ゲーム開発の最前線「音の工房」。普段は足を踏み入れることができないような場所だが、中高生を対象としたイベント「カプコンのスタジオで学ぼう!ゲームサウンド制作体験と著作権2025」に特別招待してもらい取材を行うことに成功した。ゲームサウンド制作の裏側から、意外と身近な著作権の重要性まで徹底レポートしているので、業界に興味のある方は、ぜひ最後までチェックしてほしい。
「カプコンのスタジオで学ぼう!ゲームサウンド制作体験と著作権2025」とは

2025年7月、「カプコンのスタジオで学ぼう!ゲームサウンド制作体験と著作権2025」が大阪にあるカプコン本社で開催された。これは中高生を対象に、普段は立ち入ることのできないゲーム開発の聖地で、リアルなゲームサウンド(効果音)作りを体験し、その過程を通じて著作権の重要性を学ぶオフラインイベントだ。
イベント当日、カプコン本社のロビーには、期待に胸を膨らませた多くの参加者が集まっていた。ゲームの聖域とも言える本社ビルに足を踏み入れた瞬間から、参加者の皆さんの表情には、これからの体験へのワクワクと、かすかな緊張感が入り混じっていたのが印象的だった。

▲カプコン本社のロビーで受付と説明を受けている参加メンバー。ゲーム開発の最前線を走り続けている会社に足を踏み入れるのは贅沢の極みだろう。

▲さらに「モンスターハンター」のフィギュアやゲーム屋さんのようにパッケージ版の展示などもされており、ファンにとって夢のような空間に興奮を隠せなかった。
そんな貴重イベントをゲームエイトライターが取材してきたので、どのようなイベントだったのか、さっそくみなさんにお届けしていこう!
カプコン「フォーリーステージ」で学ぶゲームサウンド作り:日常の音がゲームを彩る!

まず筆者が取材した学生のみなさんが体験したのは、カプコンが誇る「フォーリーステージ」でのゲームサウンド作りだ。このスタジオは、他の音が一切混入しないよう地下に設置された専用空間で、様々な材質を使用している床や壁に埋め込まれている木で音の反響を自然なものに変えたりなど、ゲームサウンドを作り出すための環境や素材が整えられている。ゲーム内で流れるリアルな効果音を収録するための、まさに「音の工房」と言えるだろう。

ここでは、身近なものから発せられる何気ない音が、ゲームの中に入るとまるで魔法のようにかっこいいゲームサウンドになることを、参加者は体験を通じて学んだ。例えば、空手で使用する道着が擦れる音で布がはだける音を再現したり、特殊な音を発するオモチャを握り潰しながらモンスターの音を入れたりするなど、フォーリーステージに所属するアーティストの独特な発想と技術に触れることができた。参加者たちは、普段の生活音がいかにゲームの臨場感を生み出すかに驚き、真剣な表情で音作りに取り組んでいた。

各々が作った効果音は、カプコンのサウンドスタッフによってミックス・編集され、最後に実際のゲームムービーに合わせて鑑賞した。自分たちが作った「音」が、プロの映像と組み合わさって製品版のようなクオリティに仕上がった瞬間は、スタジオ全体から自然と大きな拍手と歓声が上がった。
自分たちの創造物が、ゲームという完成品の中で息づいているのを目の当たりにし、ゲーム開発の奥深さと、多くの人の情熱が結集していることを実感する体験となったようだ。
知的財産部の仕事と著作権について
ゲーム開発における知的財産権の重要性:作品を生み出し、守り、届けるプロセス

続いて知的財産部の説明会では、ゲーム開発の初期段階から「知的財産権」が極めて重要な役割を担うことが伝えられた。ゲームのロゴやキャラクターといった要素は世界中で商標登録され、その保護状況は常に確認される。「モンスターハンター」のように、単なるキャラクターだけでなく、緻密に作り込まれた生態系や生物そのものまでが知的財産として扱われるとのことだ。

ゲーム開発は、プロデューサーとディレクターが主導して行われ、知的財産部は試作版の制作段階から特許や著作権の確認を行う。販売納期が絶対になるので、知的財産部による早期チェックが徹底されているのだ。
また、知的財産部はゲームのグローバル展開におけるローカライズや「合理的配慮」(例:ポリコレ)に関しても深く関わり、多様な視点でのゲーム制作を支えていると説明された。

