今年で40周年を迎えたコーエーテクモの老舗シリーズである「信長の野望」最新作として、「信長の野望 出陣」が発表された。アプリゲームであり、それもまさかの位置情報系……日本全国を実際に歩いて天下統一する、というコンセプトのゲームだ。どうやら実際に歩いた場所を自分の領地とすることができるらしい。
とここまで聞いたとき、かしこい筆者はひらめいてしまった。「これって旅行とかに持っていくとめちゃくちゃ面白いやつなのでは……?」ということで、4月19日(水)から行われていたクローズドβテストに参加し、ゲームのプレイ感をつかみがてらさっそく小田原征伐を行ってきた。今回は皆様にその模様をリポートさせていただく。
いざ出陣!小田原城を攻略せよ!
▲最新作『新生』の小田原城。有名な総構えこそないものの、壮観な出で立ちである。(出典:『信長の野望新生』公式サイト)
信長の野望プレイヤーの実に10割が城址や古戦場などの史跡巡りを趣味として嗜んでいることは周知の事実(自社調べ)であるが、なかでも超有名スポットの一つが小田原城だ。かの武田信玄や上杉謙信でも攻め落とせなかった天下の名城であり、信長の野望的にも、石山本願寺(大坂城)や観音寺城(安土城)と並んで堅い城だ。これを自分が実際に歩いて征服するなんてことができれば、筆者の脳内では大量のドーパミンが欣喜雀躍し、たいへん気持ちよくなれることは間違いない。
▲インパクト抜群の存在感を誇る小田原名物の大提灯。江戸時代に宿場町として栄えた名残らしい。
ということでいざ出陣!ITと拝金ベンチャーの跋扈する悪徳都市渋谷のゲームエイトオフィスから1時間半、さっそく小田原にやってきたぞ。お土産やさんでかまぼこが売られているのどかな風景を見ると、小田原に来たという実感が湧く。
▲到着早々巨大な天守閣がお出迎え!戦国期の城は敵を威嚇するために黒塗りの城が多かったのだとか
そしてさっそく「出陣」を起動するとなんか画面上にでっかい城が!これは小田原城址ではなく「小田原駅」に建っているっぽいが、やっぱり有名な歴史スポットにはこういうものが用意されているようだ。さすがは天下の小田原である。それではさっそく……
▲拠点の守備部隊を下して小田原駅近辺を制圧。こうして天下布歩を進めていくのだ。
うおりゃあ制圧!『出陣』ではこんなふうに、日本全国を細かく分けた各区域の「拠点」を攻め取ることで領地を広げられる。拠点はプレイヤーが区域の中にいないと攻められないので、天下統一を目指すなら日本各地を歩き回る必要が出てくるというわけだ。ただ攻め取ると言っても『出陣』には基本的に他プレイヤーとの対人要素はないので、自分が去ったあとにすぐ他プレイヤーに塗替えされて涙目…なんてことにはならない。
▲小田原と言えば後北条氏。氏康先生の戦法はリメイク版太閤立志伝Ⅴで猛威を奮った「獅子奮迅」と同じ名前だが、効果はだいぶ違うみたい。
そして信長の野望といえばやはり武将だ。『出陣』では拠点を制圧するためには防衛部隊との合戦に勝利する必要があり、そのためには自軍の強化も欠かせない。武将の主な入手手段はガチャだが、後述する他の入手手段もあるので、イベントで上位ランクを狙うとかでなければ、廃課金をする必要は薄そうだ。今回は嬉しいことに、小田原参陣に先んじて北条氏康も用意できた。……まあ本来は守備側なんだけど、まあそこは気分の問題ということで。
▲左画面の奥に見えるのが小田原城の天守閣。小田原は平城なのだが、さすがに天守閣の存在感は抜群である。
景気よく小田原最初の拠点を制圧できたところで、さらに小田原城を目指して進軍開始!地図を見ると、どうやら小田原城はまるごと一つの区画として設定されているらしい。とすると、拠点はやはり本丸の天守閣だろうか?そんな事を考えながら進んでいると、さっそく目指す天守閣っぽいものを発見。
▲北側から馬出門土橋を臨む様子。現在の小田原城は二の丸から先が残されつつ、こども遊園地やNINJA館(原文ママ)を構えた観光地となっている。
うおお堀だ!塀だ!城だ!アプリで確認すれば、目指す天守閣もすぐそこにあるらしい。ちなみにこの段階でもすでにゲーム的には「区域内にいる」という判定なので拠点攻略に挑める状態ではあるのだが、今回はせっかくなので天守閣前まで進軍してみることにした。進め進め〜!
