Unreal Engineの最新動向や活用事例を紹介する場として毎年開催されている『Unreal Fest Tokyo 2025』にゲームエイトライターが潜入してきた。初のUnreal Engine搭載の国産車『AFEELA 1』の開発を語るキーセッションの模様や、業界の進化を支えるスポンサー企業による展示ブースを紹介しているので、ぜひ最後までチェックしてみてほしい。
『Unreal Fest Tokyo 2025』とは

『Unreal Fest Tokyo 2025』とは、Epic Games Japanが主催する無料の公式大型イベントだ。Unreal Engineを様々な分野で活用している方々に向けて、最新情報や活用事例を紹介する場として毎年開催されている。今年の祭典は、東京・高輪ゲートウェイにて2日間にわたり開催され、「ノンゲームデー」と「ゲームデー」に分かれて展開された。
本記事では、映像や自動車、建築など、主にエンタープライズ関係の講演とブース展示が中心となった「ノンゲームデー」に焦点を当ててレポートしていく。会場では、自動車メーカーとゲームデベロッパーの共創が語られたセッションやスポンサー企業によるブース展示など、ノンゲーム分野の活用事例に特化した企画が多数展開されていた。
そんな業界の最先端技術を肌で感じられるイベントにゲームエイトライターが参加してきたので、会場の様子を中心にみなさんにお届けしていくぞ!
ゲームエンジンが自動車産業へ!SHM × Epicが語る『AFEELA 1』と開発の最前線

本講演『Making the AFEELA 1 Cockpit Unreal』では、ソニー・ホンダモビリティ(以下SHM)、Epic Games Japan、有限会社キュー・ゲームスがタッグを組んで開発を進める新型EV『AFEELA 1(アフィーラワン)』のコンセプトやこだわりなどを発表した。
登壇者は、下記の4名だ。
・西林 卓也 氏/ソニー・ホンダモビリティ株式会社
・山口 雄也 氏/ソニー・ホンダモビリティ株式会社
・向井 秀哉 氏/Epic Games Japan
・Pierre Mizzi 氏/有限会社キュー・ゲームス

西林氏は、SHMが開発を進めるEV『AFEELA 1』は、単なる次世代モビリティではなく、「人とモビリティの関係を再定義する」をゴールとして掲げていると語った。この挑戦の核となっているのが、Epic Gamesが誇る3Dグラフィックエンジン、Unreal Engineだ。『AFEELA 1』は、ストレスフリーな直感的ナビゲーションと、Unreal Engineが創り出す美麗な3D映像によって、日々の運転に新鮮な楽しみをもたらしてくれる新時代の電気自動車である。
この講演では、『AFEELA 1』によって生み出される新たな運転体験の魅力や、そのシステムがどのようにして生み出されたのかが、業界の最先端を走るSHM、Epic Games Japan、有限会社キュー・ゲームスによって語られた。
高度なセンシングで直感的なナビゲーションを実現
ここからは、『AFEELA 1』の魅力やシステムの開発秘話をたっぷりお伝えしていく。
▲運転席を一直線で繋ぐフロントピラーモニター。助手席の前には俯瞰視点の小さなパネルも
AFEELAの魅力の一つに、直感的でストレスフリーなナビゲーション機能がある。AFEELAでは、運転席に設置された大きなモニターに、広範囲の周辺マップがリアルな3Dモデルで表示される。離れた場所からも、狭い道にある曲がり角の一つ一つまで余すことなく確認できるのだ。これにより、「どこの交差点で曲がったらいいか迷ってしまう」「この道で曲がるはずだったのに通り過ぎてしまった」といった、運転におけるストレスやミスとはもう無縁になる。

これを実現しているのは、車体に搭載された40個ものセンサーだ。360°くまなく周囲を見渡すことができ、走行中の他車や歩行者がUnreal Engine上でオブジェクトとして正確に描画される。GPSだけではブレる位置情報も独自の計算で補正し、スムーズで正確な描画を実現しているという。現実世界をバーチャル空間として車内に作り出し、車内から自分の車を俯瞰して見るのは、まるでプレイヤーとして車を運転するゲームのような感覚だ。
また、AFEELAには自動運転技術も搭載されている。他の自動運転搭載車と比べて特徴的なのは、特殊なフロントピラーモニターだ。運転席とは別に、助手席の前にも地図が表示されている。自動運転の際にもAFEELAが何を考えていて、どこに向かおうとしているのかを、一つのエンターテイメントとして楽しんでもらうために設置しているとのことだ。
ハイレゾ音響と擬似エンジン音で感じるエンタメ空間