ゲーム会社を目指す方は、「作る人」「売る人」「支える人」の役割を具体的にイメージし、何よりも「たくさんゲームを遊ぶこと」が重要だと語られた。その言葉に、学生たちは真剣な表情で耳を傾け、未来へのメッセージを心に刻んでいるようだった。
著作権の基本と啓発活動

ゲームを構成するCG、ムービー、キャラクター、ストーリー、プログラム、インターフェース、BGM、パッケージデザインといった全ての要素は著作権で保護されている。著作権とは「作品を守るための権利」であり、作品を創作した人や会社に与えられ、著作権を持つ人だけが自由に使えるものだ。これは物理的な所有権とは異なり、表現された作品を保護する。
かつて深刻だったゲームの海賊版被害を背景に、民間企業が集まり著作権保護団体が設立された歴史がある。現在、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は約120社の会員企業と共に、著作権を「いかにポジティブに伝えるか」に注力している。

著作権は「絶対に使っちゃダメ」という権利ではない。許可(許諾)を得れば作品は利用可能だが、無断でのコピー利用は犯罪となる。また、学校の授業や個人で楽しむファンアートなどは問題ない場合が多く、ゲームごとの公式ガイドラインに沿っていればSNSへの投稿も推奨されている。最後に質問コーナーも用意されており、真剣な表情で疑問に思ったことをぶつける学生さんの姿も印象的だった。

こうした説明会の後、学生たちは真剣な表情で、自身の感想を熱心に感想シートに書き込んでいた。最後に感想の発表も行われ、イベントを通してしっかりと知的財産権と著作権に対して理解を深めている姿が印象的だった。
「ゲーム制作の現場から学ぶ著作権の重要性」体験イベント:深掘りインタビュー!
自己紹介
━━まずは読者の方に自己紹介をお願いしてもいいでしょうか。

▲左が山田氏、右が保田氏。
カプコン 保田氏:カプコン知的財産部商標著作権室室長の保田です。商標と著作権を担当しており、特にゲームやグッズの偽物対策に力を入れています。世界中で侵害対策を行い、IPを使ってゲームの認知度向上や商品化も支援しています。1997年入社以来、知的財産関連の業務に携わっています。
カプコン 山田氏:知的財産部著作権チーム長の山田です。2008年新卒入社後、宣伝広告部門を経て2022年に知的財産部に異動しました。畑違いの分野でしたが、実務と独学、部署内のプロのアドバイスで知識を習得し、現在は著作権業務全般に加え、自社の著作物が他社の権利を侵害していないかといった調査も行っています。

▲左が太田氏、右が室越氏。
ACCS 太田氏:コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)事務局広報担当の太田です。一般に向けて著作権に関する情報発信やセミナー開催、メディア対応、講師派遣などを、ACCS会員向けには最新情報提供を行っています。産業能率大学の客員研究員として学生や教職員向けの著作権講座も担当しています。
ACCS 室越氏:ACCSの室越です。私の業務は著作権の普及啓発で、今回のイベントの企画立案を担当しました。ACCSの著作権教育は、以前の「禁止事項中心」から「いかにポジティブに伝えるか」へと方針を転換しています。
今回のイベント開催の背景や目的
━━本イベント開催の背景と主な目的について詳しくお聞かせください。
ACCS 太田氏:著作権に関心の薄い方にも関心を持ってもらいたいという課題がありました。そこで、約120社の会員企業が持つコンテンツと著作権講座を組み合わせた体験型イベントを企画しました。昨年初回開催時にカプコンさんに協力いただき、ゲーム作りを通じて著作権の知識が身についたと中高生から良い反響を得られたため、今年も継続しています。
━━楽しく著作権を学べるということですね!サウンド制作体験や著作権教育で工夫していることを詳しく教えてください。
カプコン 保田氏:弊社のゲームサウンド専用スタジオ「フォーリーステージ」で効果音作りを体験できます。砂利やランドセルなど身近な道具を使って音を作り、それがゲーム映像とミックスされて製品版のようなクオリティになる感動を味わえます。
イベントでは、まず中高生がカプコンのスタジオに来て、ゲームサウンドの基本やフォーリーの由来を学びます。その後、スタジオの道具を使ってキャラクターの足音や鎧の音などを実際に制作。完成した音はゲーム映像とミックス編集され、自分たちで作った効果音付きのゲーム映像を鑑賞できます。昨年のイベントでは、自分たちの音が加わった映像の臨場感に、みなさん大いに喜んでくれました!
ACCS 太田氏:著作権講義では、ゲームと絡めて「著作権とは何か」「暮らしやゲームとどう関わるか」を伝えます。座学だけでなく、クイズや質疑応答、感想発表などインタラクティブな手法で、著作権を「自分事」として深く考えてもらう工夫をしています。
ACCS 室越氏:「よく分からない」「注意が必要」といった著作権へのネガティブな印象を変えるため、制作現場を先に体験してもらい、ゲームを作る人々の熱意を知った上で著作権の話をする順番に工夫しました。これにより、「著作権は好きな作品を守る大切なものだ」と体感してもらうことを目指しています。
━━私も体験してみたくなりました…!参加した方にここだけは覚えておいてほしいという内容はありますか。
ACCS 太田氏:「著作権は、作った人や会社がその作品を自由に使える権利である」という基本的な考え方です。学校教育で強調されがちな「コピー禁止」ではなく、この権利があるからこそ様々なコンテンツビジネスが成り立ち、私たちが楽しめる世界ができていることを伝えたいです。そして、「使いたい時には許諾を得れば使える」という点も重要です。
イベントポスターの裏話
━━今回のイベントポスターは可愛らしいデザインで、かなり力を入れて作られたのではないでしょうか。

