2024年1月25日(木)に東京国際フォーラムで開催される『日本eスポーツアワード』。eスポーツ業界に多大な影響をもたらした方々を讃える年に1度の祭典で、eスポーツファンの方は必見のイベントとなっている。この記事では、そんな『日本eスポーツアワード』を主催する日本eスポーツ連合の理事、鈴木文雄氏にインタビューすることができた。eスポーツに対する熱意や想い、『日本eスポーツアワード』を開催した経緯をお聞きすることができたので、ぜひチェックしてみてほしい。
『日本eスポーツアワード』とは?
『日本eスポーツアワード』は、一般社団法人日本eスポーツ連合が主催の日本国内のeスポーツ界における功績と貢献を称える年に一度の祭典だ。2023年10月より投票が開始され、2024年1月25日に受賞者の表彰式が東京国際フォーラムで行われる。今回が記念すべき1回目ということで、どのようなアワードになるのか筆者もドキドキしながらその時を待っている。
そんな『日本eスポーツアワード』の主催者である一般社団法人日本eスポーツ連合の理事、鈴木文雄氏にインタビューすることに成功した。eスポーツへの想いやアワードに対する熱意、今後の展望について聞くことができたので、ぜひチェックしてみてほしい。
主催者・鈴木文雄氏のインタビュー
自己紹介
鈴木文雄氏(以下、鈴木氏):一般社団法人日本eスポーツ連合の理事と、株式会社 VARRELの代表取締役社長を務めている鈴木文雄と申します。2006年から2020年まで、株式会社 SANKOという広告代理店の代表を勤めていました。2008年に初めてeスポーツという存在を知りまして、アメリカや韓国のeスポーツのシーンを実際に見て、広告代理店の代表として日本に持ってきたいと考えが芽生えたのがeスポーツに関わり始めた理由ですね。
2011年にeスポーツの事業を立ち上げ、テストマーケティングとしてeスポーツ施設を作ってみようと思い、eスポーツスクエアを、千葉県のJR市川駅前に作りました。最初は全然お客さんも来ずに、二週間ぐらいは閑古鳥が鳴いていたんですが、徐々にeスポーツファンが集まり小規模のeスポーツ大会や、パブリックビューイングなどを開催するようになりました。その時ちょうどeスポーツスクエアのお客さんでリーグオブレジェンドをプレイするお客さんが増えてきました。世界を見渡すとプロeスポーツとして、非常に人気があったので、開発元のRIOTGAMESの米国本社に赴き、国内でのプロリーグ運営権を頂き、自分たちでスポンサーを集めて2014年にプロリーグ「LJL」を立ち上げました。
LJLを立ち上げると同時に、eスポーツスクエアを秋葉原に移転して、市川では実現できなかった観客席やみんなでeスポーツを楽しめる大型のスクリーン、5対5の専用席を作ったりして、当時の日本に無かった本格的なeスポーツの施設を作りました。
2016年に当時Logiocoolでマーケティング部長をされていた古澤さんに代表をお願いして、eスポーツ事業を子会社にする形で株式会社RIZeSTを立ち上げました。LJLやeスクに関わっていただいた方々と日本プロeスポーツ連盟(JPeF)を作って、2017年、ファミ通の浜村弘一さん(現JeSU理事)にお声がけ頂き、CESAの協力のもとJeSU(日本eスポーツ連合(JeSU))を2018年に立ち上げました。
日本eスポーツアワードを開催した経緯やエピソード
ーー今年が初のeスポーツアワードの開催になると思いますが、開催するまでの経緯を教えていただけますか。
鈴木氏:スポーツでも音楽でも映画でもその年に最も輝いた人や作品を称賛し、表彰するというアワードイベントがあると思うのですが、それがeスポーツにはなく「今後、eスポーツでも作っていく必要があるのでは?」という議論はJeSUの中でありました。なぜJeSUかと言えば、いちeスポーツ企業やチームというよりかは、公益的な団体が主催してやるのが望ましいのではと考えていたからです。2022年の東京ゲームショウで構想だけは発表しておりました。
ーーアワードを通して伝えたいことや、世の中に与える影響にはどのようなものがあるとお考えですか。
鈴木氏:アワード協賛の営業でお話をすると、Z世代向けのeスポーツイベントと見られがちですが、実際にはそうではありません。eスポーツ界に輝かしい功績を残した方々を称賛する、公益性、権威性が極めて高いイベントです。来場される方は、ファンはもちろん、eスポーツ業界に関わる人々すべて、つまり、eスポーツを支える、国内外の大手企業のオーナーや役員クラス、若者世代に圧倒的な影響力を持つeスポーツのスーパースターやチームの方々です。
我々がアワードを通じて伝えるべきは、eスポーツがなぜ生まれたのか、eスポーツプレイヤーがなぜ、この世界で人生を賭けて戦うのか、eスポーツがなぜ、社会に必要とされているのかであり、その探求と共有と記録が、このイベントの本質だと考えています。
このイベントに集まる方々は、eスポーツをスポーツ競技と捉え、eスポーツ選手を一人のアスリートとしてリスペクトし、強さだけでなく、一人一人の人間性や成長していく姿に惹かれています。そして、eスポーツをビジネスや社会貢献活動に活かしている方々です。そういった、eスポーツの社会的、経済的、文化的側面を社会、経済を動かすことのできるメディアや、経済界のオピニオンリーダー、eスポーツ、ゲームに夢中な子供の親世代に伝えていくことが日本eスポーツアワードの役割であり、価値であると考えています。
ーー今後2回、3回とアワードが続いていくと思うのですが、どのようにして認知度を拡大していこうと思っていますか。
鈴木氏:知ってもらうためには広告が必要でしょうし、今回のインタビューで取り上げていただく活動も必要ですけども、途中でやめないこと、継続していくことが一番だと思います。eスポーツに関わっている企業さんにお聞きしたら知らない方もいらしたので、ちゃんと記録をして多くの方々に知っていただくように発信し続けることですかね。
ーーアワードを開催するに至るまでに、印象に残ってるエピソードを教えていただけますか?