▲銅(あかがね)門。でっかい門を見ると人は良い気分になる。
うおおおでかい門!
▲常盤木門。観光客の大部分が外国の方でちょっとびっくりした。
すごいぞーかっこいいぞー!
▲小田原城の天守閣は江戸時代に築かれており、現在のものは昭和に再建されたもの。ちなみに本丸では甲冑や打ち掛け(女性用着物の一種)の体験も可能。や、やりたかった…!
折よく小田原市内は雲ひとつ無い快晴、最高気温20度弱という非常に過ごしやすい日和で、平日の昼間だったにもかかわらず観光客も非常に多かった。彼らと一緒に城門をくぐって進んでいくと、いよいよ目指す天守閣まで到着!何?「史実で戦国時代の小田原城に天守閣はない?」ガハハ、こういうのは雰囲気で楽しめば良いのじゃ!それっ、突撃!
▲天下屈指の名城たる小田原城ではあるものの、ゲーム的には拠点が異様に堅い……なんてこともなくあっさり制圧成功。嬉しい。
ということでめでたく小田原城の制圧完了。とはいえこれではまだ「小田原城」だけを制圧した状態であり、城の周辺には城の周辺には未制圧の区域がいくつも残っている。もう少しこのあたりの制圧を続けるかと思ってマップを確認すると、何やら面白そうなアイコンがあるではないか。
▲「茶室」は実際のカフェのある場所に設置されているらしく、長歩きで疲れた時の休憩にもちょうど良さそう。
これは「茶室」という、武将が集まるスポットだ。というのも『出陣』では、武将の友好度を高めることでもその武将を獲得できるようになっている。茶室には複数の武将が集まっているので、狙った武将の友好度を上げやすいというわけだ。茶室は場所によって訪れている武将も違うようなので、目当ての武将を探して茶室巡り…なんてのも面白いかも知れない。
▲里見義堯は後北条氏と戦った房総半島の有力勢力。南総里見八犬伝で有名な安房里見氏。
ちなみに武将は茶室だけではなくフィールドマップにも登場するので、タップすると友好度を高められる。ヘルプによれば「特定の地域にしか登場しない」武将もいるとのことなので、地元の名将みたいな人は集めやすかったりするのかもしれない。ちなみに小田原城下町ではなぜか里見義堯さんが頻繁にポップしていた。いやそこ氏康じゃないんかい。
▲めちゃくちゃ変な形の区域とか、何種類もの境界線が入り乱れる場所はまさにホットスポット。脳がめちゃくちゃ喜んでしまう。
とまあこんな感じで小田原城下町を散策していたのだが、なんかこれ、予想していたものとは違う方向に面白い。小田原城みたいな歴史スポットを自分の領地にするのもそれはそれで楽しいのだが、歩いた場所を自分の領地にできるという感覚が嬉しいので、とにかく新しい土地に進出したくなってしまうのだ。複数の区画が隣接するスポットなんぞ見つけてしまうと、是が非でもそこまで行きたくなってしまう。
▲お昼くらいからずっと歩いていたらいつの間にか黄昏時。なんかすごい遠くまで来てしまった気がする……
筆者もこれまでいろいろなゲームをやってきたが、区画の境目を見つけて興奮する感覚を味わうのは流石に初めてだ。小田原城を離れた何の変哲もない住宅街であっても、いい感じに区域が分かれるポイントだったりすると途端に「絶対にまたいでやる!」という気分になる。フランス-スイス間には両国の国境をまたいで建つホテルがあり、世界各国の地理マニアが大喜びで反復横跳びするという話を聞いたことがあるが、そういう感覚にちょっと似ているかも知れない。(いや違うか…?)