AFEELAは、目だけでなく、耳からも私たちを楽しませてくれる。ソニーの最新技術が存分に活かされた音響によって、車の中にいながら、まるでオーディオルームにいるような極上のサウンドを味わえる。
プレミアムサウンドスペースと呼ばれるその機能は、様々な音が前後左右、高低差まで感じられる立体音響(Dolby Atmos)はもちろん、CDなどの音質を超えた「ハイレゾ」品質のオーディオを導入している。

▲各座席の間にも設置された音響設備「Zonal Sound」
さらに、座席ごとに別々の音を鳴らすZonal Soundの設計も進んでいる。AFEELAは本来静かにスイスイ走るが、『車感』を出したい方は、あえて擬似エンジン音を室内に再生することもできる。この辺りも、Epic Gamesとの協業ならではのエンターテイメント性と言える。もちろん、エンジン音に邪魔されず、極上のオーディオ空間を楽しむことも可能だ。

▲車内のオーディオ状況と空間がリンクする機能も搭載予定
車がコミュニケーションを取る?アイコンとなるメディアバーの役割

▲車体正面に設置されたメディアバー。ボンネットとバンパーの間にメッセージや映像が映し出される
AFEELAには、車体正面にメディアバーという光るパネルが取り付けられている。他車ではライトやウィンカーなどを搭載する部分であり、こういったパネルが車体正面に取り付けられる例はほとんどないが、「車が外界とのコミュニケーションを取るためにはこの位置が最適であった」と西林さんは語る。機能的な意味はもちろん、ビジュアル面でのインパクトも強く、AFEELAのアイコン的存在となっている。
ドアを開けるとキャラクターがお出迎え!

冒頭で取り上げた40個ものセンサーは、車外の環境把握だけでなく、車内でのエンターテイメントにまで活かされている。その具体的な例が、ディスプレイから我々を和ませてくれるこちらのAIキャラクターだ。
運転時には一緒に走ってくれたり、ドアの開閉時や乗り降りの際には手を振って反応してくれたりと、ユーザーの行動に対して様々なリアクションを取る。まるでペットのような愛らしさで、本当に車とコミュニケーションを取っているような感覚だ。
ユーザーを安全に送り届けるというモビリティ最大のミッションをこなしつつ、同時にユーザーを理解し、AIエージェントとしても機能する。小さなキャラクターに込められた小さな気遣いが、まさにSHMの掲げる「人とモビリティの関係性の再定義」の一つの形ではないだろうか。
SHM x Epic クロストークセッション:ゲームエンジンが自動車産業へ参入!業界の垣根を越えた協業で無限の可能性を創り出す
ゲームエンジンが描く!AFEELAで実現するモビリティの未来予想図

『Sony Honda Mobility x Epic クロストークセッション』では、Unreal Engineがゲーム業界の垣根を越え、自動車産業という新しいフロンティアに参入している現状と、『AFEELAプロジェクト』における共創の意義が語られた。
本セッションの登壇者は、下記の5名。
・西林 卓也 氏/ソニー・ホンダモビリティ株式会社
・山口 雄也 氏/ソニー・ホンダモビリティ株式会社
・Joel Kreutzwieser 氏/有限会社キュー・ゲームス
・河崎 高之 氏/Epic Games Japan
・向井 秀哉 氏/Epic Games Japan
このセッションで特に印象に残ったのは、Unreal Engineを高精細なグラフィック提供にのみ活かすのではなく、「どうすればユーザーが使いこなせてイライラしないのか」という設計思想にまで落とし込んでいることが語られているパートだ。各分野のエキスパートが集まって一つの新しい可能性を創り上げていくスタイルは、全てのテクノロジーやエンターテイメントに関わるクリエイターにとって、非常に示唆に富んだメッセージだと受け取った。
また、モビリティとゲームの融合によって生まれる、新しい経済圏への展望も興味深い。筆者自身、ゲームを通じて生まれたコミュニティを今でも非常に大切にしており、ゲーム=単なるエンターテイメントだけではなく、人と人とを繋ぐコミュニケーションツールとしても認識している。おそらくその究極系が、このセッションで語られた『AFEELAプロジェクト』になるのだろう。ゲームエンジンが、車のコックピットという新しいエンターテイメント空間の核となり、未来を牽引する可能性に、今からワクワクが止まらない。
テクノロジーの未来を切り拓く!開発者5名による対談を追う
ここからはクロストークセッションの内容を抜粋し、Q&A形式でお届けしていく。
━━Unreal Festでのクロストークセッション開催は初めての試みですが、まずはこのクロストークが設計された背景をお聞かせいただけますか。