鈴木氏:一言で言うと不安しかなかったのですが、審査委員会に参画いただく方にお声がけさせて頂いた時に、予想以上に賛同してくれたことが嬉しかったですね。あとは、日本eスポーツアワードを開催するにあたって、みなさんと議論する場を作ったのですが、積極的に発言してくれたことも印象に残っています。
エピソードで言うと、アメリカのアワードの視察ですね。チケット代が13万円と高額で、4日間に渡ってアワードが開催されるのには驚かされました。今年は屋外で大きなモニターを使っていて、すごく華やかな表彰式になっていたので、日本もそのくらい華やかにしたいですね。
ーーeスポーツの存在が、日本に今後どのような影響を与えると考えていますか。
鈴木氏:13年くらいeスポーツ業界を見ていますが、eスポーツを盛り上げたいという熱い方々が30代半ばから40代ぐらいになっていると思います。当時の社会や経済の中心だった世代の方々には、なかなかeスポーツという分野を認めてもらえなかったと思うのですが、eスポーツに対して理解を示してくれる方々が社会や経済の中心になってきています。今後はその世代の方々が中心になって、社会、経済、文化に影響を与える大きな存在となっていくのかなと感じています。そういった意味では非常に楽観視しています。
VARRELでもeスポーツ教室を開催することがありまして、親子で見学しにくる方も多くいらっしゃいます。お子さんに「Fortniteの人気YouTuber知らないの?」と言われることもあるらしく、そういう会話が親子でも普通になってきています。親子間のいいコミュニケーションツールになっているのを見ていると、eスポーツが人生の一部になってきていると実感できますね。
ーー投票方法がLINEになっているのですが、なぜこの方法になったのでしょうか。
鈴木氏:LINEだと電話番号に紐づいているので、複数投票を防ぐ狙いがありました。アメリカはWebで投票できるのですが、Cookieを削除したら何回でも投票できてしまう問題があったので、ファンの方々の声は正確に反映したい思いがあってLINEを活用しました。
日本でのeスポーツの存在感や市場価値
ーー現在のeスポーツは私たちにとって、どのような存在だとお考えですか。
鈴木氏:以前の会社では、eスポーツを社会的、文化的、経済的なものにしていこうという思いで取り組んできました。絶対必要とされるとまでは言えませんが、ずいぶん貢献できるようになってきたと思っています。
社会的な部分で言うと、eスポーツが引きこもり対策に活用されていますし、ソーシャルディスタンスを強いられたコロナ禍ではeスポーツを通して人と人との繋がりを生み出すなど、大きな役割を果たしたと思います。文化的にはeスポーツを通したファッションやアパレル、コスプレといった新たなカルチャーを生み出しています。
経済的にはeスポーツ市場が生まれたことで、新たな雇用創出に繋がっています。
ーー今後eスポーツの存在感を強めるためにはどうしたらいいとお考えですか。
鈴木氏:世界で活躍するスター選手が生まれることではないでしょうか。憧れるスターが生まれることによって、eスポーツに挑戦しようと思う若者はもっと増えると思います。個人的な意見ですが、その環境を作っていくには学校教育にeスポーツが取り入れられることだと思っています。日本のサッカーや野球が強くなったのは、学校教育にしっかりと根付いている部分が大きいのではないでしょうか。同じようにeスポーツが一つのスポーツとして教育のひとつとして認められるといいなと思いますね。
日本eスポーツアワードの反響や中間発表について
ーー今回の日本eスポーツアワードに対して、ユーザーさんからはどのような反応や声が上がっていますか。
鈴木氏:「日本eスポーツアワードが開催されるぞ!」ということで、ユーザーさんがXやDiscordで投票を呼びかけてくれました。特に驚いたのは『beatmania』さんで、コミュニティの結束力が強くて、熱量が高く、多くの方々が積極的に投票してくれましたね。
ーー中間発表で選出されたノミネート候補者さんに対して印象を教えていただけますか。
鈴木氏:予想通りの方と予想を覆して上位にランクインしている方がいたので、新たな発見がありました。審査委員会の方々も同じような印象を受けていたようです。
日本eスポーツアワードの本番に向けて
ーー最後に1月25日(木)の本番に向けての想いを教えていただいてもよろしいでしょうか。
鈴木氏:このアワードをきっかけに、eスポーツが大きくなったと思えるようなイベントにしていきたいと思っています。その目標を実現するためには、ファンの方や選手達の力あってのものだと考えているので、毎年継続して開催し価値を上げていきたいと思います。
記念すべき第一回目の開催なので、ぜひ会場に足を運んでいただけたらと思います!
ーー本日はお忙しい中、ご対応いただきありがとうございました!
「日本eスポーツアワード」の概要
© Japan eSports Union
[取材協力]一般社団法人 日本eスポーツ連合
(編集・執筆/ゲーム山本)