト」は、ユーザーの声を分析してアクションプランまで提案するとのことですが、具体的な成功事例はありますか。

國安氏:はい、一番大きな事例として、昨年10月にリリースしたとあるゲームのクローズドβテストが挙げられます。このCBTで膨大な量のアンケートが集まり、どう分析すればいいかという課題が持ち上がった時に、この「インサイト」の企画が生まれました。

従来のアンケート分析は、運営者のバイアスがかかりがちで、例えば「n=1」の意見に引きずられたり、好意的な情報ばかり取得したりすることがありました。しかし、AIを活用することで、バイアスのかかっていないユーザーの声を適正に拾うことができたのです。

ユーザーの声から、どんな具体的な要素がゲームに必要とされているかを細分化し、アクションプランとして落とし込む。この一連のプロセスで、ゲーム改善に活かしたのが大きな成功事例です。ユーザーの声を正確に分析し、アクションに繋げられることが「インサイト」の最大の強みだと考えています。

━━純粋なユーザーの声を的確に拾えることが「インサイト」の最大の強みなんですね。膨大なアンケートを具体的なアクションプランに落とし込めるのは、ゲーム改善にとって非常に強力な武器だと感じました!

「ai and」の今後の展望

━━最後に「ai and」の今後の展望についてお聞かせください。

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國安氏:現在は6つのプロダクトがありますが、今後はさらに連携を強化し、ゲーム開発の全プロセスを網羅できるプラットフォームを目指しています。また、ゲーム開発だけではなく、エンターテインメント領域全般における、まだ踏み込めていない領域にも挑戦していく予定です。

最終的には、ドリコムが「ai and」を通じて、ゲーム開発における「デファクトスタンダード(事実上の標準)」となり、AdobeやUnityのように、誰もが使うツールになることを目指しています!

━━お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!

國安氏:こちらこそありがとうございました!

「ai and」の概要

ソフト名:ai and(アイアンド) 公式サイト:https://www.aiand.info/

© Drecom Co.,Ltd. All rights Reserved.

[取材協力]:株式会社ドリコム

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