河崎氏:ここ数年で、Unreal Engineが自動車業界における新しいビジュアル体験を作り出していることが、まず大きな背景になります。これまではゲームや映像制作のためのエンジンという印象が強かったと思いますが、今ではリアルタイム3Dが車のインターフェースやセンシングの可視化などの領域にも広がっていて、世界中の開発者にとって非常に刺激的な分野になっています。
Unreal Festは、常に「新しいクリエイティブの交差点」を提示することを目的としています。今回は特に、ゲームエンジンが他の産業に参入するというテーマを明確に打ち出したかったんです。SHMさんが進めている『AFEELAプロジェクト』は、まさにその象徴的な存在です。人と車、そして都市が、リアルタイム3Dで繋がるという全く新しい体験設計が訪れるはずです。今回のクロストークは、その未来を一緒に想像し、語り合う場にしたいと思っています。
━━Unreal Engineの自動車産業への展開にはとても大きな意義があると思いますが、どのように捉えていらっしゃいますか。
河崎氏:Unreal Engineは元々ゲームを作るためのツールで、世界をリアルタイムで描くためのツールとして生まれました。ゲームエンジンなので、どうしても映画や建築といった、目で見る世界への応用というところから始まったかと思います。
ところがここ数年で、その対象が動く世界や乗る世界へと広がってきています。今までは画面の中だけで完結していたリアルタイム3Dが、現実の移動や体験そのものに関わるようになってきます。車両がセンシングした車線、歩行者、周囲の環境データなどを3D空間上でリアルタイムで可視化することで、「ドライバーが車と対話している」感覚を生み出すことができます。これは単なるナビゲーション表示ではなくて、人とAI、車が、同じ視点を共有するという新しいコミュニケーションの形になっていると思います。
さらにはゲームエンジンの持つ没入感や演出表現が、移動中のエンターテイメント体験や車内での感情的なデザインにも大きく寄与することができます。移動という時間を、よりクリエイティブで、パーソナルなものに変えることができるのが、我々の技術だと思っています。
━━SHMがAFEELAブランドに込められた理念を伺えますでしょうか。

西林氏:「多様な知で革新を追求し、人を動かす」ことを理念としています。SHMが立ち上がる前、SONYに在籍していた頃から、他社のエンジニア様と連携しながらプロジェクトを推進していく経験がございました。そういったところから、それぞれの分野のエキスパートの方とモノを作っていく重要性を日々感じておりました。Epic様とのコラボレーションに関しても、そういった共創の意から生まれた、多様な知の集結の形だと考えています。
━━Epic Gamesはモビリティをどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。
河崎氏:Epic Gamesにとってモビリティは、リアルタイム3Dが現実世界に最も深く入り込む、新しいフロンティアだと思っています。例えば自動車の分野では、既にいくつかの段階でUnreal Engineをご活用いただいているんですが、大きく分けて4つほどあるかと思います。
まず一つ目が、HMI(Human Machine Interface)、いわゆる車内インターフェースの開発です。AFEELAをはじめとした世界中の自動車メーカーで、運転情報やナビゲーション、エンターテイメントを統合した、滑らかで美しいUIを実現するために、Unreal Engineをご活用いただいています。
二つ目が、センシングや自動運転支援の可視化です。車が持っているセンサーやカメラの情報をリアルタイムで再構築して、車が何を見ているかをドライバーが直感的に理解できるようにします。
続いて三つ目が、車両開発シミュレーションとデジタルツインの領域です。Unreal Engineを使うことで、現実の道路や環境を高精度に再現し、仮想空間内で自動運転システムの学習を行うことができます。現実世界をスキャンして、リアルなシミュレーション環境に落とし込む流れが広がっています。
そして四つ目ですが、車内エンターテイメントとブランド体験です。自動運転や電動化によって、車が「動くリビング」や「動くスクリーン」になっていく中で、Unreal Engineによるリアルタイム演出技術が、車内空間を映画館やライブステージのような空間に変えることができます。走行状況に合わせて環境が動的に変化したり、パーソナライズされた3D空間が生成されたりと、移動時間を体験時間に変えるという、まさにAFEELAの思想と共鳴したものになっています。
━━ソフトウェアが車の価値を決める時代になったと言われることもありますが、エンジニアさんとしてはどのような思いでいらっしゃいますか?