カプコン 保田氏:昨年は『モンスターハンター ストーリーズ』の公式イラストでしたが、今年は『モンスターハンター ワイルズ』が渋いキービジュアルだったため、中高生向けに社内クリエイターが可愛らしいテイストで描き起こしました。このイベント専用の特別なイラストです!
━━そんなにこだわりを持って作られていたんですね!私もポスターを見て参加したくなったのですが、来年開催する場合は参加条件の幅を広げたりしないのでしょうか。
カプコン 保田氏:現在のターゲットは中高生ですが、好評であれば、将来的にはより幅広い世代の方にも体験していただけるよう、拡大を視野に入れています。
━━個人的に期待しております…!
来年の開催を期待している方々に向けて
━━読者へのメッセージ、来年以降の開催に期待する声へのお言葉をお願いします。
ACCS 太田氏:来年の企画はまだこれからですが、今後もACCSとして会員会社と組んで、楽しく著作権を学ぶイベントを開催していきます。
ACCS 室越氏:ゲームは好きだけど、著作権はちょっと…という方々にこそ来てほしいです。たとえ著作権に興味がなかったとしても、イベントを通して楽しみながら学べると思います。
カプコン 山田氏:著作権は学生の方にも身近な権利です。座学で学ぶのは難しいですが、好きなゲームを楽しみつつ著作権の勉強もできる「一石二鳥」のイベントですので、ぜひ興味がある方はご参加ください。
カプコン 保田氏:今年の反響が良ければ、来年も弊社は協力させていただきたいと考えています。このイベントは知的財産部にとっても良い経験であり、皆さんの反響次第で継続していきたいです。ゲーム制作を通して著作権の大切さを広く知っていただくため、今後もACCSさんと協力していきます。
━━ありがとうございました!
来年の開催にも期待大!ゲーム作りで避けて通れない「著作権」を楽しく学べるチャンスが待っている

本イベントは、参加した中高生にとって、ゲーム開発の奥深さと著作権の重要性を肌で感じられる貴重な機会だったはずだ。自分たちが作った音がゲームに命を吹き込み、その作品が著作権によって守られる大切さを実感する光景は、まさに一生の思い出に残る体験だっただろう。
来年の企画はまだこれからとのことだが、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)は今後も、様々な会員会社と協力し、楽しみながら著作権を学べるイベントを開催していくとのことだ。ゲームに興味がある方はもちろん、著作権にあまり関心がなかった方も、イベントを通してきっと新しい発見と学びを得られるはず。
ぜひ、このユニークな体験を通して、ゲームと著作権の奥深い世界に触れてみてはいかがだろうか?筆者は来年の開催が今からもう待ち遠しくてたまらないぞ!
「カプコンのスタジオで学ぼう!ゲームサウンド制作体験と著作権2025」の概要
©(一社)コンピュータソフトウェア著作権協会
©CAPCOM
[取材協力]:株式会社カプコン / 一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
本イベントは、(一社)授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)共通目的事業の助成を受けて実施しました。
(編集・執筆/ゲーム山本)