▲ポ○モンGOもドラ○エウォークも、みんな電池との戦いだった。
ただこういった位置情報ゲームはかなり大きな弱点として、必然的に歩きスマホ状態になりやすいという点がある。また光量の多い屋外でスマホを点けっぱなしにする=バックライトも強くなりがちで、電池消耗も激しくなる。ただこれの対策として、『出陣』では委任(=おまかせ)機能がかなり重要になってくると思うので、これは特徴として上げておくべきだろう。
▲委任&ロック&バックライト最小にしてポケットに放り込んでおけば、電池消費を最小に抑えて拠点を回収できる。拠点登録には上限があるが、プレイヤーレベルが上がることで増えていく。
委任設定にしておくと、区域内の拠点や近くにある茶室を自動的に登録してくれるため、落ち着いた場所であとから拠点をじっくり攻略したり武将の友好度を稼ぐことができるのだ。そのため実は『出陣』では歩きスマホはそんなに必要ない。また遠出の際はなるべく周辺の区域をたくさん回収したくもなるのだが、実はそれもほどほどで良かったりする。というのもこのゲーム、小田原市内だけでも100を超えるような区画があって、これを全部回収し切るのはそもそも1日では無謀なのだ。そしてそれを補うために「遠征」と「支城」というシステムがある。
▲支城の開放自体は早かったのだが、建築資材が不足しており建てられていない……プレイに計画性を持て……
「遠征」は自分の「本拠」や「支城」などの近くにある区域を、配下武将に任せて取ってきてもらうシステムであり、さらに「支城」は一度自分が制圧した場所なら好きなところに建てられるらしい。これを利用すれば、例えば今回制圧した小田原城区域を自分の支城にし、そこを拠点に周辺区域の制圧を進めていく…なんてこともできそうだ。
▲海の近くで拠点制圧できたので、そのまま「御幸の浜」へ。海……マジでめちゃくちゃ良い……!
とまあ、ゲームの説明はそんなところだろうか。他の位置情報系ゲームとの比較でいうと、自分の生活圏での他プレイヤーとの凌ぎあいが面白い他のゲームに対し、新しい土地への進出することが楽しい『出陣』はまさに観光向き(特に城址めぐりなんかにはいい感じ)のゲームだというのが筆者の感想だ。昼間は委任モードで観光しながら拠点登録だけ行いつつ、おちついた時間にゆっくり攻略。家に帰ってからも支城を建設して周囲の制圧という流れが非常に楽しい。
▲小田原駅西口に構える北条早雲公像。たぶん火牛の計で小田原攻めをしているとこっぽい。
というわけで、今回は小田原城周辺のエリアで16区域を制圧して小田原遠征は一旦終了。ここまで海に行ったり茶室(カフェ)で休んだり、散々寄り道しておおよそ5時間。筆者は普段自宅の半径500mから出ない生活を送っているため、マジで疲れました。疲れたけど楽しかった。
終わりに
さて、今回のプレイレポートでは紹介しきれていないが、『出陣』には内政要素もあったり、多数のプレイヤーが参加するイベントなんかも用意されている。合戦も軽〜く流してしまったが、実は高難易度のイベント戦は武将配置などしっかり考えないと勝てないようになっているし、所属大名や兵科を揃えた編成も重要だ。まあでも、そんなことあまり気にせずに旅行のお供なんかに気軽にプレイを初めてみるのが良いのではなかろうか。
『信長の野望 出陣』正式リリースはまだ未発表であるものの、その暁にはぜひともあなただけの戦国ウォーキング体験を追い求めてみて欲しい。
(編集・執筆/ena)