山口氏:私が担当しているHMIにフォーカスしてお話させていただきますが、ソフトウェアは車両と人とを繋ぐ接点になると考えています。
ただしモビリティ領域においては、ユーザーの意図通りに動くだけではなく、差し迫った危機が発生した際には、ユーザーの意思とは関係なく、危険回避行動を取る必要があります。HMIとしてもそういった状況においては、危険の告知・警告・緊急回避の提示と、段階的な踏まえを実装する必要があります。それらの基礎を元に、あらゆるユースケースに適した形でユーザーインタラクションを決めていくことが重要と考えています。これらのユーザーインタラクションを間違えてしまうと、ユーザーをイライラさせてしまったり、安全運行に支障をきたしてしまうため、ソフトウェアが車両の価値を決めるという指摘は、まさにその通りだと思っています。
━━Unreal Engineを実装する決め手になったのは、ズバリなんだったのでしょうか。
西林氏:高度な3D表現技術と、ゲームデベロッパーの皆様の知見をお借りしたいというのがすごく大きかったかなと思います。Unreal Engineが持つ非常に高い表現能力が、新しいエンターテイメントを切り拓く重要なピースになるのではないかという期待からの採用になります。
私が小学生の頃のゲームには、分厚い取扱説明書が必ず入っていました。その説明書を読まないと、ジャンプもできなければ前にも進めない。ですが今日現在のゲームを買ってくると、取扱説明書は付いていません。その違いについてずっと考えていたんですけれども、今のゲームは押し付けではない自然なチュートリアルが続いていて、いつの間にか使いこなせるようになっているからではないか、という結論に至りました。メーカーの発想では各機能の説明をどうしても長くしてしまうんですけれども、いかに複雑なゲームでも取扱説明書なしで楽しませることができるような、ゲームデベロッパーの皆様の知見をお借りしたかったことが大きな理由になります。
━━ゲーム制作で培ったノウハウは、車載体験にはどのように活かされていますか?

Joel氏:ゲームにおいて重要なのは、可変性の高い情報をいかに早く、効果的に、プレイヤーに伝えられるかです。ゲームプレイヤーの没入感の維持というミッションは、車載体験においても本質的には同じことです。Unreal Engineが持つ高度なレンダリング技術を活用することで、圧倒的なビジュアルと表現が実現できています。ほとんどのシステムがモバイルプラットフォームでも問題なく動作するという事実が、我々の作業効率を後押ししてくれました。
━━Unreal Engineを使った日本以外のメーカーの動向はどのようになっているのでしょうか。

向井氏:世界のTOP20のOEMさんが、Unreal Engineを何かしらの形で活用しています。その用途はデザインやビジュアライゼーション、シミュレーション、自動運転の学習など、多岐に渡ります。
HMIに絞りますと、Unreal Engineで開発したHMIを搭載している車は、HONDAさん、GMさん、Rivianさんなど、今のところ35車種以上にのぼります。既に200万台以上が出荷されており、至るところでUnreal Engine搭載車が走っているような状況です。ただ国産車ではまだ搭載がなく、おそらくAFEELAが初めての例になるかと思いますので、個人的にも楽しみな部分です。
━━協業で印象的だった点をお伺いできますか。
西林氏:Epicさんとは、まずはじめに「Unreal Engineをどう使いたいか」ではなく、「そもそも車をどうしていきたいか」のブレインストーミングを行いました。皆さん新しいおもちゃを見つけたような表情で、「どうしたら車内空間や移動体験が楽しくなるのか」など、ワクワクしながら色々なことをお話しました。人を楽しませるためには、まず自分たちが楽しんで作ること。ゲーム業界の皆さん、エンターテイメントのど真ん中で戦ってきている方たちならではのやり方が、すごく印象に残っています。
Joel氏:キュー・ゲームスから見て、最も大変であり、ユニークであったのは、ドライバーディストラクションです。ゲーム領域では表現豊かで印象的なビジュアルが重視されますが、車載インフォテイメントにおいては、不必要な光の点滅や派手な演出、インパクトの強いエフェクトは、運転の妨げとなります。適切な情報を適切なタイミングで表示しつつ、見ていて楽しいインターフェースをどう実現するか。クリエイティブのバランス調整に凄く時間をかけましたし、今後も注力していく部分になります。
━━改めてになりますが、自動車とゲームの協業によって、どんなビジネスモデルの変化が起きると思われますか?
西林氏:まだ会社としてのビジネスモデルは公にはしていないので、ここからはあくまでも私個人の見解になります。
先ほど少し触れましたけれども、私は元々PCやスマートフォンの開発に携わっておりました。その経験から、いわゆるガラケーと呼ばれるものとスマートフォンの一番大きな違いは、ロケーションベースサービスが自由に扱えるようになったことだと分析しております。ロケーションベースサービスをベースにしたゲームの誕生は、スマートフォンの時代で華開いた一つの変化です。地域限定でしか手に入らないモンスターやアイテムがあることで、普段はそこまで注目されない地域に、世界から人が集まります。ゲームというデジタルな世界だけにとどまらず、周囲のお店や公共交通機関が賑わい、様々な経済効果が生まれることが、新しいビジネスになっていると捉えています。
我々が今手掛けているAFEELAは、行動範囲をどんどん広げていってくれるものです。モビリティとゲームの世界が上手く融合すれば、AFEELAに閉じた経済システムだけではなく、もっと大きな、新しい価値が生まれてくるんじゃないかと考えています。
スポンサー企業ブースレポート
Perforceブース(東陽テクニカ):巨大なデジタルアセットを楽々管理!業界最高品質のアセット管理ツール
Perforceブースでは、ソフトウェア開発支援ツールのプロバイダーである『Perforce』に関する相談や、その圧倒的な機能性の紹介が行われていた。

『Perforce』の最大の強みは、大容量データの転送・同期をストレスなく、高速かつ安定したファイル転送を実現する点にある。
ソフトウェアの管理ツールにはいくつか種類があるが、『Perforce』は、他社サービスでは時間がかかってしまう大容量データであっても、最大5倍以上の速度でダウンロードできる圧倒的なパフォーマンスを持つ。特にUnreal Engineのように、高解像度のテクスチャや大規模なレベルデータといった巨大なデジタルアセットを扱うゲーム開発において、この超高速パフォーマンスは開発効率に直結する重要な要素だ。
その他にも、あらゆる種類のデジタルアセットを一つのリポジトリにまとめられる一元管理システムや強固なセキュリティ、大規模チームやグローバル展開にも対応できる柔軟な拡張性など、プロの開発現場で『Perforce』が選ばれていることには沢山の理由がある。
『Perforce』は、ゲーム領域では実にAAAゲーム開発スタジオTOP20のうち19スタジオが導入するほどで、既に欠かせない存在となっている。さらに活躍の場はゲーム開発の垣根を越え、映像制作はもちろん、自動車や建築の設計、航空宇宙開発や医療手術のシミュレーションまで、様々な産業での活用が積極的に進められている。
そんなPerforceは、『Perforce P4』ライセンスを新規で10ライセンス以上購入すると、購入分の『P4 Plan』と『P4 DAM』が無償で提供される、新規お客様向け特別キャンペーンを実施中。このキャンペーンは2025年12月25日(金)までなので、導入を検討しているスタジオはぜひこの機会をお見逃しなく。
HPブース:最新マテリアルスキャナーをフル活用できる最強のワークステーション

HPブースでは、円錐形の独特なオブジェクトが展示されていた。こちらは、現実の素材の質感(色、凹凸、光沢など)をスキャンし、そのデータをデジタル情報に書き出すマテリアルスキャナーだ。昨今のリアル化していくゲーム業界では、リアリティを追求する上で素材の質感表現は避けて通れないミッションである。

スキャンされた高品質な質感データは、HPワークステーションのような高性能な環境を介してゲームエンジンに持ち込まれ、リアルなテクスチャとして活用される。HPのワークステーションは、MayaやMaxといった主要なモデリングツールとの親和性が非常に高く、動作認証も受けているという。

マテリアルスキャナーから送られてきた3Dデータを扱うには、ワークステーション側にも高度な演算能力が求められる。このデスクトップパソコンには、NVIDIAの『ブラックウェル』シリーズの中でも最上位クラスである6000番台のグラフィックボードが2枚搭載されており、驚異的な処理能力を持つ。市場では5000番台が最近出てきた中、6000番台を2枚差しした、PCマニア垂涎の構成だ。

▲下部にグラフィックボード、上部に電源ユニット、マザーボードを覆う形で設置されたCPUクーラー
最高性能のグラフィックボードを安定して長時間稼働させるためには、高度な筐体設計と冷却技術が不可欠である。排熱量の多いハイスペックグラフィックボードも比較的小さい筐体に搭載できるよう設計されており、これはHPの企業努力の賜物と言える。

▲空冷CPUファンが写真左側のメモリまで覆っている
ファンは水冷ではなく空冷を採用しつつも、熱流解析ソフトを駆使して冷却性能を高める設計が徹底されている。カバーの工夫によって内部の気流効率を極限まで高め、メモリ(RAM)まで強制的に冷却する構造を備えている。また、電源ユニットは筐体上部に配置され、床の埃が入りにくいという、開発者の作業環境に配慮した隙のない設計だ。
THIRDWAVEブース:RTX 5090搭載の「最強の開発環境」を体感
THIRDWAVEブースでは、ゲーム開発の最前線を支える高性能グラフィックボード『GeForce RTX 5090』が搭載されたゲーミングPCが2モデル展示され、注目を集めていた。

まず目を引く形で展開されていたのは、GALLERIAのタワー型PCだ。ここではCADデータを用いて、PCの設置環境をバーチャルでシミュレートすることができる。PCをデスクに置いた際の照明の反射や質感・配置のバランスなどを直感的に把握可能で、購入前から自身の開発環境にフィットするかどうかを確認でき、購入後のミスマッチを防げるようになっている。
次に目を奪われたのは、『GeForce RTX 5090』搭載モデルとしては珍しいノートPCだ。

ディスプレイは18インチと圧倒的な迫力があり、デスクトップPCに匹敵する大画面で、開発やゲームプレイに没頭できる。さらに、背面にあるディスプレイの留め具部分は光るゲーミング仕様となっており、視覚的にも所有欲を掻き立てるデザインだ。
驚くべきはその可搬性。この超ハイスペックながら、総重量は約4kgに抑えられている。普段ハイスペックなノートPCに触れる機会が少ない方には重く感じるかもしれないが、このスペック帯でこの軽さを実現できているモデルはほとんどないという。高い処理能力を必要とするUnreal Engineでの開発環境を、場所を選ばずどこへでも持ち運べる、まさに「究極のモバイル開発ステーション」と言えるだろう。
Havokブース:水の流れからNPCの動きまで。ゲーム世界に命を吹き込むエンジン

Havokは、ゲームエンジンの中で活用されるコンポーネントを提供している。その製品ラインナップは、ゲーム世界に現実的な挙動を付与する物理シミュレーション、布地の繊細な動きを表現するクロスのシミュレーション、そしてNPC(非プレイヤーキャラクター)の動作の挙動や経路計算を担うキャラクターのナビゲーションなど、多岐に渡る。
これらのコンポーネントは、Unreal Engineをはじめとする主要なゲームエンジンや、様々な開発会社独自のインハウスエンジンにも柔軟に組み込むことが可能だ。Havokの技術は、ゲームのグラフィック品質だけでなく、操作感や世界の物理的な挙動など、開発における基盤的な要素を担っている。
例えば、キャラクターが「歩く」という基本的な動作一つをとっても、地面との接地判定が「Havok Physics」によって正確に行われている。これは、プレイヤーの操作に対するリアルなフィードバックを担保し、ゲーム体験の品質を支える要素である。
また、ゲーム内の動きや当たり判定だけでなく、特別なイベントを起こすためのセンサーやトリガーとしても物理シミュレーションの機能が使われている。さらに、オブジェクトが多数出現するシーンでは、水や岩、炎といった様々な要素が物理法則に従ってダイナミックに挙動し、高い没入感と物理的な質感をプレイヤーに体感させている。Havokの技術は、ゲームのリアリティと奥深さを実現する重要な役割を果たしていると言えるだろう。
『Unreal Fest Tokyo 2025』の概要
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[取材協力]:Epic Games Japan
(編集・執筆/やす、YY